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【ばけばけ】トキの“炎上”エピソードは現代のSNSとリンク 「叩かれる側」の気持ちが胸に迫る

佐野 華英 佐野 華英

連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合ほか)、今週は第18週「マツエ、スバラシ。」が放送中。前週の第17週ではシンデレラストーリーを歩んだ「時の人」として持てはやされたトキ(髙石あかり)だったが、今週は一転。松江の人々から「ラシャメン」と呼ばれ、非難の的となってしまった。

「松江新報」の記者・梶谷(岩崎う大)が書いた記事によって、町には「トキが借金返済を条件にヘブン(トミー・バストウ)と結婚した」という噂が流れる。噂に尾ひれはひれがついて、かつて露天商が便乗品として売っていた「おトキうちわ」は燃やされ、トキに石を投げる者まで出てきた。さらには、ヘブン邸の敷地内に嫌がらせの言葉を書いた紙やゴミを投げ入れる者もいた。トキは怯えて家から出られず、ヘブンは怒りに震える。

ところが、2月5日に放送された第89回では、町の人たちの関心はすでに他の事柄に向いていた。巷では、江藤知事(佐野史郎)が蕎麦屋で食い逃げをしたという噂で持ちきりで、ヘブン邸にゴミや石が投げ込まれることもなくなった。さらにしばらくすると町の人たちは、今度は力士と遊女の心中事件の話題に夢中になる。

神輿に乗せられた17週と、石を投げられた18週は合わせてひとつのシークエンス

ゴシップと炎上と、大衆の心理。まさに現代社会にも通ずる題材を、第18週で描いた意図を、制作統括の橋爪國臣さんに聞いた。前の週までの展開もふまえて、橋爪さんはこう語る。

「第17週では、梶谷が書いた記事によってトキとヘブンが神輿に乗せられる様を描きましたが、『それだけじゃない』面も描かなければ、と思っていました。モデルである小泉セツさんも、『ラシャメン』と呼ばれたり、実際に石を投げられた時期があったといいます。そうした『負』の部分もちゃんと描いていこうということを、制作の早い段階からスタッフ間で考えていました。17週と18週は、合わせてひとつに進んでいくシークエンスとしてご覧になっていただければうれしいです」

「実際セツさんは結婚する以前、女中としてラフカディオ・ハーンに雇われた頃から町の人による中傷にあったといいますが、ドラマの中ではその時期をずらして作劇しました。トキとヘブンが恋愛に至るまでの段階では、お互いの思いの純粋さが消えないようにしたかった。トキが後ろ指をさされるエピソードは、ふたりが結婚して生活が落ち着いてからじっくりと描きたいと思いました」

今もネットやSNSで、似たようなことが起こっている

「あっという間に噂が広がり、炎上して、対象となった人を寄ってたかって叩く。そしてすぐに飽きて、新たな対象が現れればそちらにとびつく」という、現代人の集団心理とも地続きの18週。明治時代が舞台の朝ドラでこれを描いた意図についても、橋爪さんは話した。

「今もネットやSNSで、似たようなことが起こっていると僕は思っていて。それはおそらく現在も、明治時代も、あるいはどの時代でも同じではないかと。今はそうしたことがすごいスピードで起こるようになっていて、より顕在化しているのだと思います。『ばけばけ』の舞台である明治時代と、現在とが通じる物語になればいいなと思い、作ったのが第18週です」

史実の狭間にある「その人の気持ち」を描き出すふじき脚本の台詞

また、遡って第88回でヘブンが、こんな騒動になってしまったのは元はといえば自分の責任であると感じ、「ゴメンナサイ。ワタシ…イジンダカラ…」とトキに謝るシーンが切なかった。モデルであるラフカディオ・ハーンとセツさんのあいだに、こうした会話はあったのだろうかとたずねると、

「実際にハーンとセツさんの間でどんな会話があったかまでは、記録に残っていません。あの台詞はふじき(みつ彦/脚本家)さんの台詞回しだと思います」

とのこと。史実として残っている「文字上の記録」だけではわからない、そのときの当人と、当人の周囲の人々の気持ちを想像する。それがドラマであり、エンターテインメントの醍醐味だと、筆者は思う。

第18週の「炎上」エピソードでは、トキとヘブンはもちろんのこと、フミ(池脇千鶴)、司之介(岡部たかし)、錦織(吉沢亮)、サワ(円井わん)ら、2人の周囲にいる人々の思いまでもが胸に迫った。

明日放送の第90回では、ヘブンがある決意をする。

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