2024年の世界は選挙イヤー 台湾、ロシア…そして、米大統領選の勝者が決める「新たな世界秩序」

治安 太郎 治安 太郎

2024年は選挙イヤーだ。1月半ばには早速台湾で次の指導者を選ぶ総統選挙が実施され、蔡英文政権の後継者が勝利するのか、それとも中国との関係を重視する国民党候補が勝利するのか、それによって中国の台湾への姿勢は変わってくるだろう。3月にはロシアで大統領選挙が行われるが、これはプーチン政権をさらに6年延長するためのパフォーマンスであり、これによってプーチンがさらに対ウクライナで士気を高めることが懸念される。

だが、今後の世界情勢の行方を左右するという意味では、やはり11月の米大統領選挙の行方だろう。共和党の候補者争いではトランプが圧倒的有利な状況で、選挙戦はバイデンVSトランプの再戦が濃厚だろう。既に、米国政治や安全保障の専門家たちはそのシナリオを前提とした世界の秩序の変化を議論し始めている。その中でも最大のトピックの1つが、トランプアメリカで対中政策はどうなるかだ。これについて、中国は1つのリスクと1つのチャンスという視点で捉えていることだろう。

まず、1つのリスクだが、既に米国議会や米市民の間で中国への非宥和政策は超党派的に支持されるものになっており、バイデンだろうがトランプだろうが対中姿勢で基本的な違いはない。中国もそれは織り込み済みだろうが、習政権が懸念するのはトランプによる先制的、懲罰的とも捉えられる対中貿易制裁の強化だろう。米中貿易戦争とは第1次トランプ政権下で勃発したものであり、アメリカファーストを前提とするトランプ政権は対中貿易で保護主義化を強化し、関税引き上げや輸出入規制などを次々に発動した。

経済成長率の鈍化や不動産バブルの崩壊、若年層の高い失業率や外資の中国離反など、今日習政権には経済的課題が山積みで、こういった状況下では米国との経済、貿易関係を不安定化させたくないのが本音だ。しかし、バイデン政権との間では緊張が高まらないよう、経済や貿易を含めた米中関係を最大限管理していくことで一致しているが、トランプ政権の再来となればその前提は壊れることになる。第2次トランプ政権では、米国の利益を断固として守り抜くとの決意のもと、米中関係の管理を度外視するような経済制裁が発動されるリスクを習政権は懸念している。

一方、1つのチャンスとも捉えている。それはアメリカファーストであるがゆえに、米国の利益にならないことを軽視する姿勢だ。既にトランプは3月、大統領に復帰すれば最優先でウクライナ支援を停止すると言及したが、その姿勢が台湾情勢でも援用されるリスクがある。無論、ウクライナは米国の軍事同盟国でもNATO加盟国でもなく、台湾がある極東アジア、太平洋地域には多くの米国の軍事同盟国が存在し、また中国が台湾を支配下に置けば米主導の太平洋秩序にとって大きな脅威となることから、大統領としてのトランプもウクライナほど台湾を軽視することはなかろう。だが、台湾への防衛協力を縮小し、日本や韓国、オーストラリアなどの軍事同盟国に対して軍事的役割を拡大させるようバイデン政権以上に圧力を掛ける可能性が高い。

また、中国はASEANや南太平洋、中東やアフリカなど各地域で影響力を拡大し、バイデン政権はそれに対抗するため、友好国や同盟国と対中国で多国間協力を重視してきたが、トランプがそれを重視しないのは明白であり、「米国の利益に影響を与える中国の政策には断固とした姿勢で臨むが、そうでない中国の行動にはそもそも関心がない」という前提で対応することだろう。対外的影響力の拡大を進める中国からすると、これはトランプ政権下でしか経験できないチャンスでもあろう。

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース