27年間愛されたお人形の生産終了→反対意見もあったが、未来のための決断だった「一部売り切れも在庫は十分」

太田 真弓 太田 真弓

乳幼児玩具メーカーのピープル株式会社(東京都中央区)が、約27年にわたり愛されてきた「ぽぽちゃん」の生産終了を9月4日に発表しました。その判断にいたった経緯を取材しました。

1996年に発売された「ぽぽちゃん」は、「身近にいる赤ちゃん」をモデルにしたお人形。プニプニのお肌ややわらかい髪の毛、寝かせると閉じる目などがとてもリアルで、子どもたちの「お世話したい!」という好奇心やごっこ遊びの玩具として高い人気を誇り、累計販売数は約580万体にものぼっています。

その突然のお知らせは瞬く間に拡がり、ニュースサイトやSNS上では驚きと淋しさ、そしてそれを上回る感謝のコメントが溢れる状態に。

ピープル株式会社コーポレート広報チームにお話を聞いてみました。

社長も何度も悩んでいました

――大きな反響が届いているかと存じます。

正直、すごく驚きました。「寂しい」とSNS上でユーザーさんが話題にしてくれたことからメディアにも取り上げられたことで、一部のお取り扱い店舗にて一時的に欠品状態になるなど多くの方にお買い求めいただいている状況です。

投稿を1件1件読ませていただいていますが、「ぽぽちゃんありがとう」というお言葉とぽぽちゃんとのエピソード、中にはDMで個人的なお写真を送っていただいた方もたくさんいらっしゃいました。みなさんにとってぽぽちゃんはただのお人形ではなくて、本当に家族の一員として大切にしていただけているのだなと、今まで販売してきてよかったと心から思いました。

――生産終了に至った背景にはやはり少子化が?

少子化による市場縮小も少なからず影響はしていますが、売れなくなったからやめるのではなく、経営戦略の一環での決断です。

昨年4月、「子どもの好奇心がはじける瞬間をつくりたい!」という弊社が目指す役割を明文化したパーパス(志)を制定し、そのパーパスにもとづいた経営判断のひとつが、今回の「ぽぽちゃんの生産終了」です。

ぽぽちゃんは社内でも思い入れが強い商品ですし、最初その話を聞いたときは絶対に反対でした!社長も何度も悩んでいました。

もちろんぽぽちゃんも、お子様の大事な好奇心を満たす役割を持っています。しかし、市場背景・競合状況など、ロングセラー商品を維持するためには、子どもの好奇心を満たすこと以外のことを会社として気にしなくてはいけない場面が多くなっていたのも事実であり、新事業開発にむけてリソースを集中させるために今回の決断となりました。

ぽぽちゃんは、お子さまが思う存分愛情を注げる“大切な存在”になれた

たんぽぽのぽぽちゃん公式Instagram(popochan_official)にも、
「小さい頃、ずっとぽぽちゃんで遊んでいました。私に娘が生まれて、今度は私の母から私の娘へ新しいぽぽちゃんが。ずっと大好きだよ」
「私が生まれてすぐ、父親からプレゼントしてもらったぽぽちゃん。今保育士をしていますが、お世話が大好きで、愛情を注げるようになったのは、ぽぽちゃんのおかげです」
「ぽぽちゃんと娘の出会いは若干1歳頃。ひと目見た時から、ぽぽちゃんを持って離さず、子どもが持ち合わせている母性に驚いたことを覚えています。ぽぽちゃんが育ませてくれた思いやりの心や愛を、昨年生まれた弟へも向けて、とても優しいお姉ちゃん(小さいママ)をしてくれています」と次々とコメントが寄せられました。

――本当にたくさんのエピソードが…。

現在ご愛用いただいているユーザーさま、20年以上前に遊んでいただいて、今、親御さまになられた方、大学生や保育関係に従事されている方など、様々な年代の方からメッセージをいただいています。どのみなさまも、「我が家にお迎えしたぽぽちゃんを、これからも大切にしていきたい」と言ってくださるのがとても印象的です。みなさまのお陰で、ぽぽちゃんは、お子さまが思う存分、愛情を注げる“大切な存在”になれたと改めて感じています。

――「ぽぽちゃんアンバサダー」募集の取り組みなど、ユーザーさんとの交流も印象的です。

ぽぽちゃんはSNSを通じたユーザー様との交流が深く、時にはより良い商品開発のためにご意見をいただくこともありました。ぽぽちゃんとお子さまに関する心温まるメッセージや投稿を弊社公式HPに掲載させていただいたり、拡散させていただくことで「ぽぽちゃんの輪」が広がっていくことも沢山ありました。ぽぽちゃんの遊びの様子を共有してもらえることで、お子様の成長も一緒に見守る機会をいただき本当に感謝しています。

――アフターサービスの継続も提示されておりますが、今後公式サイトの継続は?

