「この日、お母ちゃんは天のお星さまになりました」。現在放送中の『ブギウギ』(NHK総合)第8週「ワテのお母ちゃん」、本日11月23日放送の39話でスズ子(趣里)の最愛の母・ツヤ(水川あさみ)が亡くなった。スズ子が子どもの頃から「はな湯」で歌い、梅丸少女歌劇団の“飛び入り入団試験”でも披露した、母娘の思い出の曲「恋はやさし野辺の花よ」に送られて、ツヤは逝った。
「朝ドラヒロインの母」としては“前代未聞”の台詞
結局スズ子の出生の秘密について、ツヤの口からスズ子に語られることはないままだった。自らの死期が迫っていることがわかっていたツヤは亡くなる間際、梅吉(柳葉敏郎)にお願い事をしていた。
「このまま何があっても、スズ子をキヌに会わせんといてほしいねん。これから生きていく、ワテの知らんスズ子をキヌが知るんは、耐えられへん。性格悪いやろ? 醜いやろ」
スズ子の生母であるキヌ(中越典子)に良心の呵責を感じながらも、自らが死んだ後もスズ子を自分の手から離したくないというツヤの「業」が伝わる。「朝ドラのお母ちゃん」としては異色とも言えるこの台詞をツヤに言わせた意図を、制作統括の福岡利武さんに聞いた。
「『明るくて、いつも一生懸命働いているお母ちゃん』というのが、最初に感じるツヤのイメージだと思うんですが、人間誰しも、綺麗な感情だけで生きていられるわけではないんですよね。ツヤは、スズ子との関係において『実の母と娘なんだ』ということを絶対に最後まで貫き通したかった。脚本の足立紳さんは、そういうツヤの『業』の深さを描きたいと、強く希望されていました」
「難しいまま、整理できないまま、人生を終えることもある」
また、スズ子の口からもツヤの口からも、最後まで生母・キヌの存在が語られなかったことについて、福岡さんはこう説明する。
「もしかしたらドラマをご覧になっている皆さんも、スッキリ受け取れないような、複雑な感情になられるかもしれません。ツヤが亡くなる間際に自分の『醜さ』をさらけ出して、『醜いやろ』と言うのは、とても難しい台詞であり、難しいお芝居だと思うんですが、きっと足立さんと水川さんの信頼関係があればこそ、あのシーンができたのだと思います。悩んで、難しいまま、整理できないまま、人生を終えることもある。そういうところが面白いと思いますし、物語として深まれば、と願って作りました」
第1週の制作スタッフインタビューで、チーフ演出・福井充広さんは「(本作の)柱となるのは、『エンターテインメントの力』『雑草魂』『母と娘』という3つのキーワード」だと語っていた。ツヤの死により、「第一章 ツヤとスズ子の母娘の物語」が終わった。ここから立ち上がり、また新しい一歩を踏み出すスズ子を見守りたい。
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『ブギウギ』
【出演】趣里 水上恒司/草彅剛 蒼井優 菊地凛子 生瀬勝久 小雪 水川あさみ 柳葉敏郎 ほか
【主題歌】「ハッピー☆ブギ」中納良恵 さかいゆう 趣里
【脚本】足立紳 櫻井剛
【音楽】服部隆之
【語り】高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
【放送時間】
▽NHK総合
毎週月曜~土曜 前8:00~8:15/(再)後0:45~1:00(※土曜は一週間を振り返り)
毎週日曜(再)前11:00〜11:15
翌・月曜(再)前4:45~5:00(※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送)
▽BSプレミアム・BS4K
毎週月曜〜金曜 前7:30~7:45
毎週土曜(再)前9:25〜10:40(※月曜~金曜分を一挙放送)