「もう殺処分はしません」宣言 全国ワーストだった広島県の施設からドリームボックスが消えるまで   

松田 義人 松田 義人

日本では、数多くの行き場を失ったワンコたちは保健所や動物愛護センターなどに収容されます。多頭飼育崩壊、虐待などによって辛い犬生をおくっていたワンコ、人間の意図的な遺棄によって野犬化したワンコなど、その背景はさまざまです。

施設に収容され一定期間に元飼い主からの名乗りや、引き取り手がない場合は、どのワンコも「殺処分」の対象となります。

こういった「殺処分」対象のワンコの大半はほとんどが人間の身勝手な行動によって行き場を失ってしまったことが原因です。一匹でも多くの保護犬の命を「殺処分」から救うためには、その前に保護し人間と生活できるようにトレーニングをし、新しい家族に譲渡するという良い循環を生み出すことが理想です。こういった理想を目指し、積極的に取り組んでいるのが広島県を拠点に活動を続ける団体、ピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)です。

殺処分機近くの壁に残るワンコたちの爪痕

ピースワンコが地元での保護活動をはじめたのは11年ほど前の2012年のこと。

当時の広島県は保護犬の殺処分数が全国ワースト1位で、動物愛護センターでは「ドリームボックス」と呼ばれる殺処分機によって、多くのワンコたちが命を奪われていました。ワンコたちを狭い場所に押し込み、CO2を注入するもので、この殺処分機がある施設の壁には、息が途絶えるまでもがき苦しんだであろうワンコたちの爪痕が残っています。

ピースワンコのプロジェクトリーダー、安倍誠さんはこう語ります。

「動物たちはもがき苦しみながら最期を迎えており、言葉で表すことが出来ないほど、非常に悲惨な状況でした」

広島県が掲げた「二度と殺処分機を使わない」という宣言

ピースワンコを含む日本各地の保護団体、そして各団体の支援者、保護犬を迎え入れてくれた里親たちの働きかけにより、広島県では7年半前から2023年現在までこのドリームボックスの稼働がなくなりました。かつては殺処分数が全国ワースト1位だった広島県がゼロになったのです。

そして、2023年8月、広島県の動物愛護センターは「もう二度とドリームボックスを使わない」という誓いを掲げ、新しい施設へと移転しました。

新施設では忌まわしいドリームボックスは設置されておらず、以前の環境よりも施設内が明るく清潔に保たれ、夏や冬でもワンコたちが快適に過ごせるよう空調も完備されるようになりました。

殺処分数が全国ワースト1位だった広島県から殺処分の機械が消えたこと。これは、ピースワンコが目指す日本の犬の「殺処分ゼロ」への大きな一歩となりました。この達成を胸に刻み、これからも広島県のワンコたちの命を救うために活動を続け、ひいては日本中から殺処分をなくすために全力を尽くす考えです。

全国的にはまだ当然のように行われている殺処分

ピースワンコのように犬の「殺処分」をなくすための活動をする保護団体がたくさんある中、私たちには何ができるのでしょうか。

まずは、世の中にいる多数の「保護犬」を認識すること、各地では残酷な「殺処分」がいまだに行われている現実から目を背けないこと、そして、ワンコと暮らしたいと思ったとき、ペットショップなどから犬を「買う」のではなく保護犬を「迎える」という選択肢を選ぶこと、一緒に暮らしている犬、これから迎える犬を最期まで幸せにすること。ひとりひとりがこれらを意識することで、殺処分問題は解決していくはずです。

安倍誠さんはこうも語ってくれました。

「地道な活動ですが、殺処分される命がいること自体が異常なので、1匹も殺処分にしたくない。全ての犬を幸せにするためにがんばりたいと思います」

ピースワンコのような団体だけでなく、私たちひとりひとりが意識や行動を変えることが、多くの犬の幸せにつながるはずです。

これからワンコと一緒に暮らしたいと思っている方は、まずは保護犬を迎えることを検討してはいかがでしょうか。こういった場での出会いを通して、保護犬のことを考える人が増え、結果的に殺処分が完全になくなことを願うばかりです。

ピースワンコ・ジャパン
https://peace-wanko.jp/

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