雨の日に窓全開で部屋が水浸しに…!? ASDの中3娘を育てる母のツイートに反響 いちばん身近な支援者として娘に寄り添う思いとは

竹中  友一(RinToris) 竹中 友一(RinToris)

「うちのASDで知的グレーな中3長女、学校の成績はそこそこ取ってくるし、掃除も料理も買い物もひとりでこなすし、身だしなみや持ち物の管理も自力でできる。でも、『雨が降ってる時に窓を開けていたら、雨が部屋に降り込んで大変なことになる』みたいな事はわからないんだよねぇ」

なちゅ。さん(@itacchiku)のASDを抱える長女さんに関するツイートに、多くの反響が寄せられました。

ASDとは、発達障害の一種である“自閉症スペクトラム”の略称。コミュニケーション力や想像力が足りなかったり、こだわりの強さなどが目立つという特徴があります。その一方で、学業が優秀である人も多く、本人に潜在する問題になかなか気づかれないケースもよくあります。“広汎性発達障害”や“アスペルガー症候群”という呼び方もあります。

なちゅ。さんの長女さんは、そんなASDを抱えているといいます。学業は優秀であり、家事や身だしなみなど日常生活もある程度自分で行うことができますが、細かなところで問題を引き起こしてしまうこともしばしばだといいます。

先日、全国的に大雨が降りました。そんな日に、娘さんは窓を全開にして眠ってしまい、部屋の中が水浸しになってしまったそうです。

娘さんは、「暑いから窓を開けたい」と思われたようです。通常であれば、「こんな大雨の日に窓を開けたら、雨が部屋に降り込んで大変なことになる」と考え、暑いのを少し我慢するか、エアコンを付けるなどの代案を検討しそうなもの。しかしこの時、本人の中では、「暑い」→「窓を開ける」という思考プロセス一択で、結果的に起こることまで考えが及びませんでした。

まさに、ASDの特性の一つである「想像力の欠如」がもたらした出来事といえそうです。

実際、なちゅ。さんの旦那さんが子ども部屋が水浸しなことに気づき、室内を拭いている時も、娘さんはそのことに気づかず眠り続けていたそう。起床後、なちゅ。さんが「雨が降り込んで部屋が濡れてしまうので、雨が降っている時は窓を開けないで」と伝えたところ、娘さんは「そうなん!?」と驚いていたとのことです。

自身の娘さんのエピソードから、ASD当事者やその家族の抱える問題点、困りごとについて紹介したなちゅ。さん。ツイートのリプ欄にも多くの反響が。

「ウチの長男もおととい暑くて開けてた窓を昨日は雨が降ったのに開けっぱなしで、これも言わないとわからないのかーと思ったところでした」
「そうか、我が家の娘の部屋、雨の日水浸しになるのはそういう事だったのか…」
「ASD当時者ですが痛い程わかります…」
「私はASDですが、子供の頃、言われたことはやるけど、この行動の意味はわからないという感じでした。凄く共感出来ます」
「たった今、昨日の朝から窓開けっ放しだったのに気づきました。暑い→窓を開ける…までは頭にありましたが、その先を考えてなくて、強風でカーテン捲れて我に返りました」

家族にASDの方がいる方や、ASDを抱える本人からの共感のコメントもたくさんありました。

Twitterを通じてASDに関する情報や意見を発信

なちゅ。さんは、ASD当事者が起こしがちな日々の問題、家族がどう向き合うべきかなどについて、娘さんのエピソードやご自身の考え方も踏まえてTwitterに詳細に記録されています。

そんななちゅ。さんのツイートに対し、質問を投げかけるユーザーや、自身の見解も交えて意見交換をされる方も多く、「参考になる」という声もたくさん寄せられています。

しかし、なちゅ。さん自身は、むしろ「多くの反応を通じて、私の方が自分や子ども達のために参考にさせてもらっている」と感じているといいます。

なちゅ。さんの意見に共感してくれる人や、自分や家族に同じような問題を抱えている方の体験談はもちろん、違った視点での受け止め方について書きこまれる方もいるとのこと。お互いに、さまざまな角度からの意見を共有されています。

ASDを抱える子どもへの接し方、親としての想い

Twitter等を通じて、日々ASDなど発達障害についての情報を発信されているなちゅ。さん。それは、自身が発達障害への知見や理解を深め、より良い子育てにつなげるためでもあります。

そんななちゅ。さん、ASDを抱える子どもをもつ親として、実際にどのようにお子さんを育てたいと考えていらっしゃるのでしょうか?お話を聞いてみました。

――今回の「雨が降っているのに窓を開けていた」というエピソードには、まさにASDの特性が現れていると感じました。このような性質は、生来変わらないものなのでしょうか?

