【ブギウギ】「私は女豹だ!」スズ子の新境地「ジャングル・ブギー」…“夜の女”たちの生き様から生まれた、戦後の人々への讃歌

佐野 華英 佐野 華英

 今週放送された『ブギウギ』(NHK総合)第20週「ワテかて必死や」では、「東京ブギウギ」が大ヒットするも、まだまだ市民の生活は貧しく、戦後の混乱が続く中、スズ子(趣里)が“夜の女”たち、そして彼女らを取り仕切るおミネ(田中麗奈)と出会い、心を通わせていく姿が描かれた。

 また、ガード下で出会った靴磨きの少年・達彦(蒼昴)の母親が幼なじみのタイ子(藤間爽子)だとわかり、スズ子とタイ子は、ツヤ(水川あさみ)の葬式以来8年ぶりに再会する。しかし病気で寝たきりで、息子の靴磨きのわずかな収入で糊口を凌ぐタイ子は、あまりの境遇の違いから、スズ子を拒絶してしまった。しかし、やがて2人は互いの気持ちをぶつけ合い、「スズ子のおせっかいのおかげで、タイ子は一歩踏み出せた」「タイ子が背中を押してくれたから、スズ子が歌手を目指すことができた」という少女時代の原点に立ち返り、和解するのだった。

 本日2月16日放送の96話でスズ子は新曲「ジャングル・ブギー」を舞台で初披露し、パワフルなパフォーマンスで観る人たちを奮い立たせた。ステージを見つめるタイ子、達彦、おミネ、そしてスズ子に共感した“夜の女”たちの弾けるような笑顔が印象的だった。作曲者である羽鳥(草彅剛)いわく「これまで誰も聴いたことがない、力強く強烈で、野獣のような曲」「ジャングル・ブギー」の魅力について、制作統括の福岡利武さんに聞いた。

「ジャングル・ブギー」には、これまでのどの曲にも似ていない、ユーモアと力強さがある

「初めて聴いたとき、本当に面白い曲だなと思いました。実際には黒澤明監督作品『酔いどれ天使』(1948年)の挿入歌ということで、作詞も黒澤監督自らつとめておられるのですが、歌詞がまず天才的。この歌詞にブギの音楽が乗るというのがとても楽しいですよね。これまでのスズ子の歌のいずれとも方向性が違う、ユーモアと力強さに圧倒されます」

 スズ子が心を寄せる“夜の女”たちの逞しさについて熱弁するのを聞き、映画監督から預かっていた詩と化学反応が起きて、羽鳥に曲が「降りてくる」シーンがなんとも面白い。このシーンについて、福岡さんはこう振りかえる。

「羽鳥というのは、『努力と天才』を併せ持つキャラクターなんですよね。普段から常人の想像を絶する努力を重ねて、なおかつ、どこまでも音楽の力を信じる『前向きな明るさ』を持っている。だからこそ、ああいう場面でパッと曲が“降りて”きたりする。演じる草彅さんご自身も、どんなところでも努力を怠らない方で、羽鳥役を面白がって楽しみながら、どのシーンでも色々とプランを考えてきてくださいます。『ジャングル・ブギー』誕生のシーンは、『名曲ができた!』という実感がこもっていて、とても熱いシーンになったのではないかと思います」

「スズ子の表情と、身体全体から出る力強さを収めたい」と意識して撮影

 さらに、異色の魅力を発する「ジャングル・ブギー」のステージングについても、

「『ワイルドさ』をテーマに、スズ子の表情と、身体全体から出る力強さを収めたいと意識して撮影しました。歌詞冒頭に出てくる『私はめひょう(女豹)だ』というフレーズからインスパイアされた振り付けも面白かったですし、衣装部が頑張ってくれて、豹柄をフィーチャーした衣装がとても素敵でした。出来上がった衣装を見て趣里さんも『テンション上がります!』とおっしゃって、盛り上がって撮影ができました」

 と語った。スズ子、おミネと“夜の女”たち、靴磨きの少年・達彦、幼なじみのタイ子ら、戦後の混沌を逞しく生きる人たちへの讃歌「ジャングル・ブギー」。『ブギウギ』という名のアルバムに、またひとつ名曲が加わった。

   ◇   ◇

『ブギウギ』
【出演】趣里 水上恒司/草彅剛 蒼井優 菊地凛子 生瀬勝久 小雪 水川あさみ 柳葉敏郎 ほか
【主題歌】「ハッピー☆ブギ」中納良恵 さかいゆう 趣里
【脚本】足立紳 櫻井剛
【音楽】服部隆之
【語り】高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)

【放送時間】
▽NHK総合
毎週月曜~土曜 前8:00~8:15/(再)後0:45~1:00(※土曜は一週間を振り返り)
毎週日曜(再)前11:00〜11:15
翌・月曜(再)前4:45~5:00(※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送)
▽NHK BS・NHK BSプレミアム4K
毎週月曜〜金曜 前7:30~7:45
毎週土曜(再)前9:25〜10:40(※月曜~金曜分を一挙放送)

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