どうしても、この子を迎えたい――。そう思える動物との出会いが、人には訪れることがある。元動物看護師のころっけとスートト(@sumire10toto5)さんにとって、そんな存在となったのは、猫のころっけくんだった。
ころっけくんは保護猫カフェ出身。飼い主さんはころっけくんに惚れ込み、お店へ通い詰め、シニアであることや持病があることを全て理解した上で家族になった。
先代犬の看取り後に“重度のペットロス”になった
動物好きの飼い主さんは、これまでに何匹もの犬猫と暮らしてきた。しかし、2022年10月、生活は一変。チワワのトトくんを看取り、人生で初めて動物のいない生活を送るようになる。
すると、心身にさまざまな影響が現れた。重度のペットロスになり、適応障害も発症。休職して心身を休めるも、生きる意味が分からなくなった。
「人生のどん底でした。そんな時、ある保護猫カフェを見つけ、通うようになって。先代猫すみれを亡くしてから初めて猫に触り、涙が出ました」
その後、適応障害の悪化で猫カフェに行けなくなったが、3年後の2026年5月、友人に付き添い、久しぶりに猫カフェを訪れる。
初めは、先代猫と同じサビ猫が気になった。だが、何度かお店に通ううちに、「私が幸せにできる子は?」という視点で猫たちと接するように。気づけば、シニア猫のころっけくんが頭から離れなくなっていた。
猫嫌いで持病がある1匹のシニア猫に心奪われて
ころっけくんは2025年秋に保護され、保護猫カフェで暮らすようになった。シニアで耳が聞こえず、歯は1本もない。耳が聞こえないからか、鳴き声はとても大きい。
猫が苦手で他の子を追いかけたり、噛んだりしてしまったため、カフェ内では身動きが取れるように配慮されつつ、長いリードがつけられていた。
さらに、甲状腺からホルモンが過剰に分泌される「甲状腺機能亢進症」を患っており、里親探しは難航しそうに思えた。
「私は動物看護師を経験した後、介護士の職に就きました。たくさんの動物や人を看護・介護し、看取りの経験を積んでいたので、幸せにしてあげられるのではないかと思うようになったんです」
余命は1~3年ほどかもしれないけれど、残りの猫生をのびのび過ごさせてあげたい。そう強く思い、お迎えを決意した。
「家を出て飼いなさい」愛のために即決した引っ越し
お迎え前には、大きなハードルがあった。高齢の両親から「もう看取るのが辛いから、私たちが生きている間は動物を飼わないで」と言われていたからだ。
「それまで私は『いずれ始まるであろう親の介護が終わるまでは動物を飼えないし、そうなったら、もう一生飼わないんだろうな』と、動物との暮らしを諦めていました。でも、ころっけはどうしても引き取りたくて」
ダメもとで両親に相談すると「家を出て飼いなさい」との返答が。飼い主さんはその日に物件を探し、数日後には引っ越しを決めた。
「うちに来て不安にならないよう、私を覚えてもらうため、トライアル開始までの1ヶ月半は週3で猫カフェに通いました」
初日からご機嫌で楽しんでくれた家猫生活
お迎え当日、ころっけくんは自らキャリーケースへ。車内では喉を鳴らしてくれた。
「家に着くと、すぐに寝ました。夜には、私のベッドのど真ん中で寝ていて(笑)。ころっけは猫が苦手だったので、カフェにいた時より、のびのびして嬉しそうに見えました」
お気に入りを見つけてほしくて複数個用意した猫用ベッドは、初日で全て制覇。まるで、ずっと一緒に暮らしていたように我が物顔で過ごすころっけくんの姿を見て、飼い主さんは胸をなでおろした。
「初日から添い寝してくれました。今は甘えたい時に、腕枕をご所望されます。ペットカメラで見ていると、お留守番中はいい子で寝ているのに、私が帰宅した途端、被害者みたいに大鳴きしてまとわりつくのがかわいいです」
できないことが増えても認知症になっても愛おしい
現在、ころっけくんは1日1回の服薬により、甲状腺機能亢進症と上手く付き合えている。多飲多尿の症状があるため、自宅では常に新鮮なお水を飲めるように配慮しているそうだ。
「過食してもお腹が空きすぎても嘔吐するので、ご飯の量を調節するのが難しいです。ころっけは歯がないけど、グルメ。気に入らないウェットフードは全く食べないので、ドライフードもあげています」
ドライフードを食べた後に水をたくさん飲むと、胃の中で膨らんで嘔吐してしまうため、飼い主さんは少量のドライフードを複数回に分けてあげている。
猫カフェでは寝ていることが多かったころっけくんだが、家猫になってからは走ったり、ジャンプしたりと、アクティブな姿を見せることが増えた。
「筋力もつき、若返ったように感じます。甘えん坊なころっけを撫でる手が足りず、友達に遊びに来てもらって撫でてもらうこともあります」
飼い主さんはマッサージが好きなころっけくんを1日何時間も撫で、愛を伝えている。
「毎日、かわいいを更新していくので、常に今日が最高にかわいい。今後できないことが増えても、認知症になったとしても、毎日かわいくてたまらないと思います。大声での夜鳴きも、手がかかる子ほどかわいいと思えてしまう親バカです。ころっけのためなら、眠くても落ち着くまで何時間でも寝かしつけを頑張れます」
ころっけくんと出会ってから飼い主さんは適応障害を克服し、愛猫のご飯代を稼ぐために仕事も頑張れているという。
「亡くなったトトが導いてくれたのだと感じます。ころっけが初日から落ち着いていたのも、もしかしたらトトが『このおうちは安心』って教えに来てくれたからかもしれません」
今そばにいる命と、旅立っていったたくさんの命。その両方を愛しながら、飼い主さんはこれからも小さな命と共に生きていく。