2022年秋のある日、広島県内の動物愛護センターの薄暗い部屋の中で、体を寄せ合い、おびえるようにこちらを見つめる、元野犬とおぼしき2頭の子犬がいました。この日、保護活動を行っているピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)は、合計20頭のワンコを引き出しましたが、このうちの2頭はこの子犬の兄弟でした。
ビビリションの後、初めてもらった2頭の名前
愛護センターから車に乗せて移動する際、「僕たち、どこに連れて行かれるの?」といった不安からか、2頭はおびえるような表情でスタッフを見つめます。恐怖心からお漏らしをしてしまいました。
スタッフは「大丈夫だよ。怖くないよ」と声をかけ、2頭に名前をつけました。「フリー」と「ギブソン」。おそらく2頭にとっては初めてつけてもらう名前でした。
引き出しから約2カ月でお散歩
他のワンコたち同様、スタッフは引き出してすぐ、フリー・ギブソン兄弟も検疫犬舎に連れていき、病気の有無を調べることにしました。幸い、2頭とも大きな持病などは見つからず、すぐに人なれトレーニングができることになりました。
一定期間を経て、フリーもギブソンも新たな犬舎に移動となりました。この際、特にフリーはおびえ、たびたびオシッコをジャー。尻尾は垂れ下がり、部屋に案内しても隅っこで固まっていました。また、お散歩に行くためのリードを着けることも嫌がったそうです。
それでも、少しずつ環境になれていったフリーとギブソン。引き出しから約2カ月が経った頃、2頭ともなんとか外にお散歩に出かけられるようになりました。初めての雪を体験したときは、周りをキョロキョロと眺めていましたが、その2週間後には雪道もスムーズに歩けるようになりました。
幸せをつかんだフリー、出会いを待つギブソン
フリーは徐々に自分を表現できるようになり、初めてピースワンコの譲渡会に参加することになりました。
初めての譲渡会でしたが、フリーは多くの見知らぬ人が行き交う会場でも、取り乱すことはありませんでした。そしてこの日、フリーは新しい里親さんと運命的な出会いをします。殺処分寸前でその命を救われ、当初はおびえていたフリーですが、そこからわずか数カ月で第2の犬生を歩み始めました。
他方、ギブソンのほうもフリーよりも少々時間がかかりましたが、フリー同様にトレーニングになれ、現在も里親さんとのマッチングを待っているところです。(ギブソンの里親希望者さんは、同団体にお問い合わせください)。
当初は心を通わせることが難しいワンコでも、愛情を注ぎ、諦めずに世話を続ければ、フリーやギブソンのようにその気持ちを感じ取り、心を開いてくれる例は多いものです。スタッフは、フリーとギブソンの経験を経て、気持ちを新たにしました。「多くのワンコにたっぷりの愛情を込めてお世話をし、新しい里親さんの元へと保護犬をつなげていきたい」。
ピースワンコ・ジャパン
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