今週放送された『ブギウギ』(NHK総合)第8週「ワテのお母ちゃん」では、スズ子(趣里)の弟・六郎(黒崎煌代)が出征し、母・ツヤ(水川あさみ)が亡くなり、梅吉(柳葉敏郎)は「はな湯」をゴンベエ(宇野祥平)に譲り渡し、慣れ親しんだ大阪をあとにしてスズ子と共に東京へと旅立った。
振り返ってみれば、第5週「ほんまの家族や」でスズ子のメンター的存在であり「舞台人としての母」であった大和礼子(蒼井優)が亡くなり、今週第8週では育ての母・ツヤが亡くなった。「福来スズ子の波乱万丈の物語」と聞いてはいたものの、放送開始から2カ月足らずのうちに、たたみかけるような「別れ」の連続だ。この作劇のねらいについて、制作統括の福岡利武さんに聞いた。
まだまだ“序の口”。「この後もエピソード満載です」
「参考にした程度ですが、モデルである笠置シヅ子さんの育てのお母様も若くして亡くなっていらっしゃるんですね。前半で『母と娘の物語』を色濃く描いて、ツヤが亡くなったところで、独り立ちしていくスズ子を描ければ、というねらいがありました。『こうしたくてこうなった』というわけでもなくて、自然とこうなったと言いましょうか。そして、この後もまだまだエピソードが満載です」
と、これはまだ「序の口」だと語る福岡さん。また、この構成には脚本・足立紳氏のこだわりがあったのだという。
何があっても歌い続けるスズ子の覚悟
「足立さんも、スズ子の人生の中の『出会いと別れ』をしっかり書きたいという思いがあったようです。『母と娘の関係』をずっと続けていくよりも、あるところで一区切りを置く、というのは意識されたのではないかと思います。また、『親の死に目にあうためにステージに穴を開けてもいいのか』という、舞台人・福来スズ子へのシビアな問いかけもありました。ツヤが危篤だという報せを受けて、悩んだ挙句、スズ子は『お母ちゃん、ワテは歌手として、もっと大きなりたいんや』と、舞台に立つ。何があっても歌い続けるスズ子の覚悟が描けたのではないかと思っています」
今週の36話で、羽鳥(草彅剛)の妻・麻里(市川実和子)がスズ子に言った「生きるってことが肥やしよ」という言葉。そして38話で羽鳥が言った「お客さんはそんなことは知る由もない。ステージに立つ以上は、それは関係ないんだ。むしろ自分の苦しい心持ちを味方にして『いつもよりいい歌だ』なんて言われるぐらいじゃなきゃ、僕はダメだと思う」という言葉が効いている。喜びも悲しみも、愛も、苦しみも、全てを抱いて歌い続けるスズ子の「笑いと涙の物語」はまだ、始まったばかりだ。
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『ブギウギ』
【出演】趣里 水上恒司/草彅剛 蒼井優 菊地凛子 生瀬勝久 小雪 水川あさみ 柳葉敏郎 ほか
【主題歌】「ハッピー☆ブギ」中納良恵 さかいゆう 趣里
【脚本】足立紳 櫻井剛
【音楽】服部隆之
【語り】高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
【放送時間】
▽NHK総合
毎週月曜~土曜 前8:00~8:15/(再)後0:45~1:00(※土曜は一週間を振り返り)
毎週日曜(再)前11:00〜11:15
翌・月曜(再)前4:45~5:00(※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送)
▽BSプレミアム・BS4K
毎週月曜〜金曜 前7:30~7:45
毎週土曜(再)前9:25〜10:40(※月曜~金曜分を一挙放送)