5千匹に1匹! オスの三毛猫はなぜ激レアなのか? 遺伝子で決まる猫たちの秘密を解明します

松田 義人 松田 義人

いつの時代もにゃんこ人気は根強いですが、しかし、猫の毛柄がどのように決まっているのかは、おそらく多くの人が知らないのではないでしょうか。

そんな中、「猫の毛柄はどうやって決まるのか?」「三毛猫はなぜメスしかいないのか?」といった「猫の毛柄」に関する素朴な疑問を紐解いてくれる本が刊行されました。『「猫柄図鑑」にゃんこの柄のすべてがわかる』山根明弘・監修(日本文芸社)という本です。

日本猫の毛柄は、8つの遺伝子の組み合わせ

かわいくて、ときに気まぐれで、 人間の心を癒してくれる猫。そんな猫の毛柄は、実は遺伝子の組み合わせで決まるのだそうです。

その仕組みについて本書ではわかりやすく解説してくれていますが、たとえば身近にいる「日本の猫の毛柄」は、どのように決まっているのでしょうか。本書の一部を転載します。

 「遺伝学と聞いて、『何だか難しそう』と尻込みしてしまう人もいるかもしれません。ですが、日本猫の多彩な毛柄が実はたった8つの遺伝子の組み合わせで決まっていると聞けば、ちょっぴり興味が湧いてくるのではないでしょうか。(中略)それぞれの遺伝子には、黒や茶キジの毛を生やす、黒キジ模様を入れる、お腹を白くする……といった特性があります。さまざまな個性を持つ遺伝子が組み合わさって、日本猫の多彩な毛色を演出しているのです」(本書より)

 うーん、わかったようなわからないような…。本書ではちょっと難しく感じる「遺伝子」についてもやさしく解説しています。 

「遺伝子は細胞の核の中にある染色体(DNA をギュッと圧縮したもの)の上に並んでいて、生き物の外見や性質はこれらの遺伝子によって決定されています。「遺伝子= DNA」と考えている人も多いと思いますが、厳密にはそうではありません。
DNAとは、遺伝情報などが書き込まれた、ものすごく細くて長い糸のような「物質」のことです。DNAの中でも、生き物の外形や性質などを決める遺伝情報(つまり、設計図)を持つ部分のことを『遺伝子』と呼びます。
(中略)染色体上のそれぞれの遺伝子の位置を『遺伝子座』と呼びます。いわば遺伝子の住所のようなもので、『猫に黒い毛を生やす遺伝子は染色体の〇丁目〇番地にある』という具合です。ひとつの染色体にたくさんの遺伝子が存在しますが、どの遺伝子にも決まった住所があります」(本書より)

「同じ遺伝子座にある複数の遺伝子のことを『対立遺伝子』と呼びます。父親と母親からそれぞれひとつずつ対立遺伝子を受け継ぐので、同じ遺伝子座の対立遺伝子を2つ持つことになります。同じ住所の『遺伝子座』に 2人が住んでいる、と考えればわかりやすいかもしれません。
同じ遺伝子座にある対立遺伝子が、同じ遺伝情報を持つ場合は『ホモ』、 違う遺伝情報を持つ場合は『ヘテロ』と呼ばれます。そっくりさんが2人ならホモ、他人同士の2人ならヘテロという感じです。 猫の場合、4つの遺伝子座にそれぞれ2つずつある対立遺伝子の組み合わせ(遺伝子型)が、その猫の毛柄を決めています。」(本書より)

要するに、母猫と父猫の対立遺伝子を受け継ぐ際、「どちらの遺伝子がより強く出やすい遺伝子なのか」ということから、猫の毛柄は決まってくるようです。遺伝子間の力関係が関係して、最終的に「日本猫の毛色は8つの遺伝子の組み合わせ」で決まるということですね。

三毛猫はメスが多い理由

冒頭で述べた「三毛猫はなぜメスしかいないのか?」という疑問にも、本書では詳しく記されています。

 

「猫好きの人なら、『三毛猫はほとんどがメス』という話を聞いたことがあるでしょう。また、茶キジのメスも比較的少ないことで知られてい ます。 このような猫の毛柄の謎は、遺伝子の組み合わせで説明することができます。遺伝子の組み合わせと聞くと、何やら難しそうですが、たった8つの遺伝子の特性とその優劣(強弱)関係が理解できれば、パズルのピーズがピタリとはまるように、三毛猫の毛柄の謎が解けるはずです。
(中略)三毛猫のなかでオスが出現する頻度は、5千匹に1匹ほどと激レア。なぜこんなに少ないのか。解答を導く鍵は、それぞれの遺伝子の特性とその組み合わせに隠されています」(本書より)

遺伝子の話と猫愛にあふれた一冊

本書は「猫の毛柄を決める遺伝子」についてわかりやすく書かれている本ですが、猫のルーツや猫と人間の歴史、猫たちの行動を観察するにあたってのヒントなども盛り込んであり、猫好きにとってはたまらない一冊です。本書を読むことで猫の新たな魅力を発見でき、さらに猫に対しての愛情も強くなるように思います。 

「猫たちの模様はどうやって決まるのか、知っていれば猫散歩がより楽しめるようになるのでは、知りたいと思っている人が多いのでは、という思いで企画しました。遺伝的なお話はもちろんですが、猫が好きなスタッフの『猫愛』にあふれた内容となっていますので、是非お手にとって眺めてみて欲しい一冊です」(担当編集者)

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