財政難で消えた花火大会…「街を盛り上げるため」市民が奮闘 4年ぶりの開催は5月に、目指すは初夏の「風物詩」

宮前 晶子 宮前 晶子

行政の財政難を理由に街から消えてしまった花火大会…それを市民らボランティアの手によって実現したのが『ENJOY!りんくう(りんくう花火)』。今年、4年ぶりに、りんくう公園マーブルビーチ(泉佐野市)で5月13日(土)に開催されます。

2012年から続く同イベントは市民のボランティアが結成した「一般社団法人ENJOYりんくう(以下、りんくう花火実行委員会で表記)」の手によるもの。ふるさと納税によるイベント助成金、企業からの協賛金、寄付金を運営資金とし、有料席の売上金で、実現されています。

地元で自分たちの手で運営していく意味、今回にかける意気込み、例年よりも3カ月早く花火大会としては珍しい5月に開催する理由など、実行委員長の佛願真浩(ふつがん まさひろ)さんに取材しました。

「街を盛り上げたい!」市民が立ち上げた花火大会

市民の力で開催する花火大会を運営する「りんくう花火実行委員会」には、20〜50代の会社員や主婦などがボランティア参加。平日や昼間は働きながら、空いた時間に企画・運営方法を話し合い、行政や協賛企業と交渉を行っています。

結成は2010年、第1回大会の2年前。居酒屋に集まる人たちからの発案でした。実行委員長の佛願さんも、普段は配送業のドライバーをしており、イベントの企画運営とは無縁の生活だったそう。

「近隣自治体との共催で関空開港1年記念として1995年から花火大会が毎年行われてきましたが、泉佐野市の財政難などを理由に2005年開催を最後に中止になったんです。みんな、街から活気がなくなっていく、このままやったらあかん、と思っていたところに、“俺らで花火大会やって、街をもう1回盛り上げようやないか!”“大人が頑張る姿を子どもたちに見せようや!”と」。できるかできないかはわからないけど、夢に乗っかろうという声が広がり、大会開催へ動き始めました。

とは言え、イベント運営や花火大会についての知識は皆無。「許可を得るために、警察を含め何十カ所もお願いに回りました。やろう、と決めたものの、1年目は警備計画の理解が得られず開催延期に。無事に開催するまでにこんなに準備しなあかんねや、と気が遠くなりました」。

開催に向けて動くことと併行して、結成翌年から観覧会場となるマーブルビーチの清掃活動を開始。 “クリーン!りんくう”と名付けられたそれは、現在も毎月第一日曜日の実行を継続。主要な活動に参加できずとも、清掃なら協力できると携わってくれる人もいるそうです。

実現するにあたって、大きな力となったのは花火を製造・企画・演出・制作する「日本橋丸玉屋」。日本国内の花火大会やアーティストライブなどで打ち上げ花火を手掛け、音楽花火のパイオニアとしても有名な存在です。「2012年の第1回大会からのお付き合い。花火大会の運営については右も左もわからない僕たちに、“不可能かも、と思うことでも言ってください。やれる方法を一緒に考えていきましょう”と言ってくれました。観客を楽しませたいという思いは共有していました」。

そんな彼らとの取り組みによって、花火を見る人の手拍子とシンクロする打ち上げ花火、3方向に打ち上がるスロット花火などあまり他の花火大会では見られない観客参加型打ち上げ花火のアイデアが生まれ、実現することができました。

「打ち合わせのなかで忘れられない、花火師さんの言葉があります。“花火には言葉がないから伝えられないこともある。でも、花火だからこそ伝えられることもある”。本当にそうなんですよね。花火を見ていると、落ち込んでいても、明日から頑張ろう、来年も見たいから精いっぱい過ごそう、と思える。見た人みんなにそう思ってもらいたいです」。

