指定ごみ袋に記名…名なしだと回収してもらえない!? 島根の自治体で半数超が義務化 マナー違反抑制するも…賛否の声

山陰中央新報社 山陰中央新報社

 記名欄がないの―。4月に島根県の雲南市から同県松江市に引っ越した記者は自治体指定ごみ袋を見て驚いた。従来、名前を書いて出すのを当然だと思っていたが、自治体によってルールは一様でないようだ。なぜ違いがあるのか、調べてみた。

 5月下旬の早朝、出雲市の自治会長の男性(59)はごみ収集所を厳しい目で見回していた。自身が自治会長を務める地区では、住民が持ち回りでごみ収集所の管理をし、違反があれば担当者がごみ袋を持ち帰り、分別を行うことになっている。

 ごみ袋に記名があれば、違反者に直接注意を促すことができるため「記名は分別やごみ出しのマナーの意識を高める効果がある」と話す。地区内でこれまでに目立った違反は出ていないという。

 同市ではごみ袋への記名は義務だ。記名のないごみ袋は原則回収せず、袋に貼り紙を付け記名を促す。市環境施設課の安田弘和課長は「分別に不備があった場合に誰が出したか特定できる」と意義を話す。

■ルール順守が目的

 島根県内では全19市町村中、出雲市を含む10市町が記名を義務化。ルール順守の徹底を図ることが目的だ。一方、鳥取県内では19市町村中、義務化しているのは3町村のみ。島根でも人口の最も多い松江市はごみ袋に記名欄もない。

 松江市と同様、ごみ袋に記名欄がない鳥取市の山根康子郎生活環境課長は「深刻な違反はなく問題はない」と話す。実際、プライバシーを理由に記名を嫌がる人もいる。義務がない愛知県長久手市から出雲市に進学で移り住んだ男子大学生(31)は「名前を見て、ごみの中身を調べる人がいるかもしれない」と話し、抵抗感が拭えない。

 島根県吉賀町では、ごみ袋に記名欄はあるが、プライバシーの配慮から義務化はせず、記名がなくても回収しているという。

■日本人の性格影響

 ただ、ごみの分別に対する責任感が薄れないか警戒は根強い。松江市では、一部でマナー違反が続き、独自で住民に記名を求めている地区がある。

 記名の義務化とプライバシーの両立を図る取り組みもある。鳥取県日吉津村の一部地域では、記名欄に世帯主の名前ではなく、自治会で管理する世帯番号を記入することで、他人が見てても誰のごみか分からなくしている。

 行政学が専門の島根大法文学部の毎熊浩一教授は、記名の義務化について「日本人の人目を気にする性格が影響している」と分析。一方、義務化はプライバシー侵害の恐れに加え、嫌がる人が別の地域にごみを出したりする逆の弊害もあるとし「住民と行政が、よりよい手段を一緒に模索することが必要」と話した。

 記名によりマナーが守られていた側面は否定できない。半面、以前のような濃密な近所付き合いはなくなり、海外からも含め移住者も増えている。全員が顔見知りという地区が減る中、前例踏襲でなく、地域の実情を踏まえ、多くの人が納得できる方策を考えてみる時期かもしれない。

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