故障して動かなくなった車を移動させたいとき、タイヤを直接手で回すと、車体を後ろから押すよりも軽い力で動かせることが、警視庁警備部災害対策課のX(旧Twitter)で紹介され、話題になっている。なぜそのようなことが可能なのだろうか。警視庁が取材に応じてくれた。
1人でも動かせるが安全のためハンドルとブレーキを操作する人がいたほうがいい
自動車を運転中、突然の故障で動けなくなってしまった。交通の妨げにならないように、ひとまず車を道路の端へ寄せなければいけない。
そんなとき、たいていの場合は車体を押して移動させようとするだろう。もちろん、その方法でも車を動かせるが、もっと軽い力で動かせる方法が2月13日のXに投稿されていた。
「ギアをニュートラルに入れ、サイドブレーキを外します。車のボディーを押すのではなく、直接手でタイヤを回すことにより軽い力で動かすことができます。ちなみに後輪でも前輪でもOKです。1つの方法として知っておくと役に立つかもしれません」(警視庁のX投稿より)
では、この方法だと、なぜ軽い力で動かせるのだろうか。
警視庁によると、「面ではなく点で押す」からだそうだ。
車を後ろから押すと、力がタイヤから遠いため、押した力が分散してしまう。タイヤを直接押すと、ダイレクトに力が伝わり、4つのタイヤは基本的に連動しているため動きやすいのだという。
しかも、タイヤの中心と外径でテコの原理がはたらくため、外形の大きいタイヤのほうが軽く動かすことができるとのこと。
「1人でも動かすことはできますが、運転席にハンドルとブレーキを操作する人がいたほうが安全です」
では実際に、どれくらい軽くなるのだろうか。
「1人の力でも4トントラックを動かせるそうです」
ひと口に「1人」といっても体力や年齢による差はあるが、かなり楽に動かせるイメージだ。
取材対応に当たってくれた担当者は「勤務中、故障車輌をこの方法で、何回か移動させました。また、災害訓練でも使っています」と語る。
あくまで「一例」なので現場ではより安全な方法を選択すること
「常識的に判断すべきことと思いますが」と前置きしたうえで、坂道での対応について、あえて尋ねてみた。
「一度、惰性がついて動いてしまうと止めることが難しいので、危険です」
タイヤを手で回す方法は故障車を道路の端に寄せるため、ごく短距離の移動に使える方法なのだ。
これが唯一無二の方法として推奨されるわけではなく、こうすれば軽い力で移動できるという一例を示したのであって、どのような方法で移動させたらより安全を図れるかは、実際の状況しだいで判断が変わるとのこと。
また、先述したように、1人でも動かせるが、同乗者がいないときは務めて周りに協力を求め、タイヤを回すかハンドル操作を手伝ってもらうほうが、より安全に移動出来るため、ためらわずに協力を仰いだほうが良い。
いずれにしても、ちょっとしたコツを知っていると、車が故障したときに慌てずに対応できるはずだ。
▽警視庁警備部災害対策課公式X
https://twitter.com/MPD_bousai
https://twitter.com/MPD_bousai/status/1757177770742890624