生まれてこられなかった天使たちへ 中学生が「エンジェルドレス」手作り、地元医療機関に贈る プロジェクトに全国から資金届く

山陽新聞社 山陽新聞社

 死産した赤ちゃんに着せる専用の服「エンジェルドレス」。その存在を知った岡山中(岡山市)の2年生有志3人が手作りして地元の医療機関に贈っている。「お別れの時に癒やしを与える存在になれば」としている。

 ドレスは未熟で軟らかい赤ちゃんを、かわいらしい姿で抱っこできるように作られた。宇野茉依さん、重戸美慶(みちか)さん、林咲結(さゆみ)さん=いずれも13歳=は必要とする人に渡そうと昨秋、クラウドファンディング(CF)を実施。目標の2倍を上回る約58万円が集まり、材料の購入などに充てた。

 CFサイトには死産を経験した人や助産師らから応援メッセージが多く寄せられ、支援金のほか、生地や飾りのレースも届いた。3人は放課後や休日を使ってミシンや手縫いで一着ずつ丁寧に製作。青とピンク、黄色の柄を用意する。

 中学修了までに100着を完成させる計画で、これまでに40着を手がけた。国立病院機構岡山医療センターや岡南産婦人科医院など要望があった同市内の五つの病院を訪ねて寄贈したほか、個人にも郵送した。公式インスタグラム(okachuangeldressproject)のダイレクトメッセージで受け付けている。

活動のきっかけや今後の予定は

 「岡中エンジェルドレスプロジェクト」と名付けて製作に励む宇野茉依さん、重戸美慶さん、林咲結さん。3人に活動のきっかけや今後の予定を聞いた。

 赤ちゃんはみんな元気に生まれてくると思っていた。助産師の母や妊娠中の知人から死産について聞いた時はショックだった。夏休みの自由研究で学び、ドレスを作っている県外の女性とオンラインで話をした。自分たちも誰かの役に立ちたいと考えた。

 製作中は赤ちゃんのことを思って気持ちが沈む。でも受け取った家族に伝わってしまうだろうから、音楽を聴いたりおしゃべりしたりしながら取り組んでいる。

 赤ちゃんと過ごせる時間は限られているけど、少しでも癒やしにつながればうれしい。新たにドレスと同じ生地のくるみボタンを作り始めた。これは家族用。形見として持っておくと、存在を近くに感じられるかなって。

 大勢の支援のおかげで活動に打ち込めている。8月には地域の方々とドレスを作るワークショップを初めて開く。校内ではチラシを配り仲間を増やす予定。継続させ、必要とする人にしっかり届けたい。

家族の気持ち、前へ進むはず

 国立病院機構岡山医療センター産科医の大岡尚実医師(37)の話 死産は急に起こるケースがある。知らせを受けた母親は頭が真っ白になり、気持ちがついていかない間にお別れをしないといけない。病院によっては準備が間に合わず、手持ちのガーゼやハンカチをかけて送り出し「何かしてあげたかった」と自分を責めたり思い返したりする母親もいる。そんな時にすてきなドレスがあれば、かわいいわが子の姿を見られ、家族の気持ちも少しは前へ進むはず。胎児の大きさはさまざまなので、サイズが3種類あるのは助かる。これからも活動を応援したい。

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