側溝で動けなくなっていた犬 重い膝蓋骨脱臼だった 手術とリハビリを頑張って「家族の一員」に 「お散歩ってこんなに楽しいんだ!」

松田 義人 松田 義人

2021年夏、岡山県内のとある町で、側溝に落ちてしまい動けなくなった1匹の痩せたワンコがいました。推定5〜8歳くらいの中型のミックス犬で、後につけられた名前は夢羽(むう)。

現場から保護され、岡山県動物愛護センターに収容されることになりましたが、職員が近くに寄ると、あまりの恐怖からブルブル震えていました。聞けば、保護された現場近くで、多頭飼育崩壊があり、このワンコもその中の1匹だったとのことでした。

夢羽が抱えていた生まれつきの脚の病気

夢羽が落ちていた溝から自力で出てこられなかったのは、生まれつきの膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)が原因のようでした。膝蓋骨脱臼とは、膝のお皿が内側に外れてしまう病気で、進行すると骨格の変形が起こり、さらなる脱臼を助長するというものです。

多頭飼育崩壊現場では犬同士で水や食べ物を争い合うような劣悪な環境の中で、こういった先天的な病気を抱えながら過ごしていた夢羽ですが、幸い、後に地元の保護団体、NPO法人しあわせの種たち(以下、しあわせの種たち)によって引き取られることとなり、適切なケアと世話をしてもらうことになりました。

「今で見たことがないような悪い状態」

しあわせの種たちのスタッフが夢羽を引き出した後、すぐに動物病院に連れていきましたが、その診断はやはり膝蓋骨脱臼で、状態はグレード4。専門の獣医師ですら「今まで見たことがないような悪い状態」でした。

一も二もなく、スタッフは獣医師の手術を依頼しました。手術では骨を切り、まっすぐになるようプレートで固定。また、外側に外れていた膝蓋骨も正常な位置に戻してもらいました。

3時間にもおよぶ手術を終え、さらに病院で1泊入院した夢羽は、ようやくスタッフの家に迎え入れられることになりました。さすがに疲れたのか、夢羽はグッスリ眠ってしまいましたが、これから2週間の安静が必要です。もちろん、スタッフも夢羽により慎重な世話をすることにしました。

かつての辛く退屈な日々では真逆

夢羽は人間や物音に怯える様子がまだまだありながらも、スタッフの愛情を受け取り、その家を「自分の居場所」と認識してくれたのか、ときには安心した表情を浮かべるようにもなりました。また、あれだけ過酷な手術を受けたにも関わらずみるみる回復していきました。

安静期が明けた際の診察では「順調にきているので散歩(リハビリ)を始めるように」と言われました。多頭飼育崩壊現場では、散歩などさせてもらえていなかった夢羽は、当初、外の世界にも、テクテクと歩くことにも馴れておらず、家に帰ってくる頃には疲労困憊といった様子でした。やがて遊ぶことが大好きになり、活発に歩いてくれるようにもなりました。すっかり散歩にも馴れた今では走ったりジャンプする姿も見せてくれるようになりました。

夢羽がいる家には、後に別の預かり犬が来たり、一時預かりの子猫きょうだいが来るなどの変化がありました。さらには、この家に生まれた人間の赤ちゃんにも会うことにもなりました。

夢羽は自分の脚の回復と合わせて、それまでに見たことがなかったことを次々に体験することとなり、過去の多頭飼育崩壊現場とはまるで違う「広い世界」を知ったのです。

多くの犬猫を応援する先輩ワンコに育ってほしい

夢羽にとって「新しいこと」「楽しいこと」が起きる連続で、かつてのような辛く退屈な生活とはうって変わった日々をおくることになりましたが、さらに最も喜ばしい知らせが届きました。

夢羽にはなぜか現れてくれない里親希望者でしたが、このスタッフの家で「正式な家族」として迎え入れられることになったのです。これまでの経緯から、夢羽にとっては一番のお家が、他でもないスタッフの家だったようにも思います。これからさらに元気に成長してくれ、他の保護犬、保護猫たちを応援するような先輩ワンコになってくれることでしょう。夢羽、よかったね!

NPO法人しあわせの種たち
https://shiawasenotanetachi.amebaownd.com/

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