MTクルマ好き、選ぶならスズキ・スイフトスポーツ! コンパクトな車体と走りに心奪われた 車重軽くお財布にも優しい

小嶋 あきら 小嶋 あきら

昭和の終わり頃から一気に進んだAT化

 オートマティックトランスミッション(AT)とマニュアルトランスミッション(MT)。言うまでも無く現在はATが主流で、2019年に販売された国産車の98.6%がATだったといいます。もはや絶滅寸前のMTですが、しかしなかなかこれが0%にはならないようです。

 1985年にはMT車は51.2%でしたが、1990年には27.5%、以後急速に減っていって2010年には1.7%になってしまいました。しかし、この10年ほどは下げ止まりというか、減少の勢いが止まっているという印象です。

 2019年は1.4%ですが、この残りの1.4%の中にはおそらく根強いMT車のファンが居るのでしょう。CDが開発された後のアナログディスクや、デジカメ全盛の時代のフィルムカメラなどのように、MTにこだわりを持ったファンがこの1.4%を支えているのだろうと感じます。

 筆者は1966年生まれ。18歳で普通車の運転免許を取った頃(1985年)には、一般的にAT限定免許はまだありませんでした。(身体にハンディキャップがある方には、それに応じてAT限定の免許はありましたが。)

 AT限定免許が設定されたのが1991年。数字で見ると、AT免許以前から街中のMT車はどんどん減っていっていて、それを追いかけるように免許制度が変わって、その結果さらに一気にAT化していった、という感じでしょうか。

AT派とMT派、いろいろ議論はありますが

 ウェブ上でも「どちらが優れているのか、燃費はどうで安全性はどうだ」といったAT派とMT派の論争をよく見かけます。マニアックなマイノリティと、車は道具としてあまりそこにこだわらないマジョリティの戦い、といった感じで、たいていあまりかみ合わない議論が続くという印象があるので、ここでは優劣については一切触れないことにします。

 ただ、筆者はMTが好きです。理由は実はあまりないのですが、強いて言えば「ギヤをチェンジする度に、エンジンが違った表情を見せてくれる感じ」が好きだから、でしょうか。あと、ちょっと古めで値段の下がったヨーロッパ車が好きだから、というのもあります。ヨーロッパではいまもMT車の割合が多くて中古車の選択肢が多いことと、あとATは壊れると修理が大変なことになって結局手放してしまう場合が多い、そんな事情もあるんですね。

 国産車にしても輸入車にしても、筆者自身はまあたぶんこの先新車を買う機会はそうそう無いとは思っていますが、しかし「いま買うことができるMT車は何があるのだろう」というのは常々少し気にしています。それで、しばしば試乗に出かけたりもします。今回、近くのスズキのディーラーにスイフトのMTの試乗車があるということを聞いたので乗りに行ってきました。

軽くてコンパクトで乗りやすい、スズキのスイフト

 試乗車はシルバーメタリックのスイフトスポーツでした。1400ccの4気筒DOHC16バルブの直噴ターボエンジンで140馬力。6速MTで、車重は970kgです。最近のクルマで1トンを切っているというのはかなり軽いですね。車重が軽いということは慣性力が低いということですから、加速にも減速にもコーナリングにも確実に有利ですよね。さらに車検のときの重量税も1トンを境に税額が変わりますから、軽いのはありがたいです。またこのスイフトは1400ccですから、1500cc超えのクルマに比べると自動車税も安いです。

 運転席に座ると、なかなかスポーティな印象です。スピードメーターは260km/hまであります。昔、父が乗っていたクルマには140km/hまでとか160km/hまでとかのメーターが付いていて、子ども時代の筆者などはたまにディーラーの展示車の運転席に座らせてもらうと「うわっ、これ180まで書いてある!」なんてテンションが上がってたものです。輸入車は200km/h以上のメーターもありましたが、国産車は180km/hまででした。最近は規制緩和されてるのですね。

 というわけで少しテンションを上げながらエンジンをかけます。滑らかで低めのエンジン音です。クラッチも軽く、シフトもいい感じで入ります。低めの回転でクラッチをすっと繋ぐと、軽くスイッと走り出しました。

 ディーラーの方の同乗で一般道を普通に数キロ走っただけなので、もちろん性能のごく一部を見ただけですが、低回転から余裕のあるトルクを感じました。「さらに踏み込めば、どこまでもパワーが吹き上がるダイナミズムを実感できる」とカタログには書いてありますが、それは怒られそうだったので試していません。車体はコンパクトで見切りが良く、ハンドルも重すぎず軽すぎず、これはちょっと好きになりました。

  国産車ではMTが選択できないモデルが多くなり、現地ではMTが多く走ってると言われる欧州車もMTはなかなか日本には輸入されない現状ではありますが、たとえばトヨタのGRヤリスやホンダのシビック・タイプRなどの、運転を楽しむことに振ったモデルをはじめ、探せばMTもまだまだあります。

 しかしこの先またMTが主流になるなんていうことは絶対にないでしょう。ATどころか、世の中はそもそもギヤチェンジが要らないEV、さらには運転もしなくていい自動運転車へという流れですよね。でも今しばらくは、クラッチを操作してシフトを入れてっていう運転を楽しみたいなあと、筆者はそう思っています。

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