歌手、タレント、映画コメンテーター、プロレスラー、デザイナー、ビジネスウーマン…。LiLiCoいわく「13個はあるのよ」という肩書に、また一つ“翻訳家”という新しい職業が書き加えられた。母国スウェーデンの名作映画『刑事マルティン・ベック 超・特別版』Blu-ray(発売中)で日本語字幕の翻訳家としてデビューしたのだ。
日本語もわからぬままアイドルになりたい一心でスウェーデンから来日。車上生活&ドサ回りの苦節ウン10年の月日を経て、タレントとして大成功した。そして母国の名作映画で翻訳家という20年来の夢を実現させた。Netflixが連ドラ化してもおかしくないような波乱万丈の半生を送ってきたのにもかかわらず、LiLiCoは「人生はここからです。『女は50(歳)から』って舘ひろしさんに言われたもん」とおかしそうに話す。
強みは、他人を応援できること
充実した40代を過ごせたとの自負がある。でも満足はしていない。
「40代も超楽しかったけれど、唯一叶わなかった夢が字幕翻訳家デビューでした。そして53歳になる今年、やっと実現できた。50代になって3年しか経っていないけれど、この3年間が自分の人生の中でもメッチャ楽しい。それは50年生きたという説得力からくるものかもしれない。ならば60代はどうなるんだ!?と考えると、ここから先何をしようかとワクワクするばかり」
ここから先の人生のヒントは、TBSアナウンサーの出水麻衣から受けた「LiLiCoさんの強みは他人を応援できるところ」という言葉にありそうだ。
「今回の字幕翻訳家デビューもそうだけれど、裏方の仕事がしたいという願望が芽生え始めています。私は人と人を繋げるのが大好き、というかもはや趣味。スウェーデンの3人組グループJTRや歌手のウルリック・マンターを日本に連れて来た時も私は一切表に出ずに通訳者として帯同しました。集客を気にしたり、宣伝に気を配ったり、ほかのタレントがしないようなことに自分の頭をフル回転させるのが楽しい。誰かに頼むのではなく全部自分の責任でやって、毎日『あ~!忙しい!』と言い続ける。そうすればボケ防止にもなるし。でも昨日キッチンに行った瞬間『なんで私ここに来た?』と用事をド忘れしたけれど…ガッハハハ!」
速射砲のように次々に披露される躍動感あふれるエピソード。メモが追い付かない…。
「好き」を仕事にするための秘訣とは?
ビジネスウーマンとしてLiLiCoが重要視しているのは、仕事の幅を広げること。「一つの仕事だけに執着するのではなく、自分の活動フィールドを広げて、さらに枝分かれさせていく。13個もの肩書を持っていることから『どこに向かっているの?』と聞かれることがあるけれど、向かうも何も私は私。LiLiCoを生きているだけ。ここ数年暇な日が1日もなかったのは、肩書が13個もあったお陰。多ければ多いほど人と繋がりができて、その分人を助けることができるんです」
もっともLiLiCoの場合、広く浅くではなくその一つ一つの仕事に全力を傾けているのだから恐れ入る。字幕翻訳家デビューとなった『刑事マルティン・ベック 超・特別版』Blu-rayでは、本編の日本語字幕監修に加え、オーディオコメンタリーや特典映像の日本語字幕の翻訳を担当。台本がないために、すべて耳で聴いて書き起こし、1年半かけて日本語字幕として整えたという。
「私は好きを仕事にしています。好きを仕事にするためには、自分から何が好きなのかをどんどん口に出していく。自分には何ができて、そして何がしたいのか?翻訳家挑戦も実は20年前から言い続けていたことが叶ったんです。でも20年前にこの話が来ていたら、満足のいく翻訳はできなかったと思う。今この年齢になり、それなりに日本語も上達し、映画も沢山観て、字幕に対する知識も増やしてきたつもりです。年齢とは知恵の数のことだと私は思います。1日1個の知識を覚えれば、1年を通して365賢くなるわけで、そこに×53ですから。とんでもない経験値!」
棺桶に入るときは万歳ポーズで
叶えた夢が、新たな夢の芽になる。スウェーデン映画の権利を買い、自分で翻訳し、配給してみたい。翻訳家としての経験を経て、そんな野望も生まれた。
「日本に入って来るスウェーデン映画は1年に多くて3本程度なので、その作品の字幕翻訳を全て手掛けたい。のみならず配給も手掛けてみたい。作品の権利を買い取って日本でミュージカル化するのも面白いかもしれない。でも今の私にはその知識がないので、勉強の必要があります。友人の宮本亞門さんから『LiLiCoが良いと思う映画でミュージカル化したら面白いものはあるか?』と聞かれたりもしているので、いつの日か…」と夢にゴールはない。
泉のように湧き出てくるアグレッシブさ。「女は50から」を地で行く生き方。何がLiLiCoを突き動かすのか?
「なぜってそれは生きているから。生きているからには人生を楽しまなきゃ意味がない。人間、いつ目覚めなくなるかなんて誰にも分りません。死神から肩を叩かれたときに『あれもやってよかった、これもやってよかった。あれは失敗したけれど…でもやってよかった!』と思いたい。私の最後の最後の目標は、万歳ポーズで棺桶に入ること。その高さ2メートル50センチ!」と目の前で大きく万歳ポーズ。
「毎朝目が覚めた時に思うのは『今日も無事に目覚めた。ならばチャンスを掴むぞ!』…これが私の昔から変わらないルーティンです」