ああ、“宅浪”の1年間はキツカッタ「1000万円もらっても、二度としない」 1人で模試の結果に一喜一憂…経験者が語る「孤独な闘い」のリアル

新田 浩之 新田 浩之

新年を迎えると同時にスタートするのが大学受験です。大学受験は「受験」ということもあり、不合格者がどうしても出てしまいます。不合格者の中には「どうしても志望校に受かりたい」という強い気持ちから、浪人を決める方も多いと思います。

浪人にもいくつかタイプがあり、この記事で取り上げるのは自宅で勉強する「宅浪」です。筆者は17年前に宅浪で志望校に合格しましたが、正直に書くと宅浪はおすすめしません。宅浪のリアルな現実を赤裸々に書いてきたいと思います。

大手予備校でなく宅浪にした理由

話は高校3年生の現役時代からはじめます。私は兵庫県にある偏差値55くらいの県立高校普通科に通っていました。その高校では関西私立難関大学「関関同立」(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)に合格すれば優秀で、多くは中堅私立大学に入学していました。

筆者は関西大学文学部を目指していました。偏差値というよりも、オープンキャンパスで感じた関西大学との相性の良さが決め手となりました。ところが、筆者の努力不足もあり、関西大学の受験は「不合格」に終わりました。

合格した中堅私立大学に入学することも考えましたが、どうしても「関西大学に行きたい」という気持ちが強く、浪人を決断したのです。浪人生の多くは大手予備校の本科に通います。本科では高校と同じように朝から夕方まで授業もしくは自習室で勉強するスタイルが一般的です。

しかし、筆者は本科への入学には抵抗がありました。何となく大人数で緊張感のある空間に朝から晩までいるのは精神的に耐えられないと感じたからです。かと言って、家庭教師は費用面から無理な話でした。いろいろ考えた結果、自宅での浪人「宅浪」を決めたのです。

精神的にキツカッタ宅浪時代

宅浪は1人で勉強するのが基本ですが、何らかの形でプロ講師から教わる必要性を感じていました。そこで、大手予備校で1コマ単位で授業が受けられる「単科」を利用することに。ネット配信の単科ゼミを予備校で受け、予習・復習を自宅でするというサイクルが自然と生まれたのです。

単科ゼミの受講者数は大変少なく、ネット配信ということもあり気は楽でした。ですが、サボると受講料がもったいないので、懸命に授業は受けていました。

ところで、「不合格」ということは現役時代の勉強方法が間違っていたということ。つまり、我流からプロ予備校講師が伝授する勉強法に変える必要があります。しかし、その切替はすぐにできるものではありません。切替の時期、すなわち春の模試では現役よりも偏差値が下がり、特に現役から苦手だった英語は偏差値50を切る事態に。

普段の勉強でも向上が実感できず、自暴自棄になりました。挙句の果てに、自宅にあった椅子に八つ当たりしてしまい、自分の部屋のガラスを割ってしまったほどです。

それでも、画面の向こうから伝わる予備校講師のメッセージや勉強法を信じて、愚直に受験勉強に取り組みました。その結果、秋口の模試で成績が向上。浪人生活でそれなりの手ごたえを感じた瞬間でした。特に英語の長文が確実に意味を把握できるようになったのです。

周りからは「関西大学よりもうちょっと偏差値が上の大学も行けるのでは」と声をかけられました。その声は嬉しかったですが、軸はブレずに関西大学文学部を第一志望にしたのです。晩秋からはしゃにむに過去問を解いていました。

合格する自信はありましたが、1月のセンター試験(現共通テスト)は緊張のせいか、思ったよりも点は取れませんでした。それでも「本番は2月の入試」と切り替えられたのが、良かったと思います。

そして、ついに2月初頭の関西大学の入試を迎えることに。当時は文学部の倍率が高く、現役よりもプレッシャーはありましたが、「絶対に受かる」という強い気持ちで受験にのぞみました。

文学部以外の学部入試から受けましたが、現役よりも確かな手ごたえを感じました。本命の文学部入試では苦手だった英語の問題が想定以上に簡単に感じられ、解きながら「これは合格したな」と思いました。

2月中旬に関西大学から文学部センター試験利用を除く、4学部の合格通知を受け取りました。もちろん、文学部も含まれています。こうして、2007年4月に筆者は関西大学文学部に入学したのです。

だけど宅浪は絶対にすすめない

今まで筆者の宅浪体験談を書きましたが、改めて宅浪は絶対におすすめしません。浪人するなら大手予備校の本科をおすすめします。

ここまで言い切る理由のひとつに「宅浪成功率の低さ」が挙げられます。大学に入学した2007年~2023年まで宅浪成功者、すなわち宅浪で本命の大学に合格した人に出会ったことはありませんでした。今年に入り、ようやく宅浪成功者に出会ったのです。

ちなみに、大手予備校本科の浪人成功率は宅浪成功率よりも高いですが、それでも肌感では5割くらいといった感じ。それだけ、浪人そのものが難しいように思います。

二つ目は精神的にキツイということです。宅浪はひたすら1人で勉強するという孤独との勝負。しかも、模試で現役よりも偏差値が低くなると、自分に対する嫌悪感、罪悪感が倍化します。実際に宅浪でメンタルを病み、そのまま社会生活が営めなくなった話も聞こえてきました。

筆者が言うのもおこがましいですが、よほどの強靭な精神力の持ち主でないと宅浪は成功しません。現に筆者もいろいろつらい経験はありましたが、1000万円もらっても戻りたくない1年は宅浪の2006年なのですから。

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