目が見えない人も楽しめる手品をつくる京都府立盲学校(京都市北区)の数学講師が、成功や失敗談、願いを記したエッセー集「盲学校でマジックショーを!」を出版した。「盲学校マジック」と名付けたオリジナル手品を共有し、普及させたいと意気込んでいる。
「万博(ばんぱく)さん」を名乗る著者の今西雅次さん(37)=山科区=は、京都教育大2年の時に国内の有力マジック大会で3位になった実力の持ち主。大学時代に聴覚障害のあるマジシャンのショーに衝撃を受け、視覚障害者が楽しめるマジックをつくりたいと思うようになった。
社会にほぼ存在しないジャンルのマジックだけに、まずは現場経験を積んで目の見えない人の世界の捉え方を知ろうと、2010年、大学院進学と同時に府立盲学校で非常勤講師として働き始めた。
「盲学校マジック」の鍵となるのは、マジシャンの言葉や奏でる音、参加者の想像と感じた手触り。今西さんは古典マジックを参考に、従来は視覚で見せてきた動きを触覚に置き換えたオリジナル手品を考案。授業の合間や文化祭で披露し、参加者がスプーン曲げのように手で操作する手品や、数学を応用した計算を考えて驚かせてきた。卒業に合わせたメッセージを込めた手品もある。
中には、研ぎ澄まされた触覚で手品のからくりを察知する生徒もいる。10年を超える試行錯誤の期間を経てレパートリーは80を超えた。
目標は、盲学校マジックを100種類まで増やし、必要な工夫や注意を共有して全てのマジシャンが披露できるようにすること。手品は目に見える人のものという考え方をなくすこと。今西さんは「盲学校マジックは特殊なものでないし、全盲や弱視の人も特別な人ではない。目を閉じて耳を澄まし、見えない世界を想像して少し工夫すれば、一緒に楽しい時間が過ごせると知ってほしい」と話している。
A5判110ページ。1650円。出町桝形商店街にある「風の駅」やインターネット通販のアマゾンで販売している。