大学生になったAさんは、自動車の運転免許を取得しました。夏休みの旅行に、自宅の車を運転して出かける計画を立てていたところ、「保険料が上がってしまうから、自宅の車は運転させられない」と父親に言われてしまいました。
仕方なくAさんは、カーシェアや、レンタカーを借りることを検討しています。しかし、せっかく自宅に車があるのに別の車を用意するのはもったいないと感じています。
そもそも自動車の任意保険は、運転手が1人増えることで大幅に保険料が上がってしまうのでしょうか。また、Aさんが自宅の車を運転するための代案はないのでしょうか。損害保険に詳しい株式会社スタイリッシュエージェンシーの米谷武氏に話を聞きました。
ー自動車保険の保険料はどうやって決まるのでしょうか。
自動車保険の保険料が決まる要素は、主に保険の対象になる車の車種、運転者の範囲や免許証の色、補償の中心となる人(記名被保険者)の属性、ノンフリート等級、使用目的などが含まれます。
今回のAさんのケースでは「運転者の範囲」が関わってきます。「運転者の範囲」とは、運転者を限定するか、しないか、また運転者の年齢条件を設定するかどうかで決定され、その内容に沿って保険料が変動するのです。
もし運転者を限定する場合、「本人」や「本人・配偶者」に限定することができます。「運転者年令条件」は「年令を問わず補償」「21才以上補償」「26才以上補償」「35才以上補償」の4種類で構成される場合が多いです。
保険料はこの限定範囲が狭くなるほど、基本的には安くなります。尚、保険会社によって異なる場合もあるのでご注意下さい。
ー子どもの免許取得を機に保険を見直すとどれくらい費用があがるのでしょうか
元々の契約条件や、補償額などによって異なるため、一概に何割上がるというのを算出することは困難です。一例として、2017(平成29)年2月登録のエスティマに掛けている保険では、運転者年令制限を「35才以上補償」から「年令を問わず補償」に変更したところ、年間の保険料が79,260円から191,300円へと倍以上に値上がりをしました。
運転者年令制限を外しただけで、年間の保険料が倍以上に上がったのですから、Aさんのご両親が保険見直しを拒否するのも不思議ではありません。
ー子どもがあまり車に乗らない場合、別の手段はありませんか
「1日自動車保険」を利用する方法があります。この保険は24時間単位で契約をする自動車保険です。スマホやコンビニで契約できるため、1日だけ使用するという場合に便利です。保険料は、補償内容によって800円から契約できます。
前述したエスティマの保険の場合、年令制限を外した場合の保険料の差額は約11万円です。800円の1日自動車保険を利用するとなれば、11万円÷800円=137. 5日となり、月に10日ほどの使用であれば、1日自動車保険のほうが安くなります。
ただ、1日保険は利用の都度手続きが必要という煩雑さもあります。実際に利用する場合には、補償内容と年間保険料の差額や利便性なども調べたうえで比較されるといいでしょう。
また「運転者年齢制限」は、「同居の親族」が対象です。もしAさんのご両親が契約している保険に運転者限定がない場合で、なおかつ、Aさんが同居ではなく、別居した場合には年令制限を外さなくても補償されるので、保険を変更する必要はありません。
お子さんが免許を取得した際に、自動車保険を見直さなければならないと考える人も多く、実際に問い合わせを受けることもあります。しかし、お子さんの状況によっては見直す必要がない場合があるので、約款をよく確認するようにしてください。
◆米谷武(よねたに・たけし)/損害保険代理業 大卒後、損害保険会社で22年間勤務した後、2020年より損害保険代理店へ転職。地域の中小企業経営者向けに、安定した経営ができるように【損害保険】を活用したサポートを行っている。保険会社勤務の経験を活かした「わかりやすい」提案が評価されている。プライベートでは5人の子を持つ父親で、地域の少年野球チームの代表者としても活動中。