2022年7月、北海道の多頭飼育崩壊の現場から、推定3~5歳のメスのミックス犬が保護されました。保護したのは、北海道を拠点に多くの犬猫の保護活動を行う認定特定非営利活動法人HOKKAIDOしっぽの会(以下、HOKKAIDOしっぽの会)。
「ピノ」と名付けられたそのワンコは、保護した際、お腹が大きく妊娠しているとみられました。
保護翌日に4頭の子犬を出産した
保護した後すぐに適切な処置を施しましたが、翌日ピノは4頭の子犬を出産しました。ピノがまるで出産の機会を見計らってしっぽの会で産んだようにも思えました。もしかしたら、「(元いた劣悪な多頭飼育現場ではなく)この場所ならこれから生まれてくる赤ちゃんを安心して育てられそうだ」と本能的に思ったのかもしれません。
残念なことにこのうち2頭は生まれて間もなく死んでしまいました。ピノがしっかり栄養を摂ることができる環境にいれば、もしかしたら2頭は元気に育つことができたのかもしれない…そんなふうに思えてなりません。
やるべきトレーニングが山積み
無事に生まれた2頭は、それぞれ「カン」「コダ」 と名付けられました。しっぽの会のスタッフは亡くなった2頭の分まで、カンとコダに愛情を注ぎ、そしてトレーニングを実施しました。
その甲斐あって、カンとコダは早い段階で里親さんへの譲渡が決まりました。しかしお母さんのピノは里親募集をかける前に、まだまだやるべきトレーニングが山積みでもありました。
ときに人間に威嚇することも
ピノは、メス特有の神経質な部分があり、初めて会う人には警戒心むき出しで威嚇することがたびたびありました。これまでに数多くの保護犬と接してきたしっぽの会のスタッフは「ピノはまだ警戒しているだけで、根っから人が嫌いなワンコではない」「いつかきっと人間を信用してくれる日が来るはずだ」と確信しました。
まずはピノのペースを最優先してゆっくりじっくり距離を縮め、関係性を築いていくことを目指しました。
多頭飼育現場でのピノは、どうも外に出て散歩をした経験がなかったようでした。スタッフが人馴れトレーニングと合わせて、根気強く散歩の訓練を重ねていくうちに少しずつ散歩が上手になり、それと合わせてスタッフにも心を開いてくれるようになりました。
子どもが巣立った後、ピノも幸せをつかんだ
やがてピノは心を開いたスタッフの後ろをくっついて回ったり、甘えてくるようにもなりました。初対面の人には警戒心をむき出しにしますが、当初と比べれば随分な成長ぶりです。
当初スタッフが感じた「ピノはまだ警戒しているだけで、根っから人が嫌いなワンコではない」「いつかきっと人間を信用してくれる日が来るはずだ」は、見事証明されることにもなりました。
ピノが必死の思いで産んだ子犬たちはいち早く幸せをつかみ巣立っていきました。ピノはその様子を見送っていましたが、最後の最後で「ピノを迎え入れたい」という里親希望者さんが見つかりました。
時間はかかりましたが、ピノはこの優しい里親希望者さんのもとで見事幸せな第2の犬生を掴むことになりました。しっぽの会のスタッフは巣立ったいくピノの後ろ姿を見つめながら「本当に良かった」と目を細めました。
認定特定非営利活動法人HOKKAIDOしっぽの会
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