なちゅ。さん:その子によると思います。成長するなかで気づくこともあるでしょうが、そのペースは持って生まれたものの影響が大きく、その子によって全然違うと感じています。実際、我が家には実はASDの診断を持っている子どもが2人いるのですが、それぞれに理解の速度も応用力も全く違います。親の関わり方だけで変化するものでもないですね。

――人それぞれ異なるのですね。そこにはASD以外の要因もあったりするのでしょうか?

なちゅ。さん:ツイートにも書いていますが、長女の場合はASDだけでなく境界知能(知能指数が正常域と知的障害域の中間にある状態。グレーゾーンとも)の診断もあるので、その影響も少なからずあると思っています。どちらがどう影響しているのかは、専門家でないので私にははっきりとはわかりません。

――普段、娘さんは家ではどのような様子ですか?過ごし方やご家族とのかかわりなども教えてください。

なちゅ。さん:毎朝、同じ時間に起きて自分で朝食の用意をし、ひとりで身だしなみを整え、同じ時間に家を出て、余裕を持って登校していきます。帰宅後はその日の学校の課題と受験勉強に取り組み、好きなYouTubeの配信を見て、同じ時間に寝ます。とても規則正しい生活を好んで実践している、どこにでもいそうな中学生女子です。ただ、幼児期からずっと、ひとり遊びが好きでひとりで過ごす方が好きな子なので、他の家族が同じゲームで盛り上がっていても、自分だけその横で全く違うことをしている事が多いですね。

――娘さんとの接し方について、気をつけていることは?

なちゅ。さん:本人の意思を尊重することですね。親が「こっちの方がいい」と思っても、回り道に見えても、本人の希望を尊重することを優先するようにしています。先ほどお話した「自分だけ他の家族と違うことをしている」ような時も、それは本人の自由なので「家族なんだから同じ事をするように」という強制は、我が家ではしません。

――本人の意思を尊重するのは、大切なことだと感じます。また、Twitterで紹介されていた「そんなこともできないの?」、「考えれば分かるでしょ」など、自尊心を削るような言葉は言わないというのも、とても重要だと感じました。

なちゅ。さん:ただ、本人の意思を尊重することも、自尊心を削るひとことを言わないというのも、完璧にできているとは正直いえません。理想と現実の間で親が落ち込む事もあります。なかなか難しいですね。私自身が疲れていると、ついこういう対応をしてしまうので、それも含めて気をつけています。

――ASDの特性上、娘さんには学校や日常生活でさまざまな困難に直面することも多いと思います。その中でも、「実質的にできないこと」と「改善や成長の可能性があるもの」があるのではないでしょうか。そのような要素の見分け方や、対応の仕方については、どのように考えられていますか?

なちゅ。さん:それらの要素については、あえて見分けようとはしていません。いまそこにあるのは「できない」という事実だけ。それに対して良し悪しもジャッジもしません。その「できない」ことに対して本人がどうしたいかの意思を確認し、実現するためのアシストをするのが親の役割だと思っています。学校にお願いして環境を整えたり、協力してくれる支援者を探したり。その結果、本人が成長とともに学び、自力で出来るようになっていたこともあるし、出来ないままの事もあります。でも、どっちの結果でもいいんです。本人が喜んでいるなら一緒に喜んで、悲しんでいたら一緒に悲しむようにしています。結局全ては結果論で、その時に困っていることに対処するだけですね。

  ◇  ◇

「楽しい日も苦しい日も、自分の人生を生きてくれたらと思います。困った時は、助けてくれる人にたくさん恵まれますように、と祈るような気持ちでもいます。それ以外のことは、全て些末なことです」

娘さんに対して、このような希望をもたれているなちゅ。さん。「自分の人生を生きる」、それはすべての人に望まれるべきことであり、親が子どもに強く望むことですね。

「進路も将来も親としての希望はなく、身近なサポーターとして、本人に必要な情報と選択肢の提示はできる範囲で協力します。そんなスタンスでいます」(なちゅ。さん)

■なちゅ。さんのTwitterはこちら→https://twitter.com/itacchiku

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