「揺れが全然違います」 新型やくも “ぐったり”の汚名返上へ、試乗会の評判は上々

山陽新聞社 山陽新聞社

 JR西日本の新型車両「273系やくも」は6日のデビューまであとわずか。岡山駅(岡山市)と出雲市駅(島根県出雲市)を結ぶ特急列車に新型が登場するのは約40年ぶり。3月23日には伯備線岡山―新見(岡山県新見市)間を往復する試乗会があった。快適性が格段に向上したというニューフェースを一足早く体感した。

 岡山駅にゆっくりと入線してくるブロンズ色の車両。クリーム色をベースに窓周りが赤い現行の381系からの「イメチェン」ぶりに目を見張った。沿線の風景や歴史から着想したオリジナルカラーは上質で気品すら感じる。「色がかっこいい。今日はいっぱい写真を撮りたい」。車体にカメラを向けながら笑顔で話す園児(5)=京都市=の言葉にうなずいた。

 車両は4両編成で全席指定。まず案内された普通車は一帯の豊かな自然にちなみ、緑色を基調とする。各座席にコンセントがあり、車内Wi―Fi(ワイファイ)も整備されている。

 大型荷物置き場、トイレ、多目的室を見学し、いよいよ気になるグリーン席へ。山陰の文化、風土をモチーフに、黄色をベースにした落ち着きある空間が広がる。座席は柔らかで前後の間隔は新幹線と同じらしい。ゆったり感は抜群だ。

 目玉の一つがグリーン席と同じ車両に設けられた半個室「セミコンパートメント」。雲がデザインされた仕切りとテーブルは天然木製で温かみがある。座席は2人用と4人用があり、収納式のシートを引き出すことで座敷のようにフラットにできる。家族で思い思いにくつろげるのはもちろん、小さな子どもが寝てしまっても安心できそう。普通車と同額なのもありがたい。

 「乗り心地で進歩を感じてもらえるはずです」。後藤総合車両所出雲支所で車両管理係を務める加藤孝信さん(41)が太鼓判を押すのが、20年かけて開発したカーブの揺れを抑える新技術だ。

 現行の381系は乗り物酔いする人が続出することから、愛称の「ゆったりやくも」をもじって“ぐったりやくも”などとやゆされてきた。カーブが多い伯備線で遠心力に任せて車体が傾くためだ。

 新型はあらかじめ登録した地図データとセンサーを駆使し、不快な横揺れの原因となる車体の動きのタイムラグをなくしたという。試乗のため新見駅まで381系で訪れた参加者(26)=横浜市=が「381系は何かにつかまらないと立っていられなかったが、新型はどこも持たずに歩ける。揺れが全然違います」と教えてくれた。

 試乗会は岡山、山陰の6コースで開かれ、岡山県内を走る1往復2コースには抽選倍率56倍を突破した約120人が参加。それぞれ約1時間半の旅程を楽しんだ。

 沿線には四季折々の自然をはじめ、美肌の湯として知られる皆生温泉(鳥取県米子市)日本夕日百選にも選ばれた宍道湖(松江市)出雲大社(出雲市)など数々の観光スポットがある。新型は運行開始当初、1日15往復のうち6往復に投入され、6月15日以降は全て入れ替わる。

 試乗会の日はあいにくの雨で取材もあり、車窓の景色や快適さをじっくり堪能とはいかなかった。今度は休暇を取り、この車両で山陰への鉄道旅をのんびり、ゆったり味わいたい。

 やくも 1972年の山陽新幹線岡山開業に合わせて誕生し、82年の伯備線電化で現行の381系車両になった。最高速度は時速120キロ。岡山―出雲市間を約3時間で結ぶ。新型車両は11編成44両(1編成4両)が投入される計画で、更新費用は約160億円。

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