廃船の中で鳴いていた天真爛漫な子猫 愛猫を亡くして落ち込んでいた保護主の心を癒やす「来てくれてありがとう」

渡辺 陽 渡辺 陽

海辺の公園に捨てられた子猫

セナくん(1歳・オス)は、沖縄県の海沿いの公園に捨てられていた。

生後1カ月半〜2カ月くらいだった。

保護された公園は、数年前に一斉TNRが行われ、成猫の猫たちだけが暮らしているはずだった。ところが、そこに生まれるはずのない子猫がいた。廃棄された船置き場の船の中で大きな声で鳴いていたという。ボランティアが呼ぶと恐る恐る出てきたので、そのまま抱っこして保護したそうだ。皮膚は真菌でボロボロになり、生臭く、とても汚れていたという。2022年5月、雨の降る日のことだった。

里親になった埼玉県在住のNさんは「発見してすぐに身体をキレイにしてくれた人、体調など健康面のケアをしてくれた人、沖縄からの搬送ボランティアの人、埼玉県に来てから預かりボランティアをしてくれた人…そして保護猫カフェのスタッフの人。たくさんの優しさで繋がった命です。これもご縁です」と振り返る。

足踏みをしているような毎日

Nさんは、セナくんを迎える4カ月前に、5歳の愛猫キリちゃんを突然亡くした。

「現実を受け入れられず、人と話すのも苦痛だと感じるぐらい、何もする気の起きない毎日でした。それでも我が家にはキリの弟分の猫『ラテ』がいて、そのおかげで救われていました。でも、我が家の欠けてしまった部分、キリを失った喪失感はどうしても拭えませんでした」

亡くなったキリちゃんがラテちゃんに気難しく接していたこともあって、特別に仲の良い2匹ではなかった。それでもラテちゃんは、キリちゃんの機嫌のいい時を見つけてそばに寄って行った。仲良くしたいようだった。

「キリがいなくなって、時間が経つにつれラテが私を呼んで鳴くことが増えていきました。私がいる時はべったりくっついて離れませんでした。思えばラテは、我が家にきてからキリがいなくなるまで、1匹だけで過ごしたことがなかったのです」

Nさんは無気力で何もする気がしない。ラテちゃんも寂しがっている。

「毎日、足踏みをしているような気がしました。あの悲しい日から抜け出せず、時間が進んでいないような…キリに似ている子はいないかな?ラテに合いそうな子はいないかな?と、ずっと思っていました」

神秘的な猫

そんなNさんが保護猫の情報を探し始めたのは、キリちゃんを亡くしてから4カ月後、2022年9月のことだった。久しぶりに意欲と行動力が蘇ったという。

気になる子をインスタで見つけて、その子に会うために夫と保護猫カフェを訪れた。

「お店の中にいる気になる子に一目散に向かう私の後ろで、夫に近づき、こっそりアピールしていたのがセナでした。夫に『この子が気になるんだよね。お店にきて最初に近づいてきた子だったから』と言われて、私が気になった子とセナをとにかく観察しました」

Nさんは「ラテとはどちらの子の方が仲良くなれるだろう」と考えた。「正直、人懐っこい印象は受けなかったのですが、人が苦手な感じはしなかったし、他の子と接している姿を見て、きっとラテと仲良くなれる!と思ったのがセナでした」

「神秘的で本当に猫なの?」というのが第一印象。丸い印象のアメリカンショートヘアと暮らしていたので、逆三角形の小顔、手脚が細く長いオリエンタルな体型はとても不思議な感じ、両耳後ろのホワイトラインの模様が神秘的に見えたという。

止まっていた時間が動き出した

10月、セナくんを迎えると、まずは先住猫ラテに逆「シャー」の挨拶。2時間ぐらいはゲージの中で固まっていたが、ごはんを出すとためらうことなく食べて、トイレも即クリア。その後、すやすやと寝ていて、緊張感は全くなかったという。

預かりボランティアの方が「ブセナ」と名前を付けてくれていたので、その名前を大事にしながら、Nさん宅の猫が歴代2文字なので、「セナ」という名前にした。

セナくんは、物怖じしない天真爛漫な性格で、コミュニケーション能力がとても高い。初対面でシャーをしたが、すぐに先住猫ラテにくっつき、グルーミングをし、3日ぐらいで仲良くなった。

「1週間も経たずに、くっついて寝るようになりました。お昼寝は2人べったり!が定番です」

おもちゃはもちろん、眼鏡ふき、小さくたたんだエコバック、空のお弁当箱、折り畳みの傘など、よく何かをくわえて運んでいて、そこが可愛いという。

「セナを迎えて、悲しみで止まっていた時間が動き始めました。セナには、『来てくれて有難う。セナが来てくれて、みんなが幸せになっているよ。セナも幸せだと嬉しいな』と伝えたいです」

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