2023年春、九州のとある保健所に1頭の元野犬のワンコが収容されました。その名はきくちゃん。まだ成犬ではない幼いメスのワンコですが、元野犬の多くがそうであるようにきくちゃんも人馴れしておらず、人間に対する恐怖のあまり触ろうとすると威嚇したり、咬みつこうとしたりしていました。
お世話をしていた元野犬とそっくりのワンコが保健所に…
きくちゃんの存在を知った、福岡県を拠点に犬猫の保護活動を行うチーム、わんにゃんレスキューはぴねす(以下、はぴねす)に参加する預かりボランティアの木原さんは、すぐに引き取ることを決意しました。
なぜなら、この少し前にきくちゃんとそっくりの元野犬のうめちゃんというワンコをすでに引き取っていたからです。時期、場所、推定年齢からして、「うめちゃんときくちゃんは、もしかしてきょうだいなんじゃないか」とも感じ、どうしても放っておくことができなかったのです。
うめちゃんが心を開いた経験も、きくちゃん引き取りの理由の一つ
先立って保護しお世話をしたうめちゃんは、当初怯えが激しく抱き上げると恐怖心から脱糞・失禁したり、暴れて咬みつこうとすることもありました。しかし、木原さんの優しいお世話を受けてうめちゃんは日に日に心を開くようになり、尻尾をあげて木原さんを見つめるようにもなりました。
そんな経験もきくちゃんを引き取ることにした理由の一つでしたが、その前に一つハードルもありました。それは保健所にある「保護団体などへ保護犬を引き渡す際のある条件」でした。
保健所が犬を引き渡す際のある条件
保健所から行き場を失ったワンコを保護する場合、ある目安となる条件があります。それは、保健所の犬舎で、対象のワンコに対し首輪をかけてケージの中に入れることができること。この時点で首輪をかけさせてくれなかったり、ケージの中に入らなかったワンコは引き取ることができません。
そういったことからきくちゃんを迎えに行く際、木原さんははぴねすの先輩スタッフにも来てもらうことにしました。
対面したきくちゃんは確かに初めて会う木原さんと先輩スタッフを前に、警戒する素振りを見せていましたが、それでもなんとか首輪をかけさせてくれ、ケージの中にも入ってくれました。木原さんは胸をなで下ろしました。
うめちゃんと対面し、2頭はピッタリ体を寄せ合った
木原さん宅で過ごすことになったきくちゃんですが、体はひどく汚れていました。そのため、すぐにお風呂に。咬んだり、暴れたりすることはなく、ただ固まっていました。
うめちゃんとは仲良しでここでもまた血縁があることがうかがえました。うめちゃんときくちゃんはいつも一緒に隅っこのほうで過ごしていました。
うめちゃんに比べきくちゃんはビビリが激しく、興味津々で近寄ってきた他のワンコにも軽く唸ることもありました。他のワンコと協調性があるのが元野犬に多く見られる特徴ですが、きくちゃんはまだ強い警戒心から、本来の自分を出しきれていません。
木原さんは「きっと、これから先も、きくちゃんが本当に気を許して素直な自分を出せるまでには時間がかかるだろう」と思いました。そして、その日がくることを信じ、さらにその先にある里親さんとの出会いを期待し、きくちゃんのお世話をし続けることを心に刻みました。
家庭犬になるにはいろんな経験が必要で、人との暮らしにも適応してもらわないといけません。きくちゃんには乗り越えなければいけない壁がたくさんあると思いますが、少しずつ、一歩ずつ成長してくれることを願うばかりです。
わんにゃんレスキューはぴねす
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