「観覧場所を独り占めしないで」「隠れているのに撮らないで」「荷物の放置やめて」—。
いしかわ動物園(石川県能美市)で今春、ユキヒョウの赤ちゃんが誕生しました。無事成長し、観覧制限を設けた上で展示場に馴れるための「馴致(じゅんち)訓練」を9月に開始したのですが、約1カ月後、「観覧・撮影での迷惑行為が増えた」と公式サイト上で注意喚起が。「このままでは観覧制限が解除できない」「大人は子どもたちのお手本です」とまで言及する事態になっています。
SNS上では「手すりに乗る人がいた」など迷惑行為の目撃談がある一方、「譲り合ってとても良い雰囲気でした」との報告も。注意喚起後に同園を訪れてみると、柵越しの展示場で、さらに観覧制限ありのため見えにくいながらも、スマホやカメラを手に親子を静かに見守る多くのファンの姿がありました。たまたまなのか、注意喚起の効果なのか。同園飼育展示課長で獣医師の大井毅さんに話を聞きました。
ユキヒョウは標高の高い山岳地帯に生息。寒さに適応する長めの体毛、太い脚や長い尾が特徴。同園の赤ちゃんは3月31日生まれのメス。母親はジーマ、父親はスカイ。大型ネコ科動物エリアの屋外展示場に親子が出るのは木、土、日の9:00~15:00。ほかの日は室内展示場で見ることができます。屋外の観覧場所の前方は子どもや車いす専用ゾーン。禁止事項などが書かれた大きな看板が目立っています。
―こんなことをする人が実際いたのですか?
「他園から話を聞き、こういうことがあるかもしれないと準備しました。『子どもゾーンに写真を撮りたい人がずっと入ったままだった』とか、『観覧エリアに荷物を置きっぱなしにする人がいた』などです」
―だれもいなくても、子ども・車いすゾーンは立ち入り禁止?
「だれもいない時なら入ってもいいのでは?という話も出ましたが、やはり、すぐに出ればいいと言っても、『人がいる』というだけで遠慮して進みにくいだろうと、この規制は続けることとしました」
―親子は大人気
「今年、赤ちゃんが見られるのは当園だけで、遠方からも熱心なファンの方々が来園してくださっています。ほとんどの方は撮影マナーを守り、譲り合いながらご覧いただいていると感じます。SNSへの投稿は、若い職員は特に喜んで見ているようです」
屋外展示場内には観覧通路としてガラストンネルがありますが、訓練開始時に閉鎖。出入り口は板で目隠ししたものの隙間からのぞき込んで撮影する人がいたそう。「身を隠せる場所を無理やり撮影する行為は、不安や恐怖を感じさせ、警戒心を強くしてしまう」と、公式の注意喚起でもこの点を問題視。訓練に支障が出かねないとして隙間に近づけないよう制限を広げざるを得ませんでした。
また、「室内展示場では親子の『出待ち』が観覧通路をふさいだり、荷物放置は通行の妨げになったりもします」と大井さん。「屋外の観覧制限は徐々に解除して、できれば通常の状態にしていきたいのですが…。ガラストンネルについては、現状ではまだまだ開放を検討する段階にありません。みなさんで気持ちよく観覧できるよう、気を付けていただければ」と呼び掛けています。
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