「焼き菓子の詰め合わせを、夫の実家に持って行ったけど、クッキーが1枚割れていた。お年賀の品なのに、縁起が悪いと義理の母に言われたんだけど、この事実をどうしてくれるんですか?」
ある客からの問い合わせに、店員が「レシートや品物をお見せいただけますか?確認いたします」と対応するも、レシートも品物もなく。
「そうじゃないのよ、そのことをどうしてくれるの?」と繰り返すばかり。何を話しても埒が明かず、「お客様のお望みは返金でしょうか?」と店員が確認しても認めないという状態が続いたそうだ。
……実は、こういった悪質なクレーム被害が、千葉県や近隣他県の洋菓子店で11月から発生している。事態の報告を受けた千葉県洋菓子協会(以下、協会)は、公式サイトで1月17日に注意喚起を掲載。クレームの実態などを協会に取材した。
返金は求めずも、執拗に「どうしてくれる?」
協会が所属する洋菓子店に向けての注意喚起は以下の内容だ。
「【注意喚起】悪質な返金要求・クレーム事案について
現在、複数の菓子店において実在の購入事実や証拠が確認できないにもかかわらず、返金や対応を迫る悪質なクレーム事案が確認されています。内容や手口が共通しており、同一人物による可能性が高いため、注意喚起いたします」
協会によると、今回のようなクレームが洋菓子店Aにあったのは1月11日。店員は、レシートも品物もない返金には対応できないことを説明し、その日は帰ってもらったのだそう。ただ、不審な点が多かったことから、洋菓子店Aは知り合いの同業者に情報を共有。
すると、その翌日(1月12日)、洋菓子店Bに同一人物と思われる女性が来店。今度は、「焼き菓子の裏表示のところに、髪の毛が挟まっていた。この場合、どうしてくれるんですか?」と詰め寄ったそうだ。
洋菓子店Aから昨日のことや人物の特徴を聞いていたため、洋菓子店Bはすぐに悪質クレームであることを察知。洋菓子店Aで対応した店員が、洋菓子店Bの店内に設置するカメラ映像に映る姿を見て、同一人物であることも確認した。
クレームに対し、「焼き菓子をお贈りした先方に、店から謝罪しますので、連絡先を教えていただけますか?」と対応。「そういうことではないわよ」と言って、すぐに店を去ったという。
いずれも、あからさまな返金要求はなく、「どうしてくれる?」と詰め寄る手口だった。
根拠のないクレームに対応せぬよう、仲間で団結
協会では、クレーム事案やその対応を発信することはこれまでにはなかった。協会に所属する会員たちがLINEなどで情報を共有することはあり、今回もすでに仲間内では注意しよう、と呼びかけがおこなわれていた。
しかし、昨今、飲食店等のトラブルも多いこと、年末年始の繁忙期後のクレームでもあること、2日間連続、同一人物による仕業であることから、協会の公式サイトで注意喚起することに。
手口やクレーム内容、人物の特徴を掲示するとともに、「レシートや現物が確認できない場合は、安易な返金対応を行わない」「複数名での対応や記録の共有を行う」ことを呼びかけている。
この注意喚起を受けて、千葉県内の複数の店舗から「うちの店にも来た」と報告があった。また、他県でも似たようなクレームが複数の店舗であったことも発覚。昨年11月には茨城県内の洋菓子店で同様のクレームがあり、クレーム対応に慣れていない店員が返金対応をしたこともわかった。
その後も、レシートや品物を持参せず、「どうしてくれる?」と迫る同様のケースは発生しているが、協会からの注意喚起を共有していたため、冷静に対応できた、という報告もある。
協会では、今後も情報共有と注意喚起を継続していく。
◇ ◇
厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、「商品交換の要求」「金銭補償の要求」などがカスハラとして記されている。今回の場合は、あえて商品も金額も自ら口にしないことで、相手に判断をゆだねる形を取っているのも悪質だ。
同マニュアルでは【威嚇・脅迫型】に関しての対応例として、「【対応例】複数名で対応し、警備員等と連携を取りながら対応者の安全確保を優先する。また、状況に応じて、弁護士への相談や警察への通報等を検討する。ブランドイメージを下げるような脅しをかける発言を受けた場合にも毅然と対応し、退去を求める」を挙げている。
今回のようなトラブルは業態問わず起こりうることだ。そのため店舗側は、まず本当に購入したかどうかレシートや現物での確認を。また客側は、レシートがない場合、カスハラと判断される可能性の認識が必要となってくる。
■千葉県洋菓子協会 公式サイト https://chiba-yogashi.net
■カスタマーハラスメント対策企業マニュアル https://jsite.mhlw.go.jp/shizuoka-roudoukyoku/content/contents/001104928.pdf