多頭飼育崩壊という悪環境から保護される犬猫は後を絶ちません。2023年3月、千葉県我孫子市の猫保護団体・ねこ友会に保護されたベンガルのメスのスピカちゃんもそうでした。
無責任な飼い主のせいで、自分たちでは選ぶことができない劣悪な環境での生活を強いられたスピカちゃんでしたが、どういうわけかその過去を感じさせない高貴な表情で、手足も尻尾もすらりとしており、どことなくエレガント。そして、好奇心旺盛、食欲旺盛の元気いっぱいに猫ちゃんでもありました。
隙間が大好きな「毎日がご機嫌」ニャンコ
スピカちゃんは、2020年3月生まれ。2023年春で3歳になりました。立派な大人猫ですが、実年齢よりも若い印象でとにかく元気で、さほど人間を恐れるようなことはありません。
ねこ友会のスタッフの家でケージから出ると、部屋中を探検し、カーテン裏やクッションの下などの隙間に入り込むのが大好き。ご飯もいっぱい食べて「毎日がご機嫌!」といった感じで過ごしていました。
のちに、ねこ友会のスタッフは「スピカちゃんのこの様子なら、新しい里親さんのところに行っても大丈夫だろう」と判断。ほどなくして、譲渡会に参加させることにしました。
初めての譲渡会で里親希望者さんが現れる
「ベンガル」という猫種は、ねこ友会としては初でした。ベンガルは、他の猫種と比べ背骨が一節多く体長が長く、筋肉質で運動能力が良いのが特徴。ロゼット模様の毛柄ともあいまってとてもワイルドに見えます。
そのため、スピカちゃんもすっかりみんなの注目の的となり、初めての譲渡会参加にもかかわらず、スピカちゃんに念願の里親希望者さんが現れました。
譲渡会では、どうしても子猫に注目が集まりがちで、子猫から先に里親さんが決まることが多いものです。しかし、スピカちゃんは珍しい猫種であるだけでなく、その元気いっぱいの性格からも注目を集めることになりました。
果たして、スピカちゃんは元気いっぱいで里親希望者さんのお宅へ向かいました。しかし、先住猫さんとどうしても合わず、また預かりさんの家に戻ってくることになりました。大人猫は時にはこういうこともあります。
遠方の里親希望者さんからの連絡
再び譲渡会に参加することになったスピカちゃん。物怖じしないおおらかな様子に「ひとりっ子が向いているかもしれない」とスタッフは思いました。
譲渡会では申し込みがなかったスピカちゃんですが、インスタグラムを見た方から申し込みが入りました。少し遠いところからの申し込みにスタッフは驚いたと言いますが、結果的にそれがスピカちゃんの運命の家族との出会いとなったのです。
初めて里親さんのおうちに行った日、長いドライブで緊張で途中呼吸が荒くなったりしましたが、里親さんのおうちに着いたらすっかり元通り。優しい里親さんに見守られながら、さっそく部屋を探検。安心してご飯も食べることができたそうです。本来のスピカちゃんが持っている、好奇心旺盛で天真爛漫な性格を、この里親さんの前で素直に出せるようになったのです。
スピカちゃんは見事幸せをつかみました。新しい家族からは「とらみちゃん」という新しい名前をもらい、今では部屋の中心にドンと座り、家族みんなの様子を見守るほど、頼もしい姿を見せてくれるようになりました。今日もきっと、家族全員の愛情を独り占めしているであろうスピカちゃん改めとらみちゃん。これからもずっと、優しい家族の皆さんと幸せに暮らしていくことでしょう。