広島県福山市の海沿いに、ひときわ目を引く瀬戸内海に突き出た巨大な埋め立て地がある。丸ごと工場地帯になっており、人家は1軒もなさそうだ。そこはJFEスチール株式会社の西日本製鉄所(福山地区)で、1つの会社が所有する工場としては日本一の面積だという。航空写真を拡大すると鉄道の線路を確認できるが、これはレールを出荷するための専用鉄道だそうだ。
工場に特化した埋め立て地
広島県福山市鋼管町は、瀬戸内海に面した埋め立て地だ。この広大な鋼管町全体が、じつはJFEスチール株式会社の西日本製鉄所(福山地区)で、ひとつの民間企業がもっている工場では日本一の広さなのだ。
1878年4月に創業した川崎築地造船所(創業者・川崎正蔵)と、1912年 6月に設立された日本鋼管株式会社(初代社長・白石元治郎)は、時代の変遷を経て2001年4月に経営統合を発表し、翌2002年5月には経営統合契約書を締結。同じ年の9月にJFEホールディングスが発足した。
どのような経緯でこれだけの広さの工場をもつに至ったのか、JFEスチール福山総務室の広報担当者に聞いた。
「広島県や福山市からの誘致を受けて製鉄所の建設が決まり、1961年10月に当時の日本鋼管株式会社が『新製鉄所建設に関する協定書』に調印。1962年4月に、製鉄所敷地の埋立工事が着工されました。1965年2月に福山製鉄所として設立され、単一の製鉄所として日本一の敷地面積(1,420万平方メートル)があります」
また、敷地内に人家はなく、GoogleマップにはJFEスチール以外の社名もいくつか見える。
「製鉄所の構内には、グループ会社をはじめ関係協力会社(下請け会社など)が入っています。製鉄所構内は社有地であるため、民家はありません」
粗鋼生産量は国内最大規模
JFEスチールは、主として粗鋼の生産と資源リサイクルに取り組んでいる企業だが、これだけの規模を誇る工場からは、どのような製品が生み出されているのだろうか。
「2022年3月時点での社員数は4,112人で、グループ・協力会社も含めると約15,300名が働いています」
粗鋼生産量は1,007万トン(2022年度)で、これは国内では単一製鉄所として最大だという。
「製造品種は表面処理鋼板、冷延鋼板、熱延鋼板などの薄板商品、船舶や橋梁に使われる厚板商品、ラインパイプや高圧配管などの溶接管、レールやH形鋼および鋼矢板などの形鋼商品などがあります」
中でも自動車・家電・缶用などの薄板製品が多いとのこと。また、敷地内は直線的なレイアウトで工場を配置しているため、原料の荷揚げから製品の出荷まで効率よく行えるという。
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▽JFEスチール株式会社
https://www.jfe-steel.co.jp/