50匹以上のアメショとアメショMIXの多頭飼育崩壊 むごい現場にも「可愛いが先に」と笑うアニマルホーダーの根深い闇

渡辺 陽 渡辺 陽

50匹のアメショとアメショMIX崩壊

梅福さんは、アメショとアメショMIXが50匹以上いた多頭飼育崩壊の家庭からレスキューされた。2017年5月、関東地方に住む飼い主は、NPO法人ねこけん(以下、ねこけん)にSOSを出した。

「助けてください。猫が40頭近くに増えて、また子猫が産まれました。うちの猫はみんな可愛くて愛くるしいのですが、このまま40匹全部の猫を飼っていると金銭面の問題に加え、日々の掃除も大変だし、色んな家具などを壊されて、精神的にも私たち家族は限界に近づいています。家も広いわけではないので縄張り争いなどで猫もストレスがあると思います。新しく迎えてくれるご家族の方に巡り会えた方が幸せに暮らせると思っています。どうか力を貸してください。」

急ぎレスキューに向かったねこけん部隊。現場へ到着すると、窓からねこけん部隊の様子を伺う1頭の猫がいた。玄関ドアが開くとかなり強い猫のおしっこ臭が漂って来て、子猫を抱えた飼い主が出てきた。

「全ての猫達は、1Fのキッチンにいるということでした。キッチンにはムンとする糞尿の臭いが立ち込め、猛烈に暑く、さながら糞尿のミストサウナの中にいるようでした。」

低いテーブルの周囲にはアメショの渦巻き模様が固まっていていて、猫達は縦横無尽に逃げ回り、キッチンの引き出しの中や壁の隙間にも、ぎっしりと入りこんでいたという。

「猫達は人に慣れていましたが、いきなり知らない人達が来て捕まえようと追いかけられたら逃げるのは当たり前です。」

それを何とか捕まえて洗濯ネットに入れ、キャリーに入れていくメンバー。猛烈な暑さで、みんな体中汗でびしょびしょになった。

子猫が食べられても、「子猫が可愛い」という異様

ねこけんの代表は、捕獲をしながら首をかしげた。

「大人の猫の頭数を考えると、子猫が8匹というのは少なくて・・・それは、産まれた子猫が食べられてしまっていたからでした。なぜ不妊去勢手術をしようとは思わなかったのか聞くと、娘さんは『子猫の時は可愛いけど、大人になるとあまり…。不妊去勢というよりも、子猫が可愛いというのが先に立ってしまって…』と言いました。」

さらにその母親は、『あー!それよ!それっ!可愛いが先になって!それよ!』と続けたという。子猫は確かに可愛いが、その可愛い子猫が、頭が無いとか体が半分になって落ちているという状態になっていた。

飼い主は自室に子猫を入れて他の猫に食べられないようにして、ある程度大きくなったら大量の猫が生活するスペースに戻すことを繰り返していた。

「その結果、また子猫が誕生し、お世話が行き届かないほど増え続け、不妊去勢手術代が出せない状態になり、室内も荒れ果て悪臭が漂う結果になったのです。」

劣悪な環境で生き延びた猫たち、寿命が短い子も

しかし、この現場は他の多頭飼育崩壊とは違う何か「違和感」があった。それは、飼い主が、「明るい」ということだった。

「ねこけんは、過去に何度も多頭飼育崩壊のレスキューに入りましたが、皆様沈痛な面持ちで『すみません』『申し訳ない』『この子達をお願いします』など、反省の言葉を繰り返し、涙しておられました。でも、今回は笑顔だったのです。」

アニマルホーダーコレクタータイプの多頭飼育崩壊は、人間側の気持ちで「可愛い部分だけを集める」ので、悲壮感というよりは「可愛い部分を集めていたら、手に負えなくなり困った」と矮小化されたようだった。しかし、実際には子猫が頭から食べられるという恐ろしい光景が繰り広げられていた。40匹と聞いていた猫は、実際には50匹いた。

保護した大量の猫達に仮名を付けるのも大変で、アメリカの州の名前が仮名になった。現在はケンタッキー1頭だけが、メンバ―宅で病気のケアを受けながら暮らしているが、その他の猫達は全頭、新たな家族の元で幸せになったそうだ。

しかし、劣悪な環境の中で長年生き延びてきた猫達なので、既に数頭は虹の橋へと旅立っている。

「愛らしいお顔のジョージア(現・梅福さん)は、優しいご夫婦の元で愛情山盛り生活を送っていました。ご夫婦は後に、アメショ軍団の中からバージニアという猫も迎えてくレました。2匹でもっともっと幸せの思い出を積み重ね、家族で仲良く年を重ね…そんな生活が続くはずだったのに、梅福さんは虹の橋を渡りました。」

梅福さん達を苦しめていたのも、そこから救い出したのも、家族を迎え愛情で包んでくれたのも全て人間。出会う人間によって猫達の未来が変わる。梅福さんは、両手に抱えきれないほどの愛情を持って旅立ったという。

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