「寿命まで世話を続けます」東日本大震災から14年…被ばく牛150頭を飼育 牧場運営主の“思い”に感涙 「命を繋いでくださってありがとう」

渡辺 晴子 渡辺 晴子

「14年目の被曝牛150頭がまだ生き残り、寿命まで世話を続けます。平均して15〜16才になっているのでは。聖地巡礼の様な牧場にして行きたい」

東日本大震災から11日に14年を迎えました。震災後、福島県浪江町で被ばく牛の世話をしている「希望の牧場 ·よしざわ」の吉澤正巳さん(@cowgodzilla68)がX(旧Twitter)でこれまでの月日を振り返りながら思いをつぶやいたところ、1.7万件のいいねがつくなど話題に。たくさんのコメントが寄せられました。

「被爆したおかげ(せい)で 寿命を全うできるだなんて…なんという皮肉なんでしょう」

「肉牛になるはずだった牛たちが寿命が来るまで広々とした大地の上でのんびり暮らしている‥」
「被爆したおかげ(せい)で 寿命を全うできるだなんて…なんという皮肉なんでしょう…広々とした牧場で 運動もできて…ほんとうにありがとうございます」
「ご自分も大変な生活の中お世話を有難うございます」
「みなさま、命を繋いでくださってありがとうございます。あの日から11日で14年、大切な家族、多くの動物の命が失われました。心から哀悼の誠を捧げます」
「人や生き物に対し愛おしく想い 生きていくのは ある意味闘いなのでしょうか」

多くの人たちの感心を集めた投稿。14年目を迎えた思いと被ばく牛の命を守るために立ち上げた「希望の牧場」について、吉澤さんに聞きました。

福島第一原発から14キロの浪江農場 商品価値がゼロになったが…「牛の命を守りたい」

――震災から14年を迎えました。

「短いようで長かった気がします。浪江の人たちの人生を狂わせた大震災。震災前の人口は約2万1千500人でしたが、浪江に戻ってきた人はその1割ほどしかいません。新しい場所に移住してしまって、帰ってこないというのが現実です。住民票は浪江町に残したままの人が多いのですが、今はお墓参りにくるだけの場所になってしまいました。自分たちのルーツ、根っこが、根こそぎなくなってしまうような気持ち…心のむなしさがいまだ残っています」

――震災当時のことを教えてください。

「私はエム牧場(二本松市)浪江農場の農場長で、もともと和牛の繁殖や飼育などをしていました。浪江農場は福島第一原発から14キロの距離にあり、ホームセンターで買い物中に被災。何とか牧場に戻り、施設の一部がつぶれるなどの被害がありました。停電だったため、発電器を回して牛に水を飲ませたりしていましたが…カーナビのテレビをみていたら、原発の様子がおかしいことを知ったんです。そして、原発の水素爆発が起こりました。原発から吹き上がる自衛隊の放水作業の白い風炎を目にして、もう(牧場も)おしまいだと思いましたね…ただ震災が起きてから私は自ら被ばく覚悟で牛の命を守るため牧場にとどまりました」

――すぐに避難はされなかったのですね。

「はい。一時は社長のいる二本松市に避難しました。4月下旬頃、原発から20キロ圏内が原則立ち入り禁止の警戒区域になっても浪江農場に通いながら牛たちの世話は続けました。でも、その翌月5月には国から被ばく牛の殺処分指示が出されたんです。それは牛たちが被ばく牛となり出荷先からキャンセルが続出、商品価値はゼロとなったから。私は社長と話し合い、牛たちを見捨てられない、命を守りたいという考えに至り、殺処分を断りました。そこで7月、エム牧場が飼育していた被ばく牛約330頭を飼育する『希望の牧場』を立ち上げたんです」

牧場運営主「お金にならない牛を長く飼うというのは本来ありえない話だが…」

――被ばく牛の寿命まで飼育する覚悟だとか。

「そうです。今生き残っているのが150頭。平均して年齢は15~16歳ほどだと思います。お金にならない牛を長く飼うというのは本来ありえない話。ただお金とか経済とかの話じゃなくて、人間の心の問題として命をどう扱うのかということを考えた結果です。10年目の節目に一般社団法人から私の個人運営となりました。お金の問題などもあり支援いただくことが続かなくなったりと大変な面もありますが、牛たちの寿命まで頑張り抜きたいと思います」

――牧場の見学ができるそうですね。

「できます。原発事故が起きたところがどうなっているのか…人間だけではなくペットや家畜など命の問題として立ち止まって考えてもらうために、命をつないでいる現場をみてもらいたいと思います」

牧場の見学、支援などはX(@cowgodzilla68)の固定ポストを見るか、牧場見学は吉澤さんの携帯080-5565-3199まで。また、吉澤さんは全国の学校などに講演活動もしているそうです。

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