総合人事コンサルティング会社のフォー・ノーツ株式会社(東京都港区)は、経営者・人事業務に携わる全国の男女475人(男性87.8%/女性12.2%)を対象に「人事制度・人事施策の実態調査2023」を実施しました。調査によると、導入して失敗したと感じる人事制度・人事施策は「目標管理制度」が最多であることが分かりました。また、人事制度・人事施策の失敗による影響は「管理職の疲弊」「社員のエンゲージメントやモチベーションが下がった」などに回答が集まったそうです。
調査は、2023年8月にインターネットで実施されました。
まず、「人事ポリシー(人事制度・施策の企画・運用における基準となる方針のこと。経営と人事の一貫性を高める役割を担う)の有無」を調べたところ、「人事ポリシーを制定している」が67.8%で、「制定してない」(32.2%)を大きく上回りました。
これを企業規模別に見ると、従業員数1000人以上の企業では8割以上が制定している一方で、従業員数99人以下の企業では約半数と、規模の大きい企業ほど人事ポリシーが制定されている傾向が見られました。
さらに、「現在運用している人事制度や人事施策の成否」を聞いたところ、71.0%の人が「上手くいっている」(上手くいっている15.6%・どちらかというと上手くいっている55.4%)と回答。人事ポリシーの有無別に見ても、「人事ポリシーを制定している」と答えた企業は「制定していない」と答えた企業に比べて約20pt高い結果となりました。
これを役職者別で見ると、「一般社員」クラスで35.8%、「主任・チーフ」クラスでは43.8%が「失敗している」と回答した一方で、「課長」クラスは23.1%、「部長」クラスは16.7%、「経営者」クラスは17.6%と2割前後に留まっています。
次に、「導入して失敗したと感じる人事制度・人事施策」を教えてもらったところ、「目標管理制度(MBO、OKR)」(26.5%)、「テレワーク・在宅勤務制度」(20.6%)、「フレックスタイム制度」(14.9%)などが上位に並び、回答者からは以下のようなコメントが寄せられました。
▽目標管理制度に理解はできても、自分の目標を立てる事自体のスキルがなかなか身につかず、また、目標の数値化にも馴染まない職種が多く機能しなかった(経営者)
▽MBOを導入したが、目標設定の難易度が部門ごとにばらばらで公正な価につながらなかった(部長クラス)
▽テレワークが不十分でコストを押し上げた。準備不足で、社長と一部の従業員の溝が、より深くなった(役員クラス)
▽コロナ禍でリモートワーク導入、副業解禁など、新たな制度を導入したが、各部署での連携や意思疎通、生産性、売上などに大きく影響してしまった(役員クラス)
▽コアタイムなしのフレックス制度を導入したら、一人7:30にくる人がいて、その時間に何をしているか疑問(主任・チーフクラス)
さらに、「失敗したことによる社内への影響」を教えてもらったところ、「管理職が疲弊した」(22.7%)、「社員のエンゲージメントやモチベーションが下がった」(21.1%)、「会社への不信感が強まった」(19.1%)などが上位に挙げられました。
また、「上手くいかなかった人事制度・人事施策への事後対応」については、「事後対応は実施していない」(38.5%)、「制度・施策の内容を変更した」(34.1%)、「新しい制度・施策を導入した」(16.1%)といった回答が上位に挙げられました。なお、事後対応を行うなかでの気づきや、改善点に関しては以下のようなコメントが集まったそうです。
▽部分的に小さく始めて実証試験をしてから正式に採用すべきでした(経営者)
▽準備段階は、経営者を含めないチームで進めるべきだった。(役員クラス)
▽もっと早く制度廃止を決断していれば、離職率が下がっていたと思う(部長クラス)
▽自社の業務や社員の持ち味などをもっと熟慮して、意見を聞きながら制度設計すべきだったと反省(経営者)
▽全ての社員が納得するものにはなかなかできないと感じるが、それでも幅広くヒアリングすることも必要だったと感じる(役員クラス)
▽人事制度及び人事評価をシステマティックに行えるものか現在企画立案中。顔を合わせて業務することの大切さを痛感した(役員クラス)
▽人事コンサルの提案に安易に乗らず、弊社の社風に見合う取り組みをすべきだった(一般社員クラス)