2023.05.03(Wed)

今SNSでバズり中！島根出身の芸人「メンバー」　歌ネタ王から5年、「前代未聞」の単独ライブに挑戦

　島根県益田市出身のコンビで結成し、テンポのいい曲に合わせて漫才風に歌ネタを披露するお笑い芸人「メンバー」がSNSやYouTubeで人気を博している。吉本興業広島事務所「広島よしもと」に所属するコンビで、2018年に面白さと音楽性を競う「歌ネタ王決定戦」（毎日放送主催）で優勝し、一躍注目を浴びた。その後も歌ネタを中心としたYouTubeが高い再生回数を記録。先月30日には、プロのオーケストラと共演するという「前代未聞」の単独ライブに挑戦し、500人超のファンで埋まった客席は笑いの渦に包まれた。お笑い好きの記者がライブに参戦し、2人に話を聞いた。

　メンバーは、小学校から幼なじみの山口提樹さん（35）と潮圭太さん（35）で、高校の頃からコンビを組む。コントを主軸にやっていたが「もし漫才中に出囃子が鳴りやまなかったら･･･？」というネタを思いつき、歌ネタに挑戦することにした。中学時代のバンド経験などもあって、リズム感や発声のよさがハマり、2018年に初出場した「歌ネタ王」決勝では、あの「どぶろっく」など8組を押しのけ、出場1168組の中から頂点に立った。2020年からはYouTubeを始め、単語がループして終わらないのが癖になる歌ネタの「しりとり」が現在600万再生を記録するなどヒットし、テレビの情報番組にも出演した。

今回のオーケストラとの共演は、「歌ネタ王」優勝後のインタビューで「オーケストラで歌ネタをやってみたい」と言ったことが発端。冗談半分だったが、ある日、2人が独自で配信するネットラジオ「メンバーの部屋ラジオ」に、神奈川県出身でプロファゴット奏者の興津諒さんから「実現できるかもしれません」と突如メールが届いた。メンバーのファンという興津さんは国内外のプロ奏者の招集や、歌ネタの全楽器のオーケストラ編曲まで全て担ってくれることになり、開催資金は2人がクラウドファンディングで調達。350万円を目標に募集すると、1149人から493万7000円が集まり、冗談が現実となった。

　お笑い界でも「前代未聞」の生オーケストラ演奏での歌ネタ。開催当日、会場の広島・JMSアステールプラザ中ホールには、遠くは東北地方など全国各地からファン550人が集結し、オンラインでも450人がリアルタイムで参加した。舞台では30人の国内外のプロ奏者がスタンバイ。幕が開くとオーケストラの荘厳なクラシックの名曲が演奏され、決めの音に合わせて2人の名前が大画面に表示された。一呼吸置いて鳴らし始めた鉄琴の音が、歌ネタ王優勝時に披露した歌ネタ「俺の顔を見ろ」のイントロ。格調高いオーケストラの調べとのギャップに客席はどっと沸き、袖から登場した2人を大きな拍手で出迎えた。

つかみに成功すると、ライブは盛況に進んだ。披露した歌ネタは、当初1月末までに編曲を終える予定だったが、山口さんと編曲を担う興津さんで細かい修正を重ね、本番4日前にやっと全てが完成。新ネタでミュージカル調に殺陣（たて）を披露する「ウシオスの勇者」、ルルルやダバダバなど歌詞の代わりに意味の無い音で即興的に歌う「スキャット」など、こだわりの全8「曲目」（ネタ）を披露し、客席は笑いと拍手に包まれ最高潮に達した。ファン参加型にも力を入れ、クラウドファンディングの支援者の名前で歌ネタに挑戦したり、来場者の書いた単語を、歌ネタのワードに置き換えて披露したりするコーナーもあり、客席との一体感も生まれていた。

　ライブ直前、2人に取材した際、お客さんの反応含めて「未知の世界」と言い切っていた。「歌ネタって『諸刃の剣』なんですよ。覚えるほど見てもらっているとアーティストの曲みたいな感じになって、笑うのかなと。ウィークポイントでもあるし」。しかし、全て杞憂に終わった。潮さんは「コントでは新しい感じの歌ネタが披露できた」と手応えを感じ、山口さんは「自分も観客みたいな感じで見ていて楽しかった」と演者ながら全力で舞台を満喫し、「準備から本番まで全作業がずっと楽しくて、終わって欲しくなかった」と名残惜しんだ。

「広島に居ながら、全国の方に知ってもらうことを目指していた」という2人。普段は十数人の前でライブをやっていたが、今回のライブはオンラインを含め1000人以上が集まり、大きな自信を得た。これまでは東京や大阪に行かないと売れないという流れが強く、「地方芸人はあがめる感じだったが、地方でも評価してもらえるようになりたい」と意地になって頑張ってきたことが形になった瞬間だった。

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コンサート終了後、新たに月額制のファンクラブが立ち上がることが決定。「地方にいても可能性あるよ、というのを見せたい」とさらに意気込んでいる。ライブ中も触れていた故郷・島根県でのライブ開催については「（地元の）グラントワとかでやりたい」と話し、潮さんも「島根での仕事は数カ月に1回くらいですが、地元に帰れるとうれしいんですよ。営業、学園祭とかでも呼んで頂けたらうれしいですね」とアピールする。