日本で唯一「子どものための花火大会」として創意工夫

「小さな子どもからおじいちゃんおばあちゃんまで、みんなが楽しめるエンターテインメントって花火しかない、と思うんですよ」と花火への思いを語る佛願さん。小学生の時に見たPLの花火は忘れられない記憶だと言い、「こんなに素晴らしい花火を子どもたちに見てもらいたい。だから、ENJOY!りんくうは“子どものための花火大会”と銘打って、スマイルマークの花火をたくさん上げたり、子どもたちが好きな音楽を流したり、『こども縁日』をおこなうなど、子どもたちに最大限楽しんでもらえる内容を目指しています」。

そのために、大会前には“花火おじさん”と称して、市内の小学校などで花火の歴史や花火の種類などを学ぶ花火教室を開催。「今年は、『フリースクール キリンのとびら』に出向いて、中学生たちに打ち上げ花火のプログラミングや演出、音楽などを考えてもらいました。みんな楽しそうに取り組んでくれたし、プログラマーなどプロの仕事を間近で見て刺激を受けた様子でした。そんな彼らの表情に、花火おじさんたちも負けてられへんなと。大人も子どもも真剣にものごとに向かうっていいですよね。そんな空気が街全体に広がって欲しい」と佛願さん。

大会当日は約350名のボランティアスタッフが参加するなか、お仕事体験「KIDSJOB」としてイベント運営のお手伝いや販売に挑戦する子どもたちの姿も。子どもたちも一員として支える稀有な花火大会なのです。

4年ぶりの花火大会「クライマックスはとんでもないものに」

新型コロナウイルス感染症が蔓延した2020年、2021年はYouTube配信で大会開催、2022年は感染拡大の影響で大会中止。現地での大規模開催は4年ぶりです。それだけに、今回の「第8回ENJOY!りんくう2023〜ぼくたちのスマイル花火大作戦〜」への思いはこれまで以上。

約7000発の花火が上がるクライマックスは「子どもたちに大人の本気を見せます。とんでもないモノを見てしまった、と思っていただけるような演出です。こんな花火見たことない、見たら忘れられないと感じてもらえるように、約1年前から準備してきました」と力を込めます。

例年「夏休み最後の思い出づくり」を狙って、夏休み最後の土曜日開催としてきましたが、今年は3カ月前倒しでの開催。「夏の終わりは台風の時期にも重なるので毎年ヒヤヒヤものでした。実際、2013年は台風到来による強風で当日中止になっています。また、7・8月は花火大会が各地で行われます。それなら、ちょっと早めにして泉州の風物詩になればいいなと考えました」とその理由を打ち明けます。

さらに、今年はりんくうプレミアムアウトレットエリアにも観覧席(ダイナミック席・企業協賛席・プレミアム席・グランピング席。それぞれ有料)を拡大。「海上の台船から打ち上げる花火を真正面で見ることになるので、すごい迫力ですし、見応えたっぷり。ぜひ見に来て欲しいです」と呼びかけます。

◇ ◇

花火大会は、江戸時代、飢饉や疾病などで多数の死者が出たことからその魂の供養と悪病撃退を祈って始まったとされています。新型コロナウイルス感染症の鎮静、そして子どもたちの笑顔、街の活力を願い、5月13日に行われる「第8回ENJOY!りんくう2023〜ぼくたちのスマイル花火大作戦〜」のテーマは『パワー』。打ち上げ花火に加え、有料エリアでは地域のうまいもんの出店やヨーヨーつりなどの子ども縁日、泉州の地場産業のタオルを投げるタオル投げコンテストなど楽しいイベントが盛りだくさんとなっています。

■ENJOY!りんくう https://www.enjoyrinku.com
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■ENJOY!りんくうInstagram https://www.instagram.com/rinkuhanabi/?hl=ja
■りんくう花火実行委員会Twitter @rinkuhanabi
■「第8回ENJOY!りんくう2023〜りんくう花火ぼくたちのスマイル花火大作戦〜」チケット購入サイト
https://eplus.jp/sf/detail/3823750001?P6=001&P1=0402&P59=1

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