マイルドハイブリッドとは、一般的なハイブリッドシステムより小型で出力の低いモーターを備えた「簡易型ハイブリッド」のことです。減速時に生じるエネルギーで発電し、その電力を専用バッテリーに充電。加速時に電力を使ってエンジンの働きをアシストします。軽自動車に搭載されることが多いですが、ガソリン車とどちらを選べばよいのか悩んでいる方もいるのでは。燃費やコスパについて調べてみました。
▽フルハイブリッドとの違い
「ハイブリッド」というと、プリウスやアクアに搭載されているフル(ストロング)ハイブリッドシステムを指すことが多いです。
マイルドハイブリッドの機能はエンジンのアシストに限られ、フルハイブリッドのようにモーターのみでの走行ができません。そのため燃費向上性もフルハイブリッドより劣ります。
▽軽自動車に多く搭載
マイルドハイブリッドは、軽自動車に搭載されることが多いです。これには以下のような理由があります。
・製造コストを抑えるため
・小さいクルマは元々燃費が良いから
軽自動車は安さがウリです。しかしフルハイブリッドを搭載すれば、製造コストが上がってしまいます。また軽自動車は車重が軽く、元々燃費が良いので、フルハイブリッドを搭載してもメリットが少ないのです。
▽2035年には全軽自動車がマイルドハイブリッドに?
政府は2035年までにエンジン車の新車販売を禁止する方針です。しかし現時点ではマイルドハイブリッド車も「電動車」の一部として認められる見込みで、今後は軽自動車のマイルドハイブリッド化が進むと考えられます。
メリット・デメリット
マイルドハイブリッドのメリット・デメリットは以下の通りです。
【メリット】
・フルハイブリッド車より20~30万円安い
・ガソリン車より1~3km/L程度燃費が良い
・アイドリングストップ後の発進が快適
【デメリット】
・ガソリン車より約10万円高い
・燃費向上性はわずか
マイルドハイブリッドのコストパフォーマンスやアイドリングストップ後の発進時の効果について、解説していきます。
燃費が向上せず意味ないって本当?
マイルドハイブリッドは燃費向上性が乏しく、「必要ない」という声も多いです。ここでは搭載の是非の検討材料として、ガソリン車やフルハイブリッド車と燃費性能を比較します。
▽燃費向上性はわずか
スズキ「ソリオ」のフルハイブリッド車、マイルドハイブリッド車、ガソリン車で燃費性能を比較してみました。
◇ ◇
【 ガソリン(G、2WD)】
燃費(WLTCモード):19.0km/L
1万km走行時の燃料代:約8万4,160円
【マイルドハイブリッド(HYBRID MZ、2WD)】
燃費(WLTCモード):19.6km/L
1万km走行時の燃料代:約8万1,600円
【フルハイブリッド(HYBRID SZ、2WD)】
燃費(WLTCモード):22.3km/L
1万km走行時の燃料代:約7万1,680円
※燃料代はガソリン価格160円/Lで試算
◇ ◇
ソリオでは、ガソリン車とマイルドハイブリッド車で1万km走行時の燃料代が約2,600円しか変わりませんでした。これに対してフルハイブリッド車では、ガソリン車より1万円以上燃料代を抑えられています。
ただしフルハイブリッド車でもマイルドハイブリッド車でも、長距離を走らなければガソリン車との車両価格差を埋められません。
▽実は発進時の静粛性が人気
マイルドハイブリッドで高評価なのが、アイドリングストップ後の滑らかな発進です。最近は多くのクルマにアイドリングストップが装備され、信号待ちの際にはエンジンが一時停止します。しかし再始動の際には大きなエンジン音と揺れが生じ、不快感を覚える人も多いです。
マイルドハイブリッド車では、エンジンの動きモーターがアシストすることで、エンジン音や揺れが抑えられます。
【利用者口コミ】
・ハスラーのターボ車に乗っています。(中略)もうひとつ、アイドリングストップからの発信がとてもスムーズで、ノンストレスです。(40代女性)
※ハスラーは全車マイルドハイブリッド搭載。口コミはガリバー「車カタログ」より
軽自動車では検討の余地あり
車重の軽い軽自動車であれば、マイルドハイブリッドは普通車よりも高い燃費向上性を発揮します。
例えばスズキ「アルト」の場合、ガソリン車とマイルドハイブリッド車では燃費や燃料代が以下のように変わります。
◇ ◇
【ガソリン(L、2WD)】
新車時価格:99万8,800円
燃費(WLTCモード):25.2km/L
1万km走行時の燃料代:6万3,520円
【マイルドハイブリッド(HYBRID S、2WD)】
新車時価格:109万7,800円
燃費(WLTCモード):27.7km/L
1万km走行時の燃料代:5万7,760円
※燃料代はガソリン価格160円/Lで試算
◇ ◇
アルトの場合は、1万km走行で両者に約5,800円の燃料代の差が生じました。購入時は、予想される燃料代の差、アイドリングストップ後の静粛性、その他の装備差を考えて、搭載するかどうかを決めましょう。