人に不馴れな元野犬 警戒心を溶かしたのは「すべて受け入れるよ」という家族との出会い 今や「なでて」アピールの甘えん坊に

松田 義人 松田 義人

保護犬の背景はさまざまですが、野犬だった場合、他のワンコとのコミュニケーションに長けている一方、人間には不馴れであることが多いものです。人間に怯えて心をなかなか開いてくれなかったり、警戒心のあまり威嚇したりするワンコもいます。

「殺処分」を日本からなくすことを目指して活動をする団体、ピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)ではこういった元野犬を多く迎え入れていることで知られていますが、2022年に同団体にやってきたアザレアというオスのワンコも元野犬で怖がりな性格でした。

頑なまでに警戒心を解かなかったアザレア

2018年11月頃に生まれたと推定されるアザレア。保護当初は人間を怖がる傾向がかなり強く、スタッフが地道に世話を続けても簡単には心を開いてくれませんでした。

これまで多くの元野犬を保護し幸せへと繋いできたスタッフは慌てることはありません。ピースワンコの神石高原シェルターにて人馴れトレーニングを地道に行い、アザレアが心を開いてくれ、人間を信用してくれることを待ち続けました。

しかし、他の元野犬に比べると、アザレアの恐怖心はなかなか解けません。スタッフが近づくだけで警戒する様子を見せ、おやつを見せても「僕はそんなものにはツラれないよ!」とばかりに逃げ回ります。ただし、必要最低限のトレーニングをクリアしたこともあり、ほどなくして神石高原シェルターを卒業。福山譲渡センターに移動し、里親希望者さんとのマッチングを目指すことになりました。

「警戒心が強いからこそうちでゆっくり過ごしてほしい」

福山譲渡センターでも来場者が来るたびにビクビク。「アザレラの恐怖心はなかなか手強い。もう少し時間が必要かもしれない」とスタッフは考えていましたが、そんな矢先「アザレアをお迎えしたい」という家族が現れました。

アザレアは人と接することにまだ慣れていません。「だからこそ、うちでゆっくり過ごしてもらい、慣れていってほしい」とまで言ってくれました。アザレアの性格、バックボーン全てを受け入れてくれるのです。なんて優しい里親希望者さんなのでしょう。2022年12月3日、アザレアは福山譲渡センターを卒業することになり、この家族と第二の犬生を踏み出すことになりました。

それまでの警戒心が嘘だったかのように大変身!

アザレアは新しい家族、新しい家にやはりなかなか心を開かなかったそうです。福山譲渡センターにいた頃のように、体を触られるのを極度に嫌がり、部屋の隅っこから動こうとしませんでした。

里親さん家族はじっくりじっくりアザレアのペースに合わせて無理のない範囲で触れ合ったり話しかけるようにしました。

すると、どうでしょう。アザレアは里親さん家族のたっぷりの愛情を感じ取り、少しずつ体を触らせてくれるようになったそうです。さらに今では、里親さんから触ってもらうのが大好きになってしまい、自分から「なでてなでて」と催促するほどの甘えん坊に大変身したのです。

怖がりな性格も含め、ありのままのアザレアを受け入れてくれた里親さん家族。温かい家族に迎えられたからこそ、アザレアも心を開いて全力で甘えることができるようになったのでしょう。幼いお嬢さんとアザレアが一緒にベッドでくっついている様子はなんとも微笑ましいですが、何より一番喜んでいるのはアザレア自身だと思います。

保護犬の中には、アザレアのような元野犬や人間に意図的に棄てられたワンコなど様々です。「保護犬を迎える」ということは、ワンコ個々に異なる過去や警戒心といった性格や感情も受け入れることです。ありのままを受け入れ、優しく接してあげることがワンコにとっての幸せな第二の犬生につながるように思いました。

ピースワンコ・ジャパン
https://peace-wanko.jp/

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