増え続ける映画の入場者プレゼント、劇場スタッフの本音は「大変です」 1人ずつ手渡し、週替わりで変更…特典目当てで映画を見ずに帰る人も!?

黒川 裕生 黒川 裕生

原作コミックスの小冊子やポストカード、ステッカー、フィルムの一部…。アニメを中心に、映画館の入場者プレゼント(入プレ)文化が隆盛を極めている。作品のファンにとっては嬉しい特典なのだが、入場時に1人ずつ手渡ししなければならない劇場スタッフは業務量が増える一方だという。「20年前に比べると、スタッフの仕事はめちゃくちゃ多いし複雑。大変ですよ…」と嘆くシネコン関係者に内情を聞いた。

冊子、カード、ステッカー…百花繚乱の入プレ

1月30日現在、上映中の映画で入プレがある作品の一例を挙げると、「機動戦士ガンダムSEED FREEDOM」ミニ設定冊子(2月2日から)/「セマンティックエラー・ザ・ムービー」SNS 風クリアカード/「劇場版SPY×FAMILY CODE:White」ARイラストカード/「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」描き下ろしビジュアルカード/「ウィッシュ」ステッカー…などなど。中には週替わりで新たなプレゼントが投入されるケースもある。

「週替わりになると、当たり前のことですが、今配っている特典と次に配る特典を間違えないようにしなければいけません。ただ、ややこしいのは作品によって『1週目に配るプレゼントは2週目には配らないで』ということもあれば、『1週目のが余っていたら2週目にも一緒に配ってください』ということもある。指示がバラバラなので、渡し忘れなどが発生しないよう管理するのが結構大変なんです」

入プレだけもらい、映画を見ずに帰る人も

IMAX版、ドルビーシネマ版、通常版と上映形態ごとに異なるデザインのステッカーなどが用意されることもあるため、熱心なファンはコンプリートを目指して劇場に何度も足を運ぶ。中には入プレ目当てで、映画を見ずに帰る人もいるという。

「映画館としては『せめて1回は入ってくれよ』と思いますし、注意することもあります。ただ、お客さんによっては劇場をハシゴする人もいるんです。特に、デザインがランダムだったりすると、目当ての入プレを入手しようと躍起になる。映画館のロビーで交換する人や、SNSで交換の取り引きをする人もいますね」

チケットレスでもスタッフを減らせない理由

映画館では今、入場ゲートにQRコードをかざす「チケットレス」の取り組みが進んでいる。これで省人化が図れると思いきや…。

「チケットレスになっても、入プレがある限りは入場口のスタッフをゼロにはできません。入場口にワゴンを置いて『この作品を鑑賞する人は1個ずつ取って行ってください』ということができるかというと、現実的ではありませんし…」

現場への負荷は大きいとはいえ、そんな入プレがリピーターの増加やロングラン上映に寄与しているのは確かだという。「映画館としては助かっている部分もありますし、賑わいを創出してくれていることに感謝の思いもあります」とシネコン関係者。「配信で映画が見られる時代に、今なお映画市場が2000億円規模をキープできているのは、入プレがまだ力を持っていることの証左かもしれません」と話す。

さて、2月2日に公開される注目作「『鬼滅の刃』絆の奇跡、そして柱稽古へ」も、「柱稽古指南書」という特別冊子の入プレが告知されている。シネコン関係者は「今後も入プレ付きの作品が増えることはあっても、減ることはしばらくなさそう」と見ている。

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