脳梗塞や心筋梗塞の予防薬のひとつ、「抗血栓薬」。血液をサラサラにするという役目を担っている医薬品ですが、その特徴からケガなどにより出血した場合に血が止まりづらくなるなどの症状が起こることも。そのため、医師などに服用していることを知らせる「抗血栓薬カード」が存在します。今回は抗血栓薬カードについて、吉田病院付属脳血管研究所(神戸市兵庫区)吉田泰久院長に詳しく聞きました。
――抗血栓薬カードとは、どのようなカードなのですか?
「抗血栓薬」は血管が詰まるのを防ぐ薬で、脳梗塞や心筋梗塞の予防薬とされています。この薬を服用していると血が止まらなくなるため、ケガや出血をした際に大きな影響を及ぼします。服用しているかどうかを治療する側が把握していないと危険な状況に陥ってしまうので、それを防ぐために製薬会社が作成しているカードなんです。
――服用していると、転倒・事故に遭った際にも出血がひどくなるということですね。
そうです。抗血栓薬にも数多くの種類があるのですが、なかでも心臓から起こる脳塞栓(のうそくせん)を予防する「抗凝固剤(こうぎょうこざい)」などに対しては、中和薬が存在します。この中和薬も3種類ほど存在するなど、どの薬を服用しているかどうかで大きく変わるんです。出血がひどい場合、中和薬を投与すると効果が早く出るため多量な出血を防ぐことができます。そのため、抗血栓薬を服用しているかどうかは必要な情報なんです。
――中和薬の投与により血液が凝固してしまう可能性もあるのでしょうか?
可能性はありますね。凝固しすぎるということはありませんが、これまでサラサラだった血液が止まるようになるため、長時間凝固させてしまうと血栓症になる可能性は出てきます。
――抗血栓薬を服用しているがカードを持っていないという場合はどうしたらいいのでしょうか?
このカードは恐らくメーカーが作成しており、病院に常時置いているということはないかもしれません。そのため、自身が服用している抗血栓薬の名称は覚えておいていただければと思います。最も代表的なのが「アスピリン」と呼ばれる薬です。また、お薬手帳のコピーなどを持ち歩いていただくのがいいですね。
――現在、マイナンバーカードの健康保険証利用が可能になってきていますよね。
そうですね。当院でも対応しており、マイナンバーカードがあればこれまでの薬歴(やくれき)もデータとして引き出すことは可能です。ただし、手続きが複雑なうえにまだまだ普及していないため、抗血栓薬カードを持っていない場合はお薬手帳のコピーを持ち歩いていただければと思います。
◆吉田泰久 社会医療法人榮昌会 吉田病院 / 理事長兼院長 /
1952年12月の開設以来70年近くにわたり、神戸市の救急医療のなかでも脳卒中患者の診療を主に担い、急性期から回復期、在宅まで一貫した脳卒中治療を提供している。
診療科は、神経外科、脳神経内科、内科、循環器内科、リハビリテーション科