不動産仲介と買取は何がどう違う?
—よく不動産会社の宣伝で「仲介」や「買取」という言葉を聞きます。あれはどのような違いがあるのですか? 家を売る人にとって、どちらが良いのか悪いのか、そもそも選べるのか知りたいです。
「ではまず仲介からお話ししましょう。仲介とは文字通り、不動産会社が家の売り主と買い主との間に入って、双方が契約を交わせるように仲介することを言います」
—前回、インターネットの「一括査定サイト」を教えていただきました。入口がネットかそうでないかだけで、内容は同じですか?
「同じです。不動産会社は、家を売りたい売り主といくらで売るか、諸条件を踏まえて相談し、売れそうな上限価格で売り出しを始めます。大抵の不動産会社は、売り出し開始から2カ月程度での売却を想定して額を決めます。もし売れなければ、価格を下げるなどのご提案をします」
「メリットは、高い価格で家が売れること。買い主の意向もあるので全てが予定通りに、早く高く売れるとは限りませんが、それでも比較的高く売れます」
「デメリットは、いつ売れるか分からないことです。また買い手は中古住宅を買って住むので、住宅設備を重要視します。設備故障はもちろん、不備なども細かくチェックなさいます。でもそこは不動産会社が間に入って、確認とすり合わせを行うのでご安心ください」
「そうしていざ売買契約を交わした後も、住宅ローンという関門が待っています。買い主のローンが組めなければ契約解約となるのがほとんどですね」
—そういう場合に備えて、買い主さんは「住宅ローン特約」を付けて、売買契約解除の違約金を払わずに済むようにしておくんですね。
「一方、買取は文字通り不動産会社が買い取るケースです。メリットはその場で確実に、即売却できること。仲介のようにいつ売れるかと気を揉むこともないので、例えば『この日までに資金が必要だから売却したい』などという人にはお勧めです。明け渡しの際も、片付けや修理もせずに済む場合がほとんどですね」
—それは楽です!
「その代わり、デメリットは仲介価格より少し安くなることです。不動産会社が買い取る目的は、利益を上げること。ですから条件にもよりますが、買取額は市場価格の7~8割が目安です。不動産会社は買い取った後、リフォームして転売したり、解体して土地を売ったり、解体後に新築住宅を建てて販売したりと、その地域のニーズに合わせた用途で利益を出せるようにします」
選べる仲介と買取
—仲介と買取とはぜんぜん違うんですね。ところで単純に金額だけを見た場合、売り主にとってお得なのはどっちですか?
「仲介でしょう。仲介の場合、不動産会社への仲介手数料が発生します。でもその手数料を差し引いても、買取価格より多い金額が手元に残る可能性が高いです」
—基本的には仲介がよさそうですね。買取が向いているのは、「早く確実に売却したい」人でしょうか。
「あとは、さまざまな事情から住宅を売りに出しているのをご近所に知られたくない方にも向いているかもしれませんね。仲介の場合、不動産会社は売却情報をオープンにする義務があります。だからより広く、買い手を募ることができるわけですが、一方、買取の場合は水面下での交渉のみで決められるので、誰にも知られずに売ることが可能です」
—なるほど。売り主は希望金額のほかに、抱えている事情も含めて相談した方が良さそうです。
「ぜひお願いします。中にはお客様に『うちがご自宅を買い取りましょう』と買取の話しかしない不動産会社もいると聞きますが、そもそも仲介か買取か、お客様の選択肢を奪ってはならないと思います」
「まずはお話を伺い、仲介と買取、いずれか納得できる方法をご相談の上で決めるのが一番です。もしお客様が決められないなら、しばらく仲介で進め、ある程度経って売れなければ不動産会社が買い取るという方法もあります」
—途中で、仲介から買取へ切り替えるということ? そんなことできるんですか?
「できます。例えば2000万円で3カ月間売り出してみて、もしダメなら不動産会社が1600万円で買い取るという具合です。お客様にとって何が満足のいく売り方なのかを見定めるのも、不動産会社の仕事です」
「実は、仲介でもう1つお話しておきたいことがあります。業界用語で『片手』と『両手』と言うのですが、ご存知ですか?」
—片手?両手?
「これを知っておくと、不動産会社の裏事情が見えてきますよ。次回は不動産仲介の片手と両手についてお話ししましょう」
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