新居に気持ちよく引っ越すためにも、元住んでいた賃貸物件の退去はトラブルなくスムーズに進めたいものですよね。しかし、退去時の引き渡し手続きで、思いもしなかったトラブルに巻き込まれてしまうケースは少なくありません。特に、引っ越しに慣れていて「普通はこう」というイメージがある方こそ、ちょっとした違和感を見過ごしてしまうことがあるようです。
一人暮らし向けのワンルームに住んでいたAさん(関東在住、30代、会社員)は、退去日や解約日をめぐる確認不足から、思わぬ問題に直面しました。
管理会社に退去の連絡をすると…
Aさんは全国を回る営業職として勤務しており、数年に一度転勤があります。転居費用は基本的に会社が支払い、家賃の半額が住宅手当として支給されることもあり、これまであまり細かいことを気にせず、利便性の高さと築浅を優先して部屋探しをしてきたそうです。
そんなAさんに何度目かの転勤辞令が出ました。2カ月後の転勤に向けて、まずは現在住んでいるワンルームマンションの管理会社に退去の連絡をすることに。
ワンルームの引っ越しも3回目だったAさん。これまでの経験から「退去の1カ月前まで告知」と考えて管理会社に電話を入れたところ、驚きの返答を聞くことになりました。
「Aさんのご契約いただいているマンションは、入居時の借家契約書に書いてありますとおり、3カ月前告知が必要ですので、解約日は最短で本日から3カ月後になります」
初めてのケースに動揺したAさん。しかし契約書を探し出してよくよく読むと、そこには確かに3カ月前告知という文言が…。
実は前回の転勤は引継ぎを受ける担当者が急病で期日が早まったこともあり、家探しは現地の不動産会社に希望条件を伝えたきり、特に見学もせずに決めていました。そういったこともあって、借家契約書の内容もしっかり確認していませんでした。
「普通のワンルームマンションなのに、こんなケースもあるのだな」と思ったAさん。仕方なく、最短になる3カ月後を解約日にしますと伝えました。
解約日まで1カ月以上あると思っていたら…
その後のAさんは、転勤のための業務引継ぎや新しい支社への事前出張などで忙しく、引っ越しの手続きや荷物の整理はそれでなくても後回しになりがちです。余分な家賃支払いもすぐに「仕方ない」とあっさり諦めてしまいました。
その後転勤先での部屋も決まり、引っ越し業者の手配と退去日の通知も済ませたものの、業務の忙しさに部屋の片づけは捗らなかったAさん。引っ越ししてからも、まだ1カ月部屋の契約が残っていることもあり、「間に合わなくて荷物が残ってしまっても、もう一度こちらに来て整理すればいい」と油断していました。
そしてやってきた引っ越し当日。あらかたの荷物は引っ越し先への運びだされたものの、趣味の道具や靴など、後輩に譲る約束をしていた一部の家財は部屋に残していました。これからゆっくり整理しようと思っていたところ、再び管理会社から連絡が来て驚きます。
「退去日には鍵の返却が必要です。立ち合いでの返却をお願いします。あと、退去日の変更はできません」
まだ1カ月以上先の解約日まで家賃は払っているのに、なぜ鍵を返却しなければいけないの!? 納得できなかったAさんはなんとか交渉して退去日を1週間延ばしてもらうことに…。結局後輩に鍵を預け、残った荷物を引き取ってもらい、最終的に鍵は郵送で返却することになりました。
立ち合いをしなかったせい?
煙草も吸わず、家で料理もほとんどせず、ペットも飼っていないAさん。これまで退去時に追加精算が来たことはなく、今回もそのつもりでいました。
しかし、今回は「クローゼットの扉に傷あり」「フローリングに剥がれあり」と全く心当たりのない請求が来てしまいました。退去時の立ち合いもできなかったため、本当に傷がついているのかその場で確認もしていません。最終的に、泣く泣く数万円の振り込みをしたそうです。
◇ ◇
慣れている人ほど「一般的」な流れと思い込んできちんと確認しなかった…というトラブルは不動産以外でもありそうです。毎回キッチリ自分で確認!がトラブル回避の最優先事項ですね。