山に捨てられていた柴犬は下半身まひ 「商品にならなかった?」ブリーダーによる遺棄か 動物愛護団体「怒り、悲しみ、情けなさ…鬼畜です」

渡辺 晴子 渡辺 晴子

下半身がまひした黒柴のippoくん(雄・推定2歳)。2021年9月中旬、熊本と福岡の県境の山で段ボール箱の中に入ったまま捨てられていたところを、保健所の職員に保護されました。当時、まだ生後2カ月ほどの子犬。残暑が続くジリジリとした暑さの中で、ippoくんはそこで耐えていました。そのippoくんを保健所から引き取ったのは、熊本県内で保健所の里親探しを後押しする動物愛護団体「アニマルアシスト千手」さん。引き取った時のことを、こう振り返ります。

「純血の柴犬でかわいい顔でしたから一度保健所から60代の方に譲渡されたそうですが、数日で保健所に戻されそうになって。下半身まひの状態で返されたら殺処分になると思い、私たち千手で引き取ったんです。ippoは前足を器用に使い移動していましたが、地元の病院の先生からは生まれつき下半身がまひしており、この足で歩くことは難しいとの診断がおりました。また安楽死を勧められたこともあります」

そんな下半身の動かないippoくんが、山に捨てられていた理由をすぐに分かったという「アニマルアシスト千手」さん。それは…。

「どうみても純血の柴犬がなぜ? しかしその理由はすぐに分かりました。下半身が動いていない。さらに脱腸までしている状態でした。脱腸を起こし、下半身が動かない生後2カ月の子犬が、ここまで歩いて来れるはずもなく。つまり『商品にならなかった?』。おそらく遺棄したのは、ブリーダーだと思います。そう思わざるを得ない。怒り、悲しさ、そして情けなさ。そこまでするのか。命を物としか思っていない人間の所業は、まさに鬼畜以外のものではありません」

下半身が動かなくても…しっかり意思を伝える柴らしい気高い気質、忠実で優しいワンコ

とはいえ、ippoくんが生まれつき下半身が悪いのかどうか調べるため、保護された翌年に関西の病院で診てもらったといいます。すると、地元の病院とは全く違う診断結果でした。

「まひは生まれつきではなく、外的要因でのまひだろうとのこと。高い所から落とされたか、落ちたかとのことでした。治る見込みはないそうで、先生からは車椅子を上手に使い、生活するのがいいとアドバイスをいただきました」

遺棄される前にippoくんの身に何が起こったのか…生まれつきのまひではなく、外的要因によるものだとなると余計に心が痛んだという「アニマルアシスト千手」さん。ただ、脱腸については今は無事に完治。今は預かりさんのおうちで元気に過ごしているそうです。

「前足を上手に使い、ポンポンと跳ねる様に走るippo。前に前に。その姿は『後ろなんて知らない』とばかりに、ぐんぐんと力強く進んでいます。ippoはとても強い子です。足が動かないからなんだとばかりに、しっかり意思を伝えます。柴らしい気高い気質。媚びないぞという和犬らしい強さ。本当に愛している人にしか見る事ことができない、忠実で優しいippo。ただお世話のときはガウガウでかみつきがありますが…預かりさんがいろいろ工夫してくださり、排せつもうまくできませんので、手作りのおむつをはかせてくれます。ただずっとおむつをしていますから、肌トラブルがつきもの。今はおむつの部分は毛がない状態になっています。また最近、脳障がいもある可能性が出てきました…」

障がいを持ちながらも無邪気な笑顔を見せてくれるippoくん。そんな彼にずっとの家族が見つかることを、「アニマルアシスト千手」さんたちは望んでいるといいます。

「もしかしたら、新たな家族が見つかるのは難しいかもしれません。しかし、私たちは諦めてはいません。今、一生懸命お世話をしてくださる預かりさんのお宅でも幸せかもしれませんが…。私たち団体にシェルターがないこともあり、できればippoをずっと見てあげられる里親さんが見つかれば。お世話は大変ですが、そんなippoに寄り添っていただける方がいらっしゃればと願っています」

飼い犬や猫などの遺棄。2020年6月に施行された改正動物愛護法により、飼い主がペットを捨てた場合、これまで100万円以下の罰金刑だけでしたが、1年以下の懲役刑が加わり、厳罰化されました。犯罪です。大切な命を捨てないでください。

ippoくんについての問い合わせなどは、アニマルアシスト千手さんのInstagram(@animal_assist_senju)のDMまで。

「アニマルアシスト千手」さんXアカウント( @u06G34ahrvCapNt)

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