「京都の人の温かさを感じさせてくださいました。運転手さんはじめ京都市民の観光に対する所作を学ばせていただきました」。京都新聞の双方向型報道「読者に応える」に、京都市内のタクシーで忘れ物をしたという男性から投稿があった。男性の身に何があったのか、詳しい経緯を聞いた。
投稿したのは愛知県小牧市の舟橋恵一さん(72)。舟橋さんは7月23日午後、家族5人で京都を旅行中、京都国立博物館(京都市東山区)から京都駅前(下京区)まで個人タクシーを利用した。
タクシーを降りて京都タワーに向かったところ、ショルダーバッグをタクシー車内に置き忘れたことに気付いた。ショルダーバッグには免許証や財布、帰りの新幹線の切符などが入っていたという。
舟橋さんは慌てて最寄りの交番に駆け込んだ。遺失届を書き、しばらく交番の周囲で待っていると、先ほど乗ったタクシーの運転手がショルダーバッグを手に交番に向かって走ってきた。
「神様、仏様の力と思った」と舟橋さん。「運転手さんのように人のためになることをやらねばと肝に銘じて、帰ることができました」。
さらに「運転手さんにお礼を申し上げたが、京都市民のエチケットというか心意気に対して気持ちを伝えたい」と京都新聞の「読者に応える」に投稿したという。
インターネット上では、「短距離を嫌う」や「運転手の態度が悪い」などと京都のタクシーの評判は良くない。舟橋さんは「全然、悪いイメージはない」とした上で、「もう何度も京都におじゃまさせてもらっている。バッグが帰ってきて気分が良い。予定はつくっていませんが、また京都に行きたいなと思います」と語った。