『ブギウギ』第12週「あなたのスズ子」本日12月18日放送の56話で、スズ子(趣里)たちの憩いの場であったおでん屋の伝蔵(坂田聡)が店をしまうと告げた。物語の舞台は今、昭和18年秋。戦況が悪化し、食料が不足していく様が「おでん」の移り変わりに現れていた。具材は大根しかなくなり、その大根も、醤油が調達できなくなったのか、どんどん色が薄くなっていった。伝蔵は「もう限界だ。材料もろくに手に入んねえし、まともな商売なんかできやしねえ」とこぼす。
振り返れば、26話でスズ子が秋山(伊原六花)とともに上京した初日の夜も伝蔵のおでん屋に行き「東京の洗礼」を受けたのだった。その時「俺はな、大阪弁がでえっきれえなんだよ」と言っていた伝蔵が、56話では「福来スズ子に酒を注いでもらったって自慢させてもらいますわ」と大阪弁の真似をしておどけてみせた。
秋山とは稽古場でできない話を、父の梅吉(柳葉敏郎)とは下宿部屋でできない話を、このおでん屋でしてきたスズ子。それを見届けてきた伝蔵との別れは、視聴者にとっても寂しいものだ。伝蔵の“退場”について、制作統括の福岡利武さんに聞いた。
スズ子にとって伝蔵のおでん屋は、ほっと一息つける場所だった
「伝蔵は、上京してからのスズ子をずっと見守ってくれていた存在。最初は『大阪弁がでえっきれえ』と言っていた伝蔵ですが、スズ子の分け隔てない共感力によって、打ち解けていきました。スズ子にとって伝蔵のおでん屋は、ほっと一息つける場所だったのだと思います。坂田聡さんが、口数の少ない伝蔵をとても繊細に演じてくださって。ものすごく細かいリアクションを、表情の変化で表現されていたのが印象的でした。交わす言葉は少なくても、伝蔵とスズ子が通じ合っているというところを、足立紳さんも脚本に込めたと思いますし、坂田さんもそこを汲み取っていただいて、おでん屋のシーンはどれもいい場面になったなと感じています」
おでん屋をいい空間にしたのは坂田聡の力
また、“朝ドラ名物”のひとつとも言える「登場人物たちの憩いの場所」であった伝蔵のおでん屋がなくなってしまうことについて福岡さんは、
「寂しいですよね。僕も寂しいです。でも、人生の中で様々な人と出会って別れて……というところも、『ブギウギ』らしいのではないかと思います。撮影の前、いつも坂田さんが早い時間から現場に入られていたのが心に残っています。動きを練習したりして、なるべく早く馴染もうとしていらっしゃいました。カメラが回っていないときは、僕もよく、あの席に座っていろんな話をさせていただきました。おでん屋をいい空間にしていただいたのは、坂田さんのお力だと思っています」
と、感慨深げに語った。これからますます戦況は厳しくなっていくが、伝蔵も無事でいてほしいと願うばかりだ。
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『ブギウギ』
【出演】趣里 水上恒司/草彅剛 蒼井優 菊地凛子 生瀬勝久 小雪 水川あさみ 柳葉敏郎 ほか
【主題歌】「ハッピー☆ブギ」中納良恵 さかいゆう 趣里
【脚本】足立紳 櫻井剛
【音楽】服部隆之
【語り】高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
【放送時間】
▽NHK総合
毎週月曜~土曜 前8:00~8:15/(再)後0:45~1:00(※土曜は一週間を振り返り)
毎週日曜(再)前11:00〜11:15
翌・月曜(再)前4:45~5:00(※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送)
▽NHK BS・NHK BSプレミアム4K
毎週月曜〜金曜 前7:30~7:45
毎週土曜(再)前9:25〜10:40(※月曜~金曜分を一挙放送)