新築マンションは竣工前から販売を開始、モデルルームで雰囲気を確認するだけで購入申し込みをすることが一般的。特にタワーマンションや何棟もある大規模開発マンションの場合、何百室もの物件を何期かに分けて販売受付します。
それでも人気物件なら、まだ更地のタイミングでも「抽選」を行ってあっという間に完売…ということも珍しくありませんが、「引き渡し開始後も売れ残ってしまった分譲マンション」も少なからず存在します。
元不動産販売会社の営業マンAさん(50代・関西在住・男性)と地元の不動産大好きウォッチャーBさん(40代・関東在住・女性)に、コッソリ納得の「売れ残り」理由を聞いてきました。
元工場地帯…マンション自体建つこと自体が珍しいエリア
Aさんが勤めていた販売会社が扱うマンションを開発するデベロッパーは、いわゆる「営業が強い会社」。他社がなかなか手を出さないような規模やエリアの土地でも、マンション開発に取り組むことに定評があると言われていました。
そのため「人気が出て、すぐ完売」なんてことは期待できないような物件を扱うことに慣れていたAさんですが、今でも売れなくて印象に残っている物件があるそうです。
それはいわゆる「工業地帯」に作ったマンション。元工場跡地に立つマンションなんて珍しくないのでは?と思われるかもしれません。しかしそこはマンションどころか単身者向けのアパートや個人宅すらほとんどないエリア。一応、各駅停車のみではあるものの駅からは徒歩圏、駅を挟んで反対側には園庭のある保育園もあり、別に不便なわけではありません。駅反対側の住宅地と比較すると価格も抑えめになっていて、メリットはたくさんある立地だったのですが、本当に「大変」だったようで……。
「最後はマンションに『モデルルーム値引き販売中』なんて垂れ幕まで下げて、住民のみなさんからにらまれたりしたっけ……。元の価格設定も安かったですけど、さらに数百万単位で交渉OKと上司から指示が出ていましたよ。いつまでもモデルルームを開けて販売員を張り付けていたら、そっちの方が損失が広がりますから」と内情を話してくれました。
あとから買えば値引きされたらしい…という後悔をしたくなかったら、立地の人気度はよく考えた方がいいかもしれません。
ファミリー向けなのに…小学校も幼稚園も遠すぎる
マンションでも建売の戸建てでも、基本的には顧客層を想定して間取りや価格帯を決めるものです。
たとえば70~80平方メートル中心の3LDKが中心、ワンフロアに1戸ずつ90平方メートル近い4LDK、住民専用のキッズルームあり…。こんな物件なら、「乳幼児がいるファミリー世帯がターゲット層」に設定していると多くの方が想像できるのではないでしょうか。
Bさんによると、そんな王道の新築分譲マンションでありながら、販売開始当初から売れ行きが厳しそうと感じる物件があったそう。「最初に折込チラシを見たときからこれは難しいなと思っていたんですよ」というマンションは、駅やスーパーや病院は割と近くにあるものの、肝心の小学校が歩いて30分はかかりそうな場所に。さらに保育園も幼稚園も徒歩圏内にはなく、園バスのルートに出るにも10分くらいは歩くという立地だったのだとか。
長年地元不動産をチェックしてきたBさんは「ファミリー層じゃなくて、住み替え高齢者やDINKS向け間取りも用意すればよかったのに~って思いました」とため息。その一方で「場所とターゲットが合ってない物件は、条件的に気に入れば余裕持って検討できて『穴場』ではありますね」と不動産探しのコツを話していました。
駅前立地のタワマン、価格の割に専有面積が狭くて中途半端
さらに、もう一つBさんが教えてくれた「売れ残り物件」がありました。ターミナル駅徒歩5分圏内にできたタワマンで、地域の目印になるような開発物件。マンション敷地内に高級スーパーやメディカルフロア、フィットネスジムも入る計画があり、とにかく便利そう!ですが…。
今ほど不動産価格が高騰する前に建てられたタワマンにも関わらず、最多価格帯が8000万円台となかなか強気な価格設定だったのです。
駅チカとはいいながら、立地しているのはどちらかというと繁華街というよりは「駅ウラ」という雰囲気の場所で、住環境として良い場所かと言われるとそういうわけでもない。しかも最多価格帯の広さは60~70平方メートル程度と特に広くもない。
「住宅に8000万出そうという層なら、広さや設備もそれなりのものを求めるのに、立地だけで売れるだろうっていう物件でしたね。こういうアンバランスな物件も、売れ残りがちだと思います!」とBさん。マンション開発会社に転職できそうな勢いで語っていました。