生産は終了しますが、お客様とぽぽちゃんの生活は続いていくと思いますので、今後もぽぽちゃん公式HPについては、残しておく想定でおります。

また今後、店頭からぽぽちゃんのお洋服やお世話お道具が販売終了となっていくことを考え、下記のようなコンテンツの公開を検討中です。

・過去に人気のあったぽぽちゃんのお洋服の一部型紙をダウンロード、つくり方の詳細を閲覧できるページ
・お裁縫が苦手…という方でも簡単にできる、手づくりお洋服・お世話道具のつくり方動画の公開

今後も出来る限り、ぽぽちゃん遊びを楽しんでいただけるように準備してまいります。

これからも子どもたちの好奇心を肯定していけるものづくりを

――それはユーザーにとっても朗報です! 今回の決断に対して、昨今の乳幼児玩具の流行の傾向や変化してきている点はありますか?

「身の回りのものに興味をもつ」ということはいつの時代も変わらない普遍的な欲求ですので売れゆきもあまり変わりません。

しかし子どもたちを取り巻く環境が変わると、手を伸ばしたくなるものは自然と変わっていくので、時代に合わせたチューニングを行っています。ロングセラー商品が多い弊社の特徴のひとつだと思います。

例えば、最近は子育てを積極的にされるパパも増えているので、35年以上販売している「やりたい放題」は子どもたちが好きな「メガネ」の面を、数年前からママから、パパに変更しています。

――おもちゃもアップデートを重ねているのですね。今後はどういった企画や商品を?

2歳前後になる子どもたちに見られる、本物の赤ちゃんやぬいぐるみをギュッと抱きしめたりするような「愛情」を感じる行動を私たちは「好奇心」と認識しています。この「子どもの愛情」は、大変重要なテーマです。世界中の子どもたちを深く観察し、まだ見つかっていないことや、子どもたちの好奇心にフタをしまっているようなことがないか?子どもたちの好奇心を肯定していけるようなものづくりを続けていきたいと思いますので、ご期待ください。

◇     ◇

この度のお知らせ後、販売状況が一部過熱したことを受け、ピープル株式会社は「ぽぽちゃんや関連商品の購入を検討していた方にしっかりお手に取ってもらえるよう、在庫数は準備しておりますので、落ち着いてお買い求めください」とコメントを掲出しています。

親の代から親しみ、子どもたちと一緒に過ごしてきたおもちゃの生産が終わってしまうことはとても寂しいですが、きっとユーザーみなさんの心の中や記憶、写真や動画には残り続けるはず。ぽぽちゃんのような子どもの気持ちに寄り添い、心を育むおもちゃが、これからもいつもそばにあってくれることを願ってやみません。

ぽぽちゃん公式HPには、商品情報の他、ぬりえや工作などの「こものダウンロード」ページやお手入れ方法のご案内、オリジナルムービーなど親子で楽しめるコンテンツが盛りだくさん。引き続き更新されるようなので、こちらもぜひチェックを。

また、ピープル株式会社は「子どもの好奇心がはじめる瞬間をつくりたい!」というパーパスを軸に、「好奇心事業メーカー」へと企業変革中とのこと。「コーポレート広報チームnote」では、トライ&エラーの様子をありのままに綴っています。不変の人気製品を開発した玩具メーカーが次にどのような「ワクワク」いっぱいのおもちゃをローンチしていくのか、これからの活動に期待大です!

<ぽぽちゃん関連情報>
■ぽぽちゃん公式HP https://www.popo-chan.com/
■ぽぽちゃんInstagram https://www.instagram.com/popochan_official/
■ぽぽちゃん生産終了のお知らせ https://www.people-kk.co.jp/popo-chan/popo-chan-announce.html
■一部取扱い店舗で発生している売り切れについて https://www.people-kk.co.jp/popo-chan/popo-chan-announce2.html

<ピープル株式会社関連情報>
■公式HP https://www.people-kk.co.jp/
■コーポレート広報チームnote発信中
「Peopleの、コト。Peopleの、ヒトたち。」https://note.com/people_pr
ピープル株式会社代表・桐渕真人さんによる投稿
「子ども達の好奇心に真摯に向き合った結果、ぽぽちゃんを生産終了する判断に至りました」 https://note.com/people_pr/n/n367174349198

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