路線距離2.6キロ2両編成の南海多奈川線 超ローカル支線に残る大阪と四国をつないだ栄光の記憶

新田 浩之 新田 浩之

路線距離2.6キロでありながら、過去の栄光を感じられる路線があります。それが南海多奈川線です。現在は2両編成の電車が線内を往復するだけですが、かつては難波駅からの直通急行もあったとか。春の週末に多奈川線を訪れてみました。

みさき公園駅から全長2.6キロの多奈川線に乗る

多奈川線は南海本線に接続するみさき公園駅と多奈川駅を結び、大阪府岬町内を走る全長2.6キロの支線です。現在はみさき公園~多奈川間を往復する普通列車が設定され、昼間時間帯は約30分間隔で運行されています。

みさき公園駅5番線ホームに行くと、2両編成のワンマン電車が止まっていました。ちなみに、この電車はもともと高野線で働いていました。

みさき公園駅を出発すると、しばらくは南海本線と平行に走ります。そして右に曲がり、深日町駅、深日港駅と停車。みさき公園駅を出発してから6分で終着駅の多奈川駅に着きました。

多奈川線の開業年は戦時中の1944年のこと。歴史の長い南海の中では比較的若い路線です。多奈川にあった軍需工場、川崎重工泉州工場への通勤路線として開業したのがはじまりです。

深日港駅で感じる栄光の歴史

多奈川駅から深日港駅までは500メートルしか離れていません。せっかくなので、線路沿いを歩いてみました。深日港駅は岬町役場の真ん前にあります。一見すると、どこにでもあるローカルな駅です。

しかし、駅舎の周りを観察すると、多客時に対応する臨時改札があります。駅構内に入ると使われなくなったホームが残っています。

戦後、深日港駅周辺に深日港ができ、深日港~洲本港(淡路島)・徳島港を結ぶフェリーが開設されました。多奈川線は大阪と淡路島、四国を結ぶルートの一役を担ったのです。

そこで、南海は難波~多奈川間を結ぶ直通急行を設定。6両編成の直通急行は「なると号」という名称が与えられ、後に「淡路号」になりました。ただし、名称付きの急行列車とはいえ、後年の車両はロングシートの一般車両でした。

1970年代になると大阪港、神戸港からのフェリーや高速船の充実が図られ、深日港の利用者は減少しました。1993年に急行「淡路号」が廃止され、線内を走る普通列車のみに。さらに1998年の明石海峡大橋の開通により、深日港発着の定期航路は全廃に追い込まれました。

深日港駅以外の多奈川駅、深日町駅でも使われなくなったホームが見られます。これらの設備は過去の栄光を今に伝えています。

急行「淡路号」は復活するのか

このように深日港発着の定期航路は完全に終わりのように見えましたが、岬町と兵庫県洲本市が中心となり、深日港~洲本港間の定期航路の復活を目指しています。

この定期航路の復活は広域交流だけでなく、大規模災害発生時の物流・人流のバックアップ的な役割も視野に入れています。すでに2017年から深日港~洲本港間で期間限定で「深日洲本ライナー」を運航しています。船体はフェリー船ではなく高速船です。今年の運航は11月5日まで、土日祝日限定です。

深日港~洲本港間の定期航路が復活しても、南海本線のダイヤの関係から以前のような直通急行の復活は難しいように思えます。

それでも、多奈川線の乗客が増え、加太線(紀ノ川~加太)で活躍する「めでたいでんしゃ」の多奈川線バージョンが生まれたらなあ、という希望を持っています。

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