2023年秋、茨城県動物指導センターにオスのダックスフントのシニア犬が収容されました。後につけられた名前は「九くん」。ボロボロの状態で県内を彷徨っているところを保護されました。
九くんが過去どのような生活をおくっていたかを知ることはできませんが、ダックスフントという犬種であること、そしてシニア犬であることを考えれば、もともとは飼い犬だったと思われます。しかし、健康状態は最悪で、歯周炎でマズルが腫れ上がっており、皮膚の状態も悪く痒みもひどそうでした。
引き出したその足へ動物病院へ
「放っておくわけにはいかない」と九くんを引き出すことを決意したのが、保護活動を行う団体・Delacroix Dog Ranch(以下、D.D. Ranch)。引き出した後、すぐに動物病院へ連れていきました。獣医師によれば、九くんの状態は悪く、長期的な通院が必要といいます。
メンバーは診断と今後の通院を受け入れ、いったんはD.D. Ranchに登録する預かりボランティアさんの家で九くんのお世話をしてもらうことにしました。
しかし、この家に来てすぐにアクシデントが起こります。九くんが突然、てんかん発作のような症状を起こしました。メンバーは再び動物病院に向かい、発作止めの処置をしてもらいました。発作の原因についても今後、経過観察が必要になりました。
「あれはなんだったのか」と思えるほど回復
D.D.Ranchのインスタグラムでは、これまでの九くんの話や病状を紹介しました。多くの人から、九くんの回復を願うコメントが寄せられました。思いが通じたのか、少しずつ九くんは元気を取り戻し、後には「あの発作はなんだったのだろう」と思えるほどに、健康状態が良くなりました。
そして関係者を和ませてくれたのは何よりも九くんが笑顔を取り戻してくれたこと。インスタグラムで応援し見守っていた人たちも、九くんの回復をおおいに喜びました。
「行かないで!」と玄関前で泣きわめく九くん
過去のトラウマからか、保護当初の九くんには分離不安のような症状が著しくありました。特に嫌がったのが預かりボランティアさんが外出するときです。「行かないで!」「行っちゃ嫌だよ!」と玄関の前でずっと鳴きわめくのです。胸が苦しくなる預かりボランティアさんでしたが、数日が経過すると、九くんは以前ほど嫌がる素ぶりを見せなくなりました。
これは九くんが毎日の暮らしを通して、預かりボランティアさんに対して「この人は僕を裏切り見捨てる人ではないんだ」「絶対に帰ってくる人なんだ」と信頼を寄せるようになったからだと思われました。
過去を思えば今の甘えぶりでも足りないほど
当初ハゲハゲだった皮膚は適切な治療のおかげでかなり良くなりました。脱毛箇所は完治とは言えぬ状況ではあるものの、生えている部分は当初よりもツヤツヤになりました。
シニア犬にして「超」がつくほどの甘えん坊の九くんですが、これまで心身ともにボロボロになり彷徨っていたことを考えれば、今の甘えっぷりでも全然足りないようにも思います。九くんがぴったりの里親さんと出会い、その晩年が穏やかでいっさいの不安のないものになることを願うばかりです。
Delacroix Dog Ranch
https://ddranch.jp/