外来生物で、イネや水田植物を食い荒らす「スクミリンゴガイ」(通称ジャンボタニシ)。SNSで「水田の雑草除草のためにジャンボタニシをまく」という投稿が批判を浴び、農林水産省も公式Xで注意喚起するなど波紋が広がっている。専門家も「ジャンボタニシを管理することは不可能」と警鐘を鳴らす。
ジャンボタニシは1980年代に食用として日本に導入された。しかし野生化した個体がイネを食い荒らすなどし、84年に植物防疫法に基づき有害動物に指定され、輸入も禁止に。柔らかい葉を好んで食べるため、イネなどに大きな被害をもたらす。稲の茎などに産み付けられる濃いピンク色の卵には神経毒が含まれる。
このたびインスタグラムで、就農者とみられる人物がジャンボタニシを水田にまいている写真が投稿され、物議を醸した。「生きてる除草剤を撒く」といったキャプチャが添えられており「問題ではないのか」と批判が殺到。農林水産省は公式Xで「一度(農地に)侵入・まん延すると根絶は困難」と投稿し、放飼をやめるよう強く訴えた。
人と自然の博物館(兵庫県)の三橋弘宗主任研究員も、ジャンボタニシが周囲に逃げ出して迷惑をかけることになると、行為に警鐘を鳴らす。「水路は繋がっている上、自然界では大雨もあれば、畔が壊れたり動物が穴を空けたりと予期せぬことがある。管理は基本的に不可能です」とする。
「県内でもジャンボタニシによる農業被害にあっている方、地域で不快に感じている方は大勢おられます。駆除しないと農業被害を助長する一方、駆除する場合も薬剤や労力などの支出が発生し農家に負担をかけます」とし、早めに駆除する重要性を強調。広範囲にジャンボタニシが拡散してしまった場合、農家の収益を守るために相当量の薬剤が使用されることになり「結果として在来の水生生物の影響だけでなく、水質にも大きな環境負荷になります」と指摘する。
三橋研究員は「ときどき外来生物との共存共生を唱える人がいますが、将来的なリスク、生態系が大きなシステムであるということを念頭に置き、トータルで自然への影響を理解することが重要です」と話している。