「娘は毎日、絵の勉強をしています」ノートメーカーに届いたお礼とリンゴのデッサン 視覚過敏、感覚過敏の目に優しいノートの開発舞台裏

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「白いノートがまぶしくて書けない」「ノートに文字を書くことができず、勉強ができない」といった悩みを持つ方に向けた、目に優しい『mahora(まほら)ノート』がSNSで話題になっています。企画開発した大栗紙工株式会社のもとには、購入者から感謝の声が続々と集まっています。

 視覚過敏、感覚過敏がある発達障がいの方や、書字障がいの方を含め、みんなにとって使いごこちのいいノートを追求したという『mahora(まほら)ノート』は、2020年に発売開始。古語の「住みやすい場所=まほろば」という言葉から名付けられました。

 2021年に日本文具大賞とグッドデザイン賞を受賞し、「ノートを使う際の様々な感覚や気持ちに寄り添ったものづくり」と高く評価されました。当初、「発達障がいの方にとって、ノートが見にくくて文字が書きづらいということを知らなかった」と驚きの声が寄せられました。

 Twitterでは、学校の特別支援学級で指導する先生や、発達障がいの方やその親御さんから、mahoraノートに出会えた喜びの声が投稿されています。

「まぶしくないし、書き心地が柔らかい!お値段以上!」
「デザインもおしゃれで素敵!応援しています」
「明らかに目の疲れが軽減される。支援級の生徒がノートを忘れたとき、体験してほしくて用紙を渡してる」
「普通のノートだと、字が小さくなりすぎて文字が踊っちゃうけど、mahoraノートだと安定して書ける」

 創業93年になる老舗ノートメーカー、大栗紙工株式会社(大阪市生野区)の取締役である大栗佳代子さんに、開発の舞台裏を聞きました。

ーーmahoraノートの企画から販売までの舞台裏を教えてください。

「大栗紙工は従業員30名ほどの町工場で、これまでは大手文具メーカーの協力工場としての受注生産を主に行ってきました。発達障がい当事者の方から、『ノートがまぶしくて文字が書けない』というお声をお聞きする機会があり、このお悩みを解決したいという思いで、当社では初となるオリジナル商品として、『mahora(まほら)ノート』の企画開発に挑戦しました。

 商品化にあたり、発達障がいの方を支援する一般社団法人UnBalance(大阪市平野区)様と共に、発達障がいの当事者約100人の声を集めて、サンプルを何回も作り直し、試行錯誤して完成しました。発売当初は認知度が低かったため、クラウドファンディングで出資を募り、多くの方々から応援していただくことができました。

 アンケート調査で、感覚過敏などのある方は、『白い紙の反射がまぶしい』、『右上に日付記入欄などがあると集中できない』、『罫線の行に合わせて書くことができない』、という3つの悩みがあることがわかりました。長年ノート製造に携わってきた当社が『当たり前』と思っていたことが、学習の妨げになっているという事実を初めて知りました。

 そこで、まず目に優しい色合いのサンプル用紙を10種類ほど作ってヒアリングした結果、ノート用紙をレモン色・ラベンダー色・ミント色の3色展開としました。また、罫線を太線・細線の交互にしているタイプと、行の区切りを薄い網掛けにしているタイプの2種類をご用意しています。日付欄も無くし、目に優しいシンプルなデザインにしました。感じ方によって見やすさにも個人差がありますので、希望者の方には無料でサンプル用紙を郵送しています」

ーーmahoraノートユーザー様との印象的なエピソードを教えてください。

「目の感覚過敏のある娘さんのお母様から、お礼のメールを頂戴したことがあります。その娘さんは、幼いころからお絵描きが大好きだったのですが、視覚過敏のため、黒板のようなボードに絵を描いていたそうです。しかし、黒いボードでは線や色付けも思うように描けず、幼稚園のころからは絵を描かないようになってしまいました。

 小学6年生のころにmahoraノートに出会い、これまでノートの白色をまぶしいと感じていたことに気付いたそうです。気付けたことで、ノートに向き合うことが苦痛ではなくなり、薄いサングラスを使用することで、スケッチブックに絵を描けるようになりました。

 そして、学校や自宅の勉強では、mahoraノートを使用してくださるようになりました。コロナ禍は自宅で過ごすことが多かったので、朝はmahoraでノートで勉強し、昼はサングラスでお絵かき、夕方はmahoraノートで文章を書いたり、さまざまなペンで線を引いて鮮やかに発色する色を見て、学習が楽しくなったということです。mahoraノートが書きやすいおかげで、国語の先生に字を褒められたそうです。

 このような内容を2度にわたり、お母様からメールで伝えてくださいました。そのあと、2021年8月に、mahoraノートのことを取り上げていただいたテレビ番組をご覧になってくださったようで、娘さんが、番組で見た私をmahoraノートに描いてくださいました。

 お母様が、『娘がノートの真ん中にこのような絵を描きました』と、イラストをメールで送ってくださいました。実物の私よりかなり若くかわいく描いてくださり、メッセージも添えてくださいました。とても嬉しくて、私の方が感謝の気持ちでいっぱいになりました。

 それから1年も経たないうちに、『娘は毎日、絵の勉強をしています』といって、りんごのデッサンをまたメールで送ってくださいました。長い間、絵を描くことから遠ざかっていた娘さんが、mahoraノートに出会ったことで絵の勉強を始められたことを知り、本当に感激しました。

 それから2022年8月に、『文紙MEESE2022』という文具の祭典(展示会)に当社が出展するということをSNSで告知したところ、その娘さんがお母様と一緒に、わざわざ当社のブースを訪ねてきてくださいました。

 お名前を告げられ、『直接お会いして、どうしてもお礼が言いたかったので来ました』、と仰ってくださいました。娘さんが美術系の学校に進みたくて勉強していること、先日高校の美術科の体験に行ったら絵を褒めてもらえたということも聞かせていただきました。絵を描くことに一生懸命取り組んでおられることを知ることができ、mahoraノートを作って良かったと、しみじみ思うことができました」

ーー他にも、mahoraノートのユーザーの方々からは、多くの感謝の声が届いているようですね。

「学習意欲はあるのに、ノートに上手く文字が書けないがために、勉強が苦手・嫌いになってしまっていたという方からも、mahoraノートで文字が書けるようになった、勉強が楽しくなった、というお声をたくさん頂戴しています。

 発達障がい当事者の方からの喜びのお声はもちろん、ノートが書けるようになった子どもの笑顔が嬉しい、親子で救われた、という親御さんからのお声も頂戴し、本当にありがたく思っています。これまで真面目にノートを作り続けて良かったと実感しています。これからも快適でストレスフリーなmahoraノートをお届けし、多くの方々に教育の機会と学ぶ喜びを提供していきたいと考えています」

◆大栗紙工株式会社
大阪市生野区巽北3丁目15番7号
オリジナルブランド『OGUNO』https://www.oguno.jp/
『mahora(まほら)ノート』https://www.oguno.jp/mahora/

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