―SNSで「かわいい」と話題に
「確かにかわいらしいですよね。でも、前段を知らずに見て、ただただ『かわいい子グマちゃん』では、私たちが伝えたいこととは違います。ネットの良い面、悪い面ですね。しっかり伝える時間が必要だと感じ、配信テーマにしました。これからもガイド、掲示物で伝えていきます」
―保護された良かった、人気者に、ではないと
「来たから見てね、は違います。エゾヒグマは“北海道の大地の子”であり、このような野生動物がいることは北海道の自慢ですが、なぜ保護されて動物園にいるのか。見る人が自分事として考えるきっかけになればと思います。母グマを駆除された『とんこ』も、他の道産の動物もほとんどが保護です」
ー「自分事」とは
「人間の側が考えて行動し、クマを人里に近づかせないことはできます。人と味覚が似ていて甘いものが大好きで、缶ジュースに残る数滴を味わってしまうと、それを求めて缶を探しに来てしまう。クマのエサになる実のなる木は植えないとか、クマが関心を持たない環境を人間がつくらないといけないのです」
目をキョロキョロさせ、表情豊かな子グマ。「最初は隅っこにいて、殻に閉じこもっているみたいでした。精神的な部分で心が閉じてしまわないよう注意して飼育していきたい。体は成長できても、生き物としての感情の交わし方、当たり前のことができないと、将来ほかの個体と一緒にできないクマになってしまう」と坂東園長は話しています。
「クマの成長はゆっくりで、1歳でも意外と小さいと感じると思います。この子グマを見ながら野生のクマのニュースを見ると、また違った視点で考えることができるのでは。どうしたら共存できるのか、自分には何ができるのかを考えるきっかけにしてほしい。私たちは動物たちのメッセージをしっかり伝える動物園でありたいと思っています」
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