「カスタマーハラスメント」(カスハラ)は、店員やスタッフに対する理不尽なクレームや嫌がらせ行為です。東京都が全国初となるカスハラの防止条例の制定を目指していることが話題になるなど、社会問題としての認識が広がっていますが、コンビニやスーパーなど身近な場所でも、こうしたカスハラの経験談が多く聞かれるようになっています。
毎回酔っぱらって来店、トラブルを引き起こす高齢男性
Aさん(関東在住、40代、パート)はコンビニエンスストアでレジのアルバイトを5年続けています。
勤務時間は朝~夕方にかけての日中数時間で、近所の高校生や近くに住む常連客が多く、いわゆるモンスタークレーマーに対応したことはなかったそうです。
しかしある時からラフな服装の高齢男性が、明らかにお酒臭く顔を真っ赤にした状態で、来店するようになりました。
いつも声が大きいうえ、棚にぶつかって商品を落としてもしらんぷり。Aさんは「困ったな」と思っていたものの、何も言えずにいました。
それに気が大きくなったのか、Aさんに直接絡んでくるようになってきた高齢男性。「袋がいるかなんて、聞かなくてもわかるだろう!!」「ビールはもっと冷やせ!!」など、毎回数分間レジの前であれこれ文句をつけてくるように…。
結局、困り果てたAさんが店長に相談したところ、監視カメラの映像を確認後、直接その高齢男性に「酒に酔ったお客様は入店をお断りいたします。次回来店時から呼気検査を実施いたします」と通告。背が高く筋肉質な店長の気迫に怖くなったのか、その高齢男性はぱったりと来店しなくなったそうです。
明らかに使った商品を返品!?
Bさん(関西在住、50代、流通)が勤めている総合スーパーには、冠婚葬祭用のアパレルコーナーがあります。急な法事に喪服を用意しなければならない人や卒業式・入学式シーズン直前に駆け込み購入する人に重宝され、普段は感謝されることの方が多く、気持ちよく接客に励んでいたそうです。
ところがある日、結婚式向けのワンピースドレスを返品したいとのお客様がやってきました。「これ!タグも切っていないし、レシートもあるから!返品して!!」…試着をせずに購入されたけど、家で着てみたら小さかったのかしら? などと思いつつ、返品処理をしたBさん。その人のことはなんとなく印象に残ったそうです。
数カ月後、再びそのお客様が来店。話しかけてもそっけなく、1着の喪服を購入します。
ところが、なんとその5日後、再びそのお客様が来店したのです。「これ、返品したいんですけど」
服を丁寧に確認すると、お茶でもこぼしたのか水染みが…。
「あの、お客様。…こちらは着用されていますよね?」
そう声をかけた瞬間、お客様は激高。
「試着したけど?当たり前でしょ!?ちゃんとレシートもとってあるのに何が悪いの!?返品しないってこと!?疑うなんて気分が悪い!!」
まくし立てるお客様の様子にBさんはびっくりしてしまいました。
結局その声を聞きつけて駆け付けたフロアマネージャーが返品作業を受け付けたものの、Bさんは釈然としなかったそうです。
わざとアダルト向け漫画の在庫確認復唱させる男性客
高校・大学時代に、コンビニや書店、100均などのレジアルバイトを掛け持ちしてきたCさん(関西在住、20代、会社員)。昔から男性来店客からのセクハラに悩まされてきました。
書店ではアダルト向け漫画の在庫を確認する名目で「ちゃんと聞いてる? 間違ってないかタイトル復唱してよ」とニヤニヤされ、コンビニではしつこく「この避妊具は何ミリ? こっちは?」と質問され…。100均ではわざと店のいちばん奥にある商品まで案内させ、体を寄せてくる来店客までいました。
でも、最近の変化についてCさんはこう語ります。「昔は昼間のレジって女性が多かったと思うんですけど、最近は社員さん含めて男性が増えてますよね。私が今働いている小売店でも、男性スタッフを積極的に採用しています。女性向け商品フロアでも男性スタッフをひとりは配属しているのですが、それだけで不審者は明らかに減ったと感じています」
航空会社大手二社も共同でカスハラ対策
6月には国内航空大手、ANAグループとJALグループが共同で「カスタマーハラスメントに対する方針」を策定し、どのような行為がカスタマーハラスメントに該当するかを明文化したことが話題となりました。スタッフが安心して働ける環境があってこそ、空の安全も守られるのです。
【参考】
▽全日本空輸株式会社・日本航空株式会社/ANAグループとJALグループ 共同で「カスタマーハラスメントに対する方針」を策定