粉状の雪?いや、白煙だ! 記録的寒波が襲ったこの冬に起きた偶然の救出劇 大雪の電車立ち往生がなかったら…

京都新聞社 京都新聞社

 この冬の記録的な寒波の影響でJR西日本の電車が動かなかったことが、結果的に、1人の老人の命を救うことにつながった。

 1月24日夕方、京都市下京区に住む田村純さん(53)は、滋賀県竜王町の職場から自宅に戻ろうとしたが、雪の影響で電車は止まったままだった。

  午後10時ごろまで、JR野洲駅で電車が動きだすのを待っていたところ滋賀県野洲市が野洲文化ホールを一時待機所として開設し、田村さんもホールに移動した。深夜になっても電車は動かず、貸与された毛布をかぶってイスに座ったまま一夜を過ごした。

 昨夜から止まっていた電車が動き始めたのは翌朝午前10時前ごろ。会社には、「こんな状況なんで今日はいったん自宅に戻りますね」と電話した。約1時間かけて自宅最寄りの西大路駅に着いた。

 歩いて自宅に向かっていると、「粉状の雪」が見えた。「気温も低いし、最初はパウダースノーで瓦の雪がなびいていると思ったんです」

 田村さんが見ていたのは白煙だった。その時はまだ火が上がっておらず、火事とは気付かなかった。自宅に着いて鍵を開けて入ろうとした瞬間、こげくさいにおいがした。火事だと気付き、周囲を見回すと、向かいの長屋から黒煙が上がっている。ガラス戸に人影が見えた。「まだ人がいる!」。引き戸を開けると、土間に住人の高齢男性(95)が倒れていた。両脇を抱えて屋外に避難させた。

 買い物へ行こうとたまたま現場前を通った近所の河野寛子さん(49)が男性を救助する田村さんに気づき、即座に119番した。近隣の住人も自宅から布団を運び出し、男性の体が冷えないよう暖め、河野さんは男性に「大丈夫ですか」と声をかけ続けた。男性は一時重症で集中治療室に入っていたが、現在は快方に向かっているという。

 田村さんは、昨晩からの大雪の影響で疲弊していた。「普段この時間帯は仕事をしているので、大雪で帰宅難民にならないとこの場にいることもなかった。男性が無事で一安心した」と話す。河野さんも「火があっという間に広がったが、この長屋に何十年も住んでいる男性がいるとみんなが知っていた。地域の人たちが動いたおかげだと思う」と語った。

 下京消防署は人命救助と迅速な通報を行ったとして、2人に感謝状を贈呈した。同署は「危機一髪で男性の命を救ってくださった。あと3分遅ければどうなっていたか分からない。気温が低く低体温症の危険もあったが、屋外に避難させてからも体温を下げないように暖を取り意識の確認をし続けたことで救急活動がしやすかった」と語り、住民の初動対応に感謝した。